ロシアのウラジーミル・プーチン大統領。2014年7月30日撮影。
Alexei Nikolskyi/RIA Novosti/Kremlin/Reuters
- RBCによると、ロシアは価格上限を守る国々にペナルティーを科し、石油市場を混乱させる可能性があるという。
- EUのロシア産原油に対する上限価格は、1バレル60ドルに設定されている。
- しかし、その代わりの石油供給は乏しく、ロシアからの報復を受けて原油価格が上昇する可能性もある。
カナダロイヤル銀行(RBC)のコモディティ部長、ヘリマ・クロフト(Helima Croft)によると、ロシアが原油価格の上限60ドルを守る国々にペナルティーを科すことを選択した場合、エネルギー市場はさらに混乱する可能性があるという。
「今、注目すべき重要な要素は、ロシアが上限価格で支払おうとする顧客には供給を差し控えるという脅しを実行に移すかどうかだ」
クロフトは2022年12月5日のCNBCのインタビューで、ロシアはすでにルーブルで支払わない国への天然ガス供給を停止していると指摘した。
「ロシアには混乱を招いた実績がある。それは石油にも引き継がれるのだろうか」
これは、欧州連合(EU)が12月2日にロシアの原油に支払う価格の上限をに1バレルあたり60ドルに設定することに合意したのを受けてのことだ。もしロシアがこの制限を守れば、ロシアは海運保険など西側のサービスを利用できるようになり、ロシアの石油を市場に出し続け、アジアにも供給することができるようになる。
しかし、ロシア政府はこの措置に対して、ヨーロッパへのパイプラインの原油の流れとG7主導の価格上限メカニズムに合意した国への供給を削減すると脅しているとクロフトは述べた。
これまでのところ、この仕組みにはさまざまな反応がある。日本は、ロシアの石油と天然ガスの主要拠点の一つであるサハリン2からの輸入には適用しないが、その他はこの仕組みに従うと述べている。ウクライナ侵攻以来、ロシア産石油の主要な需要国であるインドは購入を継続するとしている。一方、中国はゼロコロナ政策の解除に着手しており、経済再開による需要回復でロシアの石油購入を拡大させる可能性がある。
一方、ロシア産石油に代わる供給源は不足しており、ロシアからの報復は供給をさらに逼迫させ、原油価格を急騰させる可能性がある。アメリカの戦略石油備蓄の放出は今月中に終了する見込みで、OPEC+は12月4日の会合で減産を堅持したため、翌5日のブレント原油価格は88ドルにまで急騰した。
業界の専門家は、西側諸国はまだそれを強制する方法について詳細を詰めている段階で、ロシアは石油を出荷することを躊躇せずに済むため、価格上限メカニズムの有効性について批判している。S&Pグローバルのアナリストによれば、ロシアはまだ「影の船団」のタンカーを利用することができ、信用度の低い保険会社、あるいはまったく保険なしで石油を出荷することもあり得るという。