景気の不透明感が増す中で、Z世代は、自身の経済基盤を強化する必要がある。
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- Z世代は就職活動において、企業のミッションや雇用の安定性を重視しがちだ。
- しかし、これらの希望を優先し、給与データを無視すれば、経済的に痛手を被るおそれもある。
- 不況が迫る今、Z世代は将来の経済状態を考慮した上で職探しに臨むのが得策かもしれない
最も若い労働者層に当たるZ世代にとって、特に職場に求める要素はいくつかある。しかし、それらを満たすために給与水準を無視することは、彼らの経済的な将来に影響を及ぼしかねない。
Z世代は、多様性のある職場環境、柔軟な勤務時間、情熱を注げるキャリアを希望している。また、企業のミッションや価値観の一致、ウェルネス関連の福利厚生などを、上の世代よりも優先しがちだ。
「Z世代の多くは、給与などの要素より、企業のミッションや目標に魅力を感じている」。求人検索プラットフォーム、シンプリファイ(Simplify)の創業者マイケル・ヤン(Michael Yan)は、Insiderにそう語る。
さらに、メタ(Meta)やツイッター(Twitter)、CNNといった有名企業のレイオフを受け、雇用の安定性を重視する人も多い。ハンドシェイク(Handshake)が2022年6月13日から7月6日に実施した調査では、2023年卒業予定者の74%が、就職活動で雇用安定性を優先していると回答した。この調査は、2022年および2023年に卒業を予定する求職者1432人を対象としたものだ。
サンフランシスコ州立大学4年のジアナ・ガイタン=ナランジョ(Giana Gaitan-Naranjo)さん(21)は、「最近は職を失う人が多いので、より安定性を感じられる仕事を探すことに目を向けている」とニューヨーク・タイムズ(NYT)に語っている。
Z世代が公平性、多様性、持続可能性を求めて戦うことは、未来の働き方や生き方に大きな意味を持つ。しかし、Z世代がそれらを優先して高賃金の仕事に背を向けることになれば、不況が迫る中でいざという時の貯えを増やし、将来の出費に備えるチャンスを逃す人も出てくるかもしれない。景気の不透明感が増す中では、自身の経済基盤を強化することが必要になってくる。
雇用環境は、見かけほど悪くない
2022年はじめにおこなわれたデロイト(Deloitte)の調査では、毎月の生活費に余裕があると答えたZ世代は4分の1にすぎず、46%は給与ぎりぎりの生活を送っていると答えた。この調査は、2021年11月から2022年1月に、46カ国のZ世代とミレニアル世代の2万3220人を対象に実施された。
さらに、貯蓄の難しさや物価上昇により、Z世代の半数以上は、十分な貯えのないまま退職を迎える可能性がある。ボストン大学の経済学者ローレンス・コトリコフ(Laurence Kotlikoff)はInsiderにそう指摘した。
一方で、雇用の安定を優先することは賢明な判断に聞こえるかもしれないが、雇用は多くの人が考えるほど差し迫った問題ではない可能性もある。
というのも、テクノロジーやメディア業界では相当数が解雇されているものの、アメリカの失業率は11月に横ばいとなり、50年ぶりの低水準にとどまっているからだ。アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は、2022年の失業率は3.7%、2023年には4.4%と微増にとどまると予測している。つまり、若いアメリカ人の大多数が解雇に直面することはないことが示唆されている。
さらに、もしZ世代が職を失ったとしても、来年だけでなく今後数年間は、労働力の需要が力強いと考えられる根拠がある。
グラスドア(Glassdoor)のチーフエコノミスト、アーロン・テラザス(Aaron Terrazas)は先ごろInsiderに、「人口の高齢化と、近年における移民の減少により、米国が長期的な雇用難に直面する可能性が高まっている」と語っている。
安定は、必ずしも高賃金につながらない
安定した仕事に長くとどまりすぎると、転職による給与アップのチャンスを逃すおそれがある。2022年10月に発表されたアトランタ連邦準備銀行の賃金上昇追跡調査によると、転職者の賃金は、過去12カ月間に7.3%上昇しているのに対し、同じ職にとどまった人は5.3%だった。
社会人になったばかりで年長の同僚に比べて給与が低いことが多い労働者にとって、賃金上昇は重要な問題だ。実際、金融情報サイト「ゴー・バンキング・レイツ(GoBankingRates)」によると、2021年におけるZ世代労働者の標準的な年俸は3万2500ドル(約445万円)だった
当然のことだが、Z世代の多くは、将来の経済的負担に備えて、就職活動では給与も重視している。先のハンドシェイクの調査では、74%の人が最優先事項として「初任給の高さ」を挙げており、「雇用の安定性を重視する」という回答と同率になった。
職を探している人は、新たな仕事に応募する際に、優先事項の中でもどれを優先するかをよく検討する必要があるだろう。