評価されていると感じない従業員は、ストレスを感じたり、意欲を失ったり、反抗的になる可能性が高くなる。
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- アメリカの労働者は孤独で、意欲を失い、それに伴って生産性が低くなっている。
- 働く人のモラルと生産性を高めるには、リーダーが彼らに働くことの意義を感じさせる必要がある。
- これは、アメリカ政府の医務総監、バブソン大学の教授、リーダーシップの研究者らが発表したものだ。
アメリカの労働者は孤独で、意欲を失い、それに伴って生産性が低くなっている。企業のCEOや経営者は、その原因を解明することに関心があるが、それは収益が悪化しているからだ。
政府のデータによると、平均的なアメリカ人労働者の生産性は2022年初め、1947年以来最も急激な割合で低下した。それ以降は上向きにはなっているものの、経済学者たちは依然として懸念を抱いている。
一方、ギャラップ(Gallup)の2022年6月の世論調査によると、2022年は従業員の半数以上、 「おそらくはそれ以上」 が静かな退職をしているという。
解決方法は簡単で、リーダーが従業員たちに「自分は重要な存在である」と感じてもらうために努力をすることだ。コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Co)の調査によると、そうした感覚を持っている従業員たちはより良いパフォーマンスを発揮するという。「ビジネスに重要」という気持ちが、企業の収益を向上させるのだ。
従業員に働く意義を感じさせない経営者たちのもとでは、授業員たちの離職率は高くなり、静かな退職は増加し、生産性が低下する危険性がある。バブソン大学の経営学の教授らによると、従業員が自分が大切にされていると感じさせる方法には、コラボレーションやチームワークを促進する、感謝やねぎらいの気持ちを表す、従業員が私生活を顧みる時間をとる、などの方法があるという。
従業員に働く意義を感じさせない経営者は、
離職率や静かな退職をする率を上昇させ、
生産性を低下させる危険性をはらんでいる。
IT分野を中心とした調査会社ガートナー(Gartner)のコンテンツマネージャー、ジャッキー・ワイルズ(Jackie Wiles)は、3500人以上の労働者を対象とした調査に基づいた2022年1月のレポートで、「人々は人生に目的を求めており、それは仕事も含まれている。それを無視することは、少なくとも、目先のことしか見えていないと言えるだろう」と述べている。
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会社で働く意義を感じている従業員は忠誠心や生産性が高いという調査結果がある。
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健康と福祉に関する国の最高責任者、ビベック・マーシー(Vivek Murthy)医務総監が2022年10月の報告書に書いているように、アメリカでは離職率が高くなっている。
「人は自分が周囲の人にとって重要であることや、自分の仕事が重要であることを知りたいと思っている。自分が重要であることを知れば、ストレスが軽減することが示されている。一方で、そうでないと感じるとうつ病のリスクが高まる可能性がある」とマーシーは書いている。
「このことは、もろ刃の剣だ」と、ヨーク大学(York University)の心理学教授ゴードン・フレット(Gordon Flett)は、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に語っている。 自分が重要であると感じると士気が高まるが、取るに足らない存在であると感じると、従業員は過度な競争や怒り、反抗といった破壊的な行動を取るようになるという。
人々は人生に目的を求める。
それは仕事でも同じだ。
企業のCEOは、利益を上げるだけでなく、従業員を導くことが求められている。ここでは、従業員の目的意識を高めるために、リーダーができる3つの実践的な手順を紹介する。
1.従業員に気を配る時間を作る
経営学誌『ハーバード・ビジネス・レビュー(Harvard Business Review)』の2020年1月の記事で、ハブソン大学経営学部のケリー・ロバーツ・ギブソン(Kerry Roberts Gibson)を含む組織心理学を研究する3人の教授が、労働者の目的意識を高める方法についての研究結果を発表している。上司から「おはよう」「元気?」と声をかけられるだけで、仕事上の関係が良好になると従業員は彼らに話していたという。また、自分の生活についての話を共有することも喜びとなっているという。
「このような交流は、実は従業員にとって(そしてリーダー自身にとっても)貴重な接点なのだ」とギブソンと彼女の共著者たちは書いている。
2.ポジティブなフィードバックと改善点の明確化
『ハーバード・ビジネス・レビュー』の記事によると、自分のどこがうまくいっているか、どこを改善できるかを知っていると、従業員たちが仕事に目的があると感じる可能性が高くなるという。
「ほめられるだけの従業員は上司が本気かどうか疑い始める」とバブソン大学の教授たちは書いている。同様に批判しかされない従業員は、あきらめる可能性が高くなるという。
3.チーム内のつながりを意識する
ビベック・マーシー医務総監は2022年10月の報告書で、職場に文化的な感覚を生み出すことの重要性を強調した。コラボレーションとチームワークを奨励することはその一つの方法だと彼は書いている。また、従業員たちに感謝の気持ちを伝えることも一つの方法だ。チームの存在意義を高めたいと願うリーダーにとって重要なことがひとつある。それは本物でなければならないということだ。
「目的は単なる『企業のもう一つの取り組み』ではない」とマッキンゼーの報告書には書かれている。
「これを強制することはできない。また、矛盾していたり、偽善的だったり、傲慢だったりする態度で部下に接すると、組織、そしてあなたの評判に良いどころか、害を及ぼす可能性が高い」