ゴールドマン・サックスは、2023年に景気後退が起こる可能性は35%から40%しかないと見ている。
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ゴールドマン・サックスは2023年の株式について強気ではないが、ウォール街の同業他社と比べるとアメリカ経済に対する見通しは楽観的だ。
同社によると、今後12カ月間に景気後退が起こる可能性は35%から40%だ。これはとても高い数値に思えるが、ウォール・ストリート・ジャーナルが調査したエコノミストたちの予測値である63%よりははるかに低い。ゴールドマン・サックスのシニア・グローバル・エコノミスト、ダーン・ストロイベン(Daan Struyven)は11月末、同社の2023年の経済見通しに関する会見でそのように語った。
「我々の基本線は、アメリカ経済が2023年に景気後退を僅差で免れるというものだ」(ストロイベン)
市場予測による2022年の景気後退確率は40%に上昇し、パンデミック後の最高を記録した。(オレンジの帯はアメリカの景気後退。濃い青線は市場予測による1年以内に景気後退が起こる確率、薄い青線は市場予測による景気後退が起こる確率)
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アメリカ経済に自信を持つべき10の理由
会見では、ストロイベンとその同僚たちが、2024年までアメリカで景気後退がおそらく起きない10の理由を説明した。そのうちの半分は労働市場に関連している。労働市場は、経済成長率が鈍化しているにもかかわらず、年間を通じて驚くほど堅調に推移している。
失業保険の申請件数は依然として著しく少ないとストロイベンは指摘した。彼によると、非農業部門の雇用も好調であり、どちらも軟化しているものの、景気後退が近づいていることを示唆するほどではないという。
しかし、ゴールドマン・サックスは、労働市場が冷え込み始めていることを心強く思っている。記録的な低失業率は通常は祝福するに値するが、労働者不足が原因である場合は物価が上昇して経済が弱体化する傾向がある。求人数の減少はレイオフの増加よりも「はるかに痛みが少ない」ので、労働市場にとっての明るい兆しと見るべきだとストロイベンは語った。
また、ここ数カ月で何千人もの従業員が職を失ったが、ゴールドマン・サックスのチーフ・エコノミスト、ヤン・ハツィウス(Jan Hatzius)は、レイオフは比較的小規模で、テクノロジー部門に限られていると述べている。つまり、ハツィウスはハイテク企業を炭鉱のカナリアだとは見ていない。
「少なくとも、これまでに調査してきた発表に基づくと、最近見られたものよりかなり大規模なテック系企業のレイオフの急増を、時折、いや、実際には何度も見たことがある。
しかしそれは、景気後退の先行指標にはならなかった」(ハツィウス)
ストロイベンは、仕事に留まっている労働者は今後12カ月間にインフレ調整後賃金で2.5%のプラス成長を享受することになると述べた。2022年、賃金は過去何十年間で最も速いペースで伸びたが、インフレが大幅に進んだため、手取りは改善されなかった。
2023年にコア・インフレ率が2%下がれば、この状況は変わるはずだとストロイベンは言う。ゴールドマン・サックスによれば、さらに重要なことは、長期的なインフレ期待が抑制されていることだ。つまり、インフレが何年も続くような、賃金と物価のスパイラルが起こる恐れは低いということだ。
ゴールドマンサックスは、2023年には商品がコア・インフレを減速させると予想している。
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彼らが楽観的なもう一つの理由は、第3四半期にアメリカのGDPが再び伸びたことだ。ストロイベンは2023年と2024年の両方についてプラス成長を予測する「強い理由」があると述べた。
ゴールドマン・サックスは、アメリカ経済が2023年に景気後退を回避してプラス成長する可能性が高いと予想している。
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最後に、ゴールドマン・サックスによれば、ターゲット(Target)のような小売企業の利益率を圧迫している過剰在庫は、一般消費財部門を越えて広がることはないだろうとしている。
「在庫が異常に少ない状態から、より普通の状態になりつつあるが、経済全体の在庫過剰にはまだほど遠い」とハツィウスは述べた。