カリフォルニア州のローレンス・リバモア研究所にある国立点火施設。
David Butow / Contributor
- アメリカエネルギー省の科学者たちは、核融合反応で初めて、投入したエネルギー以上のエネルギーを生み出した。
- 12月5日、ローレンス・リバモア国立研究所にある国立点火施設で、このマイルストーンが達成された。
- 原子力発電の擁護者は、これによってクリーンで安く、ほぼ無限の電力開発に向けて一歩前進したと述べている。
核融合反応を活用するための「ブレークスルー」が達成された。
アメリカエネルギー省(DOE)は2022年12月13日、核融合エネルギー研究における画期的なマイルストーンについて公式発表を行った。投入したエネルギー以上のエネルギーを生み出す核融合反応(ネット・エネルギー・ゲイン:正味のエネルギー利得)に、初めて成功したのだ。
12月5日、カリフォルニア州のローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)で核融合の実験が行われ、2.05メガジュールのエネルギーを投入したところ、3.15メガジュールのエネルギーが生成された。
クイーンズ大学ベルファストの物理学者であるジャンルカ・サリ(Gianluca Sarri)は「科学的にこれが可能であることが示されたのは初めてだ」とNew Scientistに語っている。
「理論的にはできるはずだと分かっていたが、これまで実験で確認されたことはなかった」
核融合エネルギーとは何か、そしてなぜそれが重要か
核融合に必要な条件を満たすために、ターゲットにレーザーを照射するイメージ図。
Lawrence Livermore National Laboratory
核融合は、軽い原子核同士が融合してより重い原子核になることだ。例えば、水素の同位体である重水素と三重水素の原子核が融合すると、ヘリウムになる。
このプロセスで爆発的なエネルギーが大量に放出されるとDOEは説明している。これは、現在商業的に利用されている原子炉を動かしている核分裂とは逆の反応だ。
核融合は恒星の中心で自然に起こる現象で、そうしてエネルギーが生み出されている。
1950年代から、この現象を地球上で再現する方法について研究が行われてきた。原子力発電擁護者が言うところのクリーンで安く、ほぼ無限の電力を開発するためだ。
国際原子力機関(IAEA)によると、核融合で生み出されるエネルギーは、同量の燃料を原子力発電所で核分裂させて得られるエネルギーの4倍で、石油や石炭を燃焼させて得られるエネルギーの約400万倍だという。
さらに、化石燃料と違って核融合は、気候変動の主な原因となる温室効果ガスの二酸化炭素を大気中に放出しない。また、核分裂と違って核融合は、長期にわたって有害な放射線を放出し続ける放射性廃棄物を作らないとDOEは説明している。
ロシアのレニングラード原子力発電所。2022年9月14日撮影。
Sezgin Pancar/Anadolu Agency via Getty Images
しかし、これまでのところ、核融合は我々のエネルギー問題を解決していない。
今回の「画期的」な発表が意味すること
12月13日の発表は、核融合エネルギー開発における大きな前進を示しているが、この技術を商業規模で応用するのは、まだ何年も先のことになりそうだ。
理論物理学者のチャンダ・プレスコッド-ワインスタイン(Chanda Prescod-Weinstein)は、DOEが採用しているプロセスでは、三重水素(トリチウム)が必要だと指摘する。これは水素の放射性同位体で、自然界にはごくわずかしか存在していない。
「最終的に変革につながる重要な情報が得られるかもしれないが、まだ分からない」とプレスコッド-ワインスタインは12月12日にツイートしている。
「レーザーで1日1回これができるようになったからといって、決してこのメカニズムを拡大できるというわけではない!」
アマゾン(Amazon)創業者のジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)などの投資家は、核融合を商業的に実現させようとするクリーンエネルギーのスタートアップに何十億ドルもの投資をしている。12月13日の発表により、このトレンドが続くことになりそうだ。