メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)。
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フェイスブックやインスタグラム(Instagram)を運営する米メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)で、福利厚生のカットが進んでいる。
同社は近頃、従業員が職場との往復に配車サービス「リフト(Lyft)」を月200ドル(約2万8000円)分まで無料で利用できる制度を廃止した。同社の現役従業員2人がInsiderの取材に対して明らかにした。
この制度で無料利用できるのはリフトのみで、乗車クーポンを発行する形で運用していた。
フェイスブックの広報担当は「交通手段の提供方法を一部変更しました」としており、従業員にはこれまで通りオフィスとの往復交通費の一部が支給されるものの、拠点や従業員の居住地次第で従来とは異なる適用になるという。
メタは人員および経費削減を進めており、第3四半期(7〜9月)決算発表時の業績見通しでは、2022年の総費用を10億ドル削減する方針を発表。デイビッド・ヴェーナー最高財務責任者(CFO)は「より効率的な経営を実現するため、全社規模の大改革を進めています」と発言している。
同社は11月、1万1000人のレイオフ(一時解雇)を実施し、従業員数を8万7000人強から7万6000人まで減らした。
また、ツイッター(Twitter)やアップル(Apple)など大手テック企業がこぞって従業員にオフィス復帰を求める中、メタはパンデミック下で決定した方針を維持してリモートワークを推進しており、オフィスの規模縮小による経費削減を企図してデスクシェア(個人の専用デスクを撤廃)を導入している。
今回の配車サービス無料利用制度の廃止もそうしたコスト削減策の一環だ。
なお、メタの全従業員7万6000人が毎月200ドル分の配車サービス利用クーポンをフルに使うと仮定すれば、リフトにとっては年間1億8200万ドル(約255億円)超の乗車分に相当する。同社はうち何割かをドライバーから手数料として徴収し、売上に計上している。
つまり、メタ向けの福利厚生としての利用がなくなれば、リフトの売上高は(たとえ利用実態が全クーポンの半分だとしても)数千万ドル単位で減少する可能性があるわけだ。
それでなくてもリフトはパンデミック以前の乗客数を取り戻すのに四苦八苦している。
ブルームバーグ報道(11月8日付)によれば、第3四半期(7〜9月)のアクティブ乗客数は2030万人と、2019年末の2290万人に届かなかった。株価は年初来74%下落(12月12日時点)し、配車サービス市場で競合するウーバー(Uber)のほぼ半値で取引されている。
洗濯サービスも廃止
メタの福利厚生カットは今回に始まったことではなく、すでに2022年前半から本社キャンパスのランドリー(洗濯代行)サービスなど適宜廃止を進めてきた。
毎日無料で提供される夕食も、勤務終了後に送迎用シャトルバスで従業員が帰宅した後に提供時刻を変更した。以前は従業員たちが帰宅前に夕食を箱詰めして持ち帰るのが日常の光景だったが、それをできなくすることで食事サービスのコストを削減する狙いだ。
こうした福利厚生サービスは、一般企業の従業員にとっては馴染みのない風変わりなものに感じられるかもしれない。
しかし、過熱の一途をたどる雇用市場でエンジニアや他の高いスキルを持つ人材を何とか確保したい大手テック企業にとって、手厚い福利厚生による差別化は必要不可欠の手段として長く使われてきた。
景気後退入りが差し迫り、どの企業も足元でレイオフの必要に迫られる中、メタのように従業員に対する手厚い待遇を見直すところも出てきているのが実情だ。