ソウタさん(仮名)がNFTとして保管している子どもたちの作品。
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- ファイナンシャルプランナーのソウタさん(仮名)は、金融リテラシー教育の一環として、自身の子どもたちに、暗号資産(仮想通貨)でお年玉を与えている。
- 暗号資産のお年玉は、値上がりしたときの税金問題も鑑みて、「ペーパーウォレット」という形で与えた。
- しかし、ソウタさんは暗号資産の値上がりを期待しているわけではない。そこから生まれる親子の会話がなにより大事だと考えている。
お釣りを知らない子どもたちが増えている。最近の子どもは、実際のお金に触れる機会が少ないからだ。
クレジットカードに電子マネー、そして暗号資産(仮想通貨)――さらにはそれぞれのカテゴリー内で乱立するブランドたちと、現代のお金環境は驚くほどに多様化・細分化している。基本的には現金一択だった、親世代の子ども時代と比べて、雲泥の差だ。
「『お金』というものは、魔法のカードのなかに無限に存在するものだと、子どもたちは思っているのではないか?」と、都内の金融コンサルティング企業に務めるファイナンシャルプランナーのソウタさん(仮名)は危惧する。「お金には限りがあって、さらに多様性も存在する。それを、ちゃんと伝えておかないといけない」
そのいい機会としてソウタさんは、お年玉に目をつけた。10歳と5歳になるふたりの息子へ、2022年の正月に、お年玉として暗号資産を与えたのだ。もともとソウタさんは、暗号資産が趣味で、子どもたちの絵をNFTに鋳造して、保管目的でオープンシーへアップロードしていたことが、ヒントとなった。
暗号資産を通して伝えたいもの
暗号資産として、ソウタさんが子どもたちに与えた金額は、1000円程度。もちろん、それに合わせて、通常の円のお年玉も与えている。
「子どもたちの反応としては……たぶん、まだわかっていないと思う。ビッドコインもSuicaもおそらく同じものだと捉えているのでは」
ただ、5歳の下の子はともかく、10歳の上の子は、ご多分に漏れず「フォートナイト」などのようなゲームにハマっている。そこで使われているゲーム内通貨も、基本的にはお金だ。そういうところから、デジタル通貨の考え方を理解するのは、想像以上に早いのではないかと期待している。
「要は、なんであっても、実需(実際の需要)があって、みんながお金と認識したら、それはお金になる。暗号資産のお年玉を通して、そうしたお金の有限性と多様性を知ってもらえたらうれしい」
ペーパーウォレットという形式で
暗号資産のお年玉は、「ペーパーウォレット」という形で与えた。これは、暗号資産のアドレスをプリントアウトしたもので、いわば通貨としての価値を用紙に封じ込めたものだ。誰でも無料で作成することができる。
ビットコインのペーパーウォレット
wikipedia
暗号資産のウォレットは、いわゆる「ホットウォレット」と呼ばれるデジタルウォレットと、「コールドウォレット」と呼ばれるハードウォレットが有名だ。ペーパーウォレットは、それらの中間にあたる存在といえるかもしれない。
デジタルウォレットは、常時ネットに接続しているため、利便性は高いが安全性に懸念がある。ハードウォレットは、ネットとは切り離されたUSBメモリなどが主流になるので、安全性は高いが利便性は低くなる。
ペーパーウォレットは、ネット環境とは切り離されているためデジタルウォレットより安全性は高く、一見お金とわかるようなデザインでプリントアウトされるのでハードウォレットよりは保管しやすい。ただし、現金と同様、物理的に、盗まれたり、焼かれたり、劣化したりという状況には弱い。
「デジタルウォレットやハードウォレットだと、基本的には15歳未満は自分名義のものを作れない。なので、将来的に値上がりしたときに、彼らのものだと証明できなかったら、税金的にも問題があるなと思い、ペーパーウォレットにした」
値上がりを期待するわけではない
とはいえソウタさんは、値上がりすることを期待して、暗号資産を与えたわけでもない。何年か経過して、ふとしたときにそれを再び見つけて、「こんなことがあったな」と思い出すくらいで十分だという。
「自分が子どものときに、たとえばトヨタに1万円を投資していたら、どうなっていたか? それが、アメリカの企業だったら、どうなっていたか? チャートを示して、教えてあげることが何度かあった。それを、暗号資産のお年玉で、実体験として再現できる」
一方、2022年は米大手暗号資産取引所FTXの破産や中央銀行が「デジタル円」の実証実験の準備を進めているなど、非中央集権的な従来の暗号資産にとってはネガティブなニュースが相次いだ。特にFTXの破産は、ビッドコインのみならず、ほとんどのアルトコインの下落要因となっている。
「あくまで個人の見解だが、世の中に使われるサービスは残ると思っている」と、ソウタさんは語る。「従来の暗号資産も、きちんと使われるものは、そのうち復調するはずだ。みんながお金と認識したら、それはお金になるので」
今年はさらにドルのおまけ付き
だから、2023年の正月にも、再び暗号資産のお年玉を与えようと、ソウタさんは考えている。しかも今年は、円と暗号資産に加えて、ドルのおまけ付きだ。先日、アメリカへ出張に行ったソウタさんは、現金を使う機会が少なかったため、手元にドルを余しているからだ。
「今年は為替レートも暗号資産も大きく値が動いた。そうした値動きによって、買いたいものが買えるようになったり、買えなくなったりすることや、単純に高い安いを面白いと思えるようになってもらいたい」
また、子どもでも証券口座を作れるPayPay証券のようなサービスもある。なので、お年玉などを利用して、なにかに投資をするということも、早めに教えてあげたいと、ソウタさんは付け加える。
「米国企業でもいいし、日本企業でもいい。投資という形で企業を応援することで、どんな反応が得られるのか? 親子で一緒になって調べて、考えることが重要だと思う」