新生Forever 21は「Wear No Filter」をテーマにした2023年春夏向けの新製品を発表した。
撮影:小林優多郎
アパレル大手のアダストリアとその傘下のゲートウィンは、2023年2月に再上陸させるブランド「Forever 21(フォーエバー21)」の2023年春夏の新製品をプレス向けに初公開した。
販売開始は2023年2月21日からで、まずはアダストリアのECサイト「.st」を通じて展開、春には実店舗展開(後述)も控えている。新生Forever 21の商品から、再上陸戦略を探る。
フォーエバー21再上陸のポイントを動画でも解説。
撮影:小林優多郎、編集:渡慶次法子
撤退の反省を活かし「脱・ファストファッション」
アダストリア クリエイティブディレクターの野田源太郎氏。
撮影:小林優多郎
日本撤退前と再上陸後のForever 21では「コンセプト」と「価格」の面が大きく異なる。
まず、コンセプトについてだが、アダストリアクリエイティブディレクター 野田 源太郎氏は新生Forever 21の大テーマを「トレンド&ハイクオリティ」だとする。
これはForever 21が新ブランドではなく、再上陸するブランドであることに起因する。
撤退前のForever 21はアメリカ生まれのファストファッションの代表格の1社とも言えるブランドだった。
日本ローカライズされた新商品シリーズの1つ「POP」。Forever 21らしい「アメリカの90年代レトロとモダンさ」のバランスをとった色やデザインが特徴。
撮影:小林優多郎
特に日本国内での競合との戦いについては、同じくファストファッションブランドであるユニクロと明暗が分かれた。その一因として挙げられているのが、「ローカライズ不足」と「“長く使って、不要になったら売る”という消費者ニーズの変化へ対応できなかった」点ではないか。
新商品シリーズの1つ「FEMINNE」。アジアの甘い「かわいい」を取り入れたデザイン。
撮影:小林優多郎
新生Forever 21はまさにその2点に切り込む戦略をとる。
今回の新商品のうち8割が日本で企画した製品、残り2割がアメリカの店舗から仕入れた製品という比率になる。
当初は「レディースのみ」とした理由
さらに、再上陸当初の商品は「レディース」に限定される。メンズやキッズ向け商品は今後の反響を見て検討していく方針。
これは「本国との“再上陸当初はレディースのみ”というライセンス契約上の影響もある」(ゲートウィン担当者)そうだが、ターゲットも絞ることで、それまで当たり前だった「大量生産・大量販売・大量破棄」から脱却する。
新商品シリーズの1つ「BASIC」。日本ローカライズによりZ世代やミレニアル世代よりさらに上の世代でも手の取りやすいカラーを意識したという。
撮影:小林優多郎
今回の注目商品の1つがジーンズ。海外拠点で製造されているが、素材は日本のものを利用している。一例として「スキニージーンズ」の価格は4000円とアナウンスしている。
撮影:小林優多郎
日本発のキャラクター「ベジタブル21」。その名の通り21種類の野菜を模したキャラクターがいる。日本の「キャラクター文化」などを意識したもの。
撮影:小林優多郎
日本オリジナルのバッグ。カタカナ、ひらがな、漢字で「Forever 21」を表現。
撮影:小林優多郎
その方針は販路にも表れている。アダストリアはForever 21について、「EC 6割、実店舗4割」とネットでの通販に注力する方針を打ち出している。
その理由は当然、繁華街などへの出店で発生する家賃や人件費などのランニングコストの削減もあるだろう。ただ、アダストリアとしては、自社ECで培ったデータ分析のノウハウを活用することで、より適正な在庫管理やトレンドの見逃しを防げることも強調する。
ゲートウィン担当者は「物を残さないことが1番サステナブル」と話しており、過剰な在庫余りを防ぐことによって、環境に対する感度の高いZ世代やミレニアル世代からの評価も期待している。
品質アップ、価格帯もやや上昇か
商品の中には、比較的しっかりとした値段のするものも。
撮影:小林優多郎
一方で気になるのが価格だ。
再上陸発表時に新生Forever 21は「平均商品価格4000円、平均客単価5800円程度」を目安にしていることが明らかになっている。
実際、今回の新製品の中でも
- 機能性素材の「WNF(Wear Not Filter)ビッグスウェット」……3960円(税込)
- 日本産素材を使った「スキニージーンズ」……4000円(税込)
- オーガニックコットン使用の「カップ付きリブ キャミソール」……2200円(税込)
など、となっている。
目玉商品の1つ「ショートスウェット」(左)と、3960円の「ビッグスウェット」(右)。タグ以外にForever 21のロゴがなく、目立つ胸の位置にはテーマである「Wear No Filter」と書かれている。
撮影:小林優多郎
各種インナーにはオーガニックコットンが使われている。
撮影:小林優多郎
往来のForever 21を知っているユーザーであれば「率直に価格帯が上がった」という印象も受ける。
いずれも素材自体の品質を上げたり、「生産・労働環境を含めて厳しく選別」(ゲートウィン担当者)した結果のコストアップではある。
なお、実店舗については、2023年2月中に販売機能のないショールームも都内にポップアップとして設置予定。続く4月には大阪「三井ショッピングパーク ららぽーと門真」内に実店舗のオープンを予定している。
円安傾向や景気の先行きが見えず財布の紐が一層引き締められる中、消費者がForever 21にブランド的な「付加価値」をどう見出すか。販売開始後の反響が待たれる。