逮捕された「ハインリヒ13世」。2022年12月7日。
picture alliance / Contributor / Getty Images
- ドイツ貴族の末裔で「ロイス公」を名乗るハインリヒ13世という人物が逮捕された。
- ハインリヒ13世をはじめとする20人以上が、ドイツ政府転覆を企てたとして告発されている。
- 彼らは、現代のドイツ共和国は非合法だという極右の陰謀論を信じている。
ドイツで政府転覆を企てたとして25人が逮捕され、その中にはドイツの貴族の末裔も含まれていた。
2022年12月7日、ドイツ当局は、暴力的なクーデターを計画していたテロ組織のメンバーだとする25人を逮捕した。ニューヨーク・タイムズ(NYT)によると、ドイツ警察は国内16州のうち11州で150件の家宅捜索を行った。容疑者の中には、現代のドイツ連邦共和国は違法に設立されたものだと信じる極右団体「ライヒスビュルガー(帝国市民)」運動のメンバーも含まれていたという。
BBCによると、ライヒスビュルガーの信奉者は、2021年に大幅に増加して現在は約2万1000人に上るとされ、そのうち約10%が暴徒化する恐れがあると考えられており、政府を偽物だとして納税を拒否する者もいるという。
NYTによると、12月7日に逮捕されたのは警察官や軍人、それに「ロイス公」という今では廃止された称号を使うハインリヒ13世だった。
ハインリヒ13世は「ロイス公」を名乗っている。
picture alliance / Contributor / Getty Images
ハインリヒ13世とは何者なのか?
NBCによると、ハインリヒ13世(71歳)は、1918年の第一次世界大戦が終わるまでドイツのチューリンゲンを支配していたロイス家の一員だという。ロイス家の男性後継者はすべて「ハインリヒ」と名乗っている。この名前は、1197年に亡くなるまでドイツ王と神聖ローマ皇帝だった「ハインリヒ6世」からきたものだ。
NYTは、チューリンゲンは約100年前にナチスが初めて地方政権を獲得した場所だと報じている。
NBCによると、ハインリヒ13世が極右運動の中心であり、今回逮捕されたグループはドイツ政府を転覆させ、彼を指導者にすることを計画していた。
NYTによると、このグループはバート・ローベンシュタインにあるハインリヒ13世の狩猟用別邸で話し合うことが多かった。この別邸は会議室として使われただけでなく、地下に爆発物や武器が保管されていたという。
ドイツ、バート・ローベンシュタインにあるハインリヒ13世の狩猟用別邸。
Jens Schlueter / Stringer / Getty Images
NYTは、このグループが国家転覆のために軍事部門と政治部門を設立していたとも報じている。
ドイツ連邦検察庁のペーター・フランク(Peter Frank)検察官は12月7日の声明で「軍事部門は『祖国防衛企業』で構成される新たなドイツ軍を構築しようとしていた」と述べたとNYTが報じている。
「グループのメンバーは、目的を達成するには軍事的手段や暴力の行使によって国家の代表に訴えるしかないと考えていた」
さらに、グループ内の「小さな武装集団」がドイツ連邦議会を占拠するための「具体的な準備」を進めていた疑いがあるとも声明で発表されたとNBCが報じている。
Insiderはドイツ連邦検察庁にコメントを求めたが、回答は得られていない。
NYTによると、ハインリヒ13世は少なくとも2019年から反ユダヤ的な思想や陰謀論を支持しており、軍隊経験者などを積極的にグループに勧誘していたという。
2022年12月7日、テロ組織逮捕について声明を発表するドイツ検察庁のピーター・フランク検察官。
picture alliance / Contributor / Getty Images
ハインリヒ13世はスイスやオーストリアなど他国の貴族から資金援助を受けようとしていた。すでに確保していた資金では、クーデター時やドイツ政府を倒した後に使用できる衛星電話購入していたとNYTが報じている。
ハインリヒ13世のパートナーであり、検察に「ヴィタリアB」と名付けられたロシア人女性は、ハインリヒ13世がロシアの外交官とコンタクトを取るのを助けたとされているが、外交官が反応したことを示す証拠は今のところないとNYTが報じている。ワシントン・ポストによると、ヴィタリアBもこのグループに関与したとして逮捕されたという。
ロイス家のメンバーは、以前からハインリヒ13世とは距離を置いており、遠い従兄弟は彼を「混乱した老人」と呼んでいたとNYTが報じている。