Z世代の創業者、マイケル・ヤン(左)とジジ・ロビンソン(右)。
courtesy of Yan and Madison Lane/Her Campus
- Z世代の創業者の多くは、自分自身と従業員のためによりよい職場を作り上げている。
- 彼らは従業員のメンタルヘルスとウェルネスをサポートすることに重点を置いている。
- そして他の世代のリーダーたちにもやり方を見直すことを迫っている。
大学4年生のジジ・ロビンソンは、学業をこなしつつ、持病によるスケジュール調整やオンラインでのパーソナルブランド確立に、バランスを取りながら向き合ってきた。だが、教授たちが彼女の個人的、職業的負担の大きさを理解していないと感じていた。
「教授たちは私が病気だと信じてくれない。症状が見て分かるようなものではないからだ」
ロビンソンは、診察のために授業を欠席すると叱責されたことがあり、社会人になっても同じような経験をするのではないかと心配していた。水曜日の午前10時や金曜日の午後3時など、診察が頻繁にあり、時間もかかるからだ。
「持病のせいで、社会的にも、精神的にも、そして職場でも、多くのものを奪われた」と彼女は述べ、「この状況に対する思いやりと共感の欠如が、自分自身で何かを作り上げるきっかけになった」と付け加えた。
ジジ・ロビンソンは、インスタグラム、ティックトック、リンクトインでコンテンツを制作している。
Samantha Sybo
彼女は自分のパーソナルブランドを「It's Gigi」というメディアビジネスに転換し、肉体的・精神的な健康に対する柔軟性について、これまで訴えてきたことを実践する自由を手に入れた。
COVID-19をきっかけに、ワークライフバランスが見直されるようになり、従来の仕事のあり方を否定するZ世代の創業者が増えている。ロビンソンもその1人だ。彼らは自分自身と従業員のためによりよい職場を作ろうとしている。9時から5時までの勤務時間といった時代遅れのルールを拒否し、高い給料よりも価値観が合うことを優先している。
メンタルヘルスのスタートアップ、リアル(Real)のチーフ・メディカル・オフィサーであるニーナ・ヴァーサン(Nina Vasan)博士は「Z世代のメンタルヘルスやウェルネスに対する考え方は非常に変わっている」と言う。
Z世代は他のどの世代よりも、メンタルヘルスの問題に取り組むことに関してオープンで、この問題に苦しんでいる他の人を助けることにも積極的であり、助けを求めるのも早い、と彼女は述べており、この世代は「我々が社会としてメンタルヘルスに取り組む方法について、多くの劇的な変革への道を切り開いている」と語った。
またヴァーサンによると、全社的にメンタルヘルスサポートシステムを導入している若い創業者たちは、他の世代のリーダーに対してこれまでのやり方を見直すよう迫っているという。
Insiderは、Z世代の仕事とウェルネスに対する考え方を理解するために、ロビンソン、ヴァーサン、その他の起業家に話を聞いた。ビジネスの未来がZ世代の手に委ねられている今、「コーポレート・アメリカ」の企業も成功するためにZ世代のリードに従う必要があるのかもしれない。
創業者の経験がポリシーに活かされる
非営利団体の創設者であるラリッサ・メイとロビンソンは2022年初め、メンタルヘルスに関する討論会で講演を行った。
Samantha Sybo
若い世代はメンタルヘルスへの取り組み方について新たな風を吹き込んだが、オンラインでビジネスを推進することで生じる感情的なダメージからZ世代の創業者が逃れられるわけではない。
メンタルヘルスに関する非営利団体#HalfTheStoryの創設者であるラリッサ・メイ(Larissa May)は「多くのZ世代創業者は、これまでにないほど消耗している。ブランド構築に向けてソーシャルメディアへ投稿することに疲れてしまったのだ」と述べている。
このストレスに対処するために、Z世代の創業者は、柔軟なスケジュール、社内サポートシステム、紹介(口コミ)プログラム、自分自身やチームのためにスクリーンから離れる時間の確保などのポリシーを導入している。
「Z世代の創業者たちは彼らの世代のために声を上げており、彼ら自身や彼らの会社、従業員がもっとバランスを取れるような世界を作ろうとしている」とヴァーサンは言う。
日々のルーティン、旅行ができるスケジュール、情熱を持って取り組むプロジェクトなどを優先するロビンソンは、採用した従業員にも同じようなメリットを与えるようにしているという。
また求人検索プラットフォーム、シンプリファイ(Similarly)を共同創業したZ世代のマイケル・ヤン(Michael Yan)は、エグゼクティブコーチの助けを借りながら燃え尽き症候群を軽減させ、職場の問題をうまくコントロールしている。加えて従業員との対話を優先しており、仕事や生活、彼らが必要なサポートについて語り合っているという。
「メンタルヘルスと会社の成功とのバランスを取るのは、ほとんど相反することのように思える」とヤンは言う。
「しかし自分自身の健康を優先しなければ、会社を成功させることは難しい」
Z世代の従業員が期待すること
求人検索プラットフォーム、シンプリファイを立ち上げたマイケル・ヤン(左)と2人の共同創業者。
courtesy of Yan
ヤンは、今の会社では従業員とメンタルヘルスに関する繊細な話をオープンにしているが、世界最大級のテック企業で働いていたときにはそのような体験はまったくなかったという。
しかし、Z世代の従業員は燃え尽き症候群が蔓延するカルチャーに我慢しているわけではないと、ラリッサ・メイは言う。だからこそメンタルヘルスのサポートや健康手当などの福利厚生が、いくつかの業界で従業員の定着率を高めているのだ。
大学のキャリアフェアで求職者とつながることは、共同創業者であるヤンの仕事の1つだ。
courtesy of Yan
求職者は、バランスを取ることを優先させるとともに、自分の信念を共有してくれる雇用主を見つけたいと考えている。
「多くのZ世代は、給与などではなく、企業の使命や目標に魅力を感じている」とヤンは言う。
実際、求人サイトのハンドシェイク(Handshake)が6月に行った調査によると、Z世代の学生は多様性、福利厚生などに関して自分たちと同じ考え方の企業で働きたいと考えている傾向があることが明らかになった。
「Z世代がより多く権力のあるポジションに就くようになると、(彼らの考え方が)上の世代にも浸透する形で、ポリシーやカルチャーも変えられるはずだ」とヴァーサンは言う。
「すばらしい文化的・社会的変化を見ることになるだろう」