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ANYCOLOR第2四半期は売上高119億7300万円。2022年の「にじさんじ」の活動ハイライトと決算をふり返る

「にじさんじ」は国内最大規模のVTuberプロジェクトの一つだ。運営元のANYCOLORは2017年に早稲田大学の学生だった田角陸氏が設立した「いちから株式会社」が前身。

「にじさんじ」は国内最大規模のVTuberプロジェクトの一つだ。運営元のANYCOLORは2017年に早稲田大学の学生だった田角陸氏が設立した「いちから株式会社」が前身。

出典:「ANYCOLOR」事業計画及び成長可能性に関する事項、ANYCOLORコーポレートサイトより。

2Dや3Dのキャラクターをアバターに用い、ネット上で活動するバーチャルYouTuber(VTuber、バーチャルライバーとも呼ぶ)のプロジェクト「にじさんじ」を運営するANYCOLOR(エニーカラー)が12月15日、2023年4月期第2四半期の決算を発表した。2022年5月〜10月期の売上高は119億7300万円(前年同期比92%増)。営業利益は43億1000万円、当期純利益は29億8800万円でともに前年同期比143%増と好調だ。営業利益率は36%、純利益率は25%と利益率の高さが際立つ。

また、2023年4月期の業績予想を「190億円〜210億円」から225億円に上方修正。あわせて、東証グロース市場からプライム市場に市場区分を変更する申請に向けた準備に入っていることを発表した

以下、2023年4月期第2四半期決算内容の概況と2022年の「にじさんじ」のハイライトを解説する(参考:決算短信決算説明資料)。

決算ハイライト。

決算ハイライト。

画像:ANYCOLOR 2023年4月期 第2四半期決算説明資料より引用

ANYCOLORと「にじさんじ」とは何か?

ANYCOLORは、2017年に早稲田大学の学生だった田角陸氏が設立した「いちから株式会社」が前身のエンターテインメント企業だ。

2022年6月8日には、東証グロース市場に上場。公募・売出価格(公開価格)は1530円だったが、上場初日は買い気配のまま売買が成立せず初値がつかない人気ぶりに。初値は公開翌日に公開価格の約3.14倍となる4810円つけた。

当初は誰もがVTuberになれるスマートフォン向けアプリ「にじさんじアプリ」の事業を企図していたが、その宣伝のためにオーディションで採用したライバーの月ノ美兎さんら「にじさんじ1期生」が人気を博したことなどから、タレント事業の運営へシフトした。

現在では英語圏にも進出。韓国語、中国語で配信するライバーも活躍している。

公式サイトによると、現在ANYCOLORの下で活動するライバーは約150名。決算短信によると日本国内で活動するライバーは112名。これまでの「にじさんじ」の歴史と魅力については、ANYCOLOR上場時の解説記事を参考にしてほしい。

ANYCOLORの売上と2022年の「にじさんじ」ライバーの活躍をふり返る

売上高(四半期)推移

売上高(四半期)推移

出典:ANYCOLOR2023年4月期第2四半期決算説明資料

現在、ANYCOLORの売上高は大きく2つのプロジェクトに所属するVTuberの活動から生じる売り上げから構成される。メインは「にじさんじ(日本)」と英語圏の「にじさんじEN」の2つだ。

2023年4月期の四半期ごとの売上高をみると、第1四半期は59億3100万円(EN:16億3000万円、日本:41億2200万円)、第2四半期は60億4200万円(EN:14億4900万円、日本:44億8300万円)となっている。

10月開催のイベント「にじさんじフェス」の影響でイベント売り上げが8億3700万円に拡大。一方で、売り上げの中核をなすコマース事業やNIJISANJI ENの売上高は前四半期に比べて減少。全体の売上高の伸びは鈍化した。

売上高(NIJISANJI EN)

売上高(NIJISANJI EN)

出典:ANYCOLOR2023年4月期第2四半期決算説明資料

ANYCOLORは今四半期決算について「イベント領域の貢献が大きい」とし、NIJSANJI ENについても「引き続き好調」と説明する。

ただ、「にじさんじフェス」にリソースを集中させたことで他の領域に影響が及んだとしている。ライバー数も増え、今四半期の従業員数も269人(前期比22人増)と増加傾向だがリソースの配分は今後の課題になりそうだ。

なお、主軸の「にじさんじ(日本)」の売上高は今四半期では全体の7割を超えた。以下、「にじさんじ(日本)」の売上の柱4つを解説する。

売り上げの柱1:ライブストリーミング

出典:ANYCOLOR2023年4月期第2四半期決算説明資料

まずはYouTube上で各ライバーが配信した際、視聴者から受け取る投げ銭「スーパーチャット」や、YouTubeチェンネルの月額メンバーシップなど「ライブストリーミング」の売り上げだ。今四半期は8億2700万円(前期比4400万円減)だった。

コロナ禍で「おうち時間」が増えたこともあり、にじさんじライバーがYouTube上で再生された時間は近年拡大の一途だった。2020年第1四半期は4200万時間だったが、2023年第1四半期には1億9100万時間をマーク。今四半期も同じ水準だった。

YouTubeはライバーにとってホームグラウンドのようなものだ。雑談やゲーム実況、直近ではワールドカップの同時視聴実況など日々さまざまなシーンで活動している。

2022年も「にじさんじ」には多くのライバーが生を受けた。5月末のデビューからわずか約2週間でチャンネル登録者100万人を突破した“お嬢様になりたい一般人”系VTuberの壱百満天原サロメさんの存在は大きいだろう。

これまでVTuberに触れることのなかった人々にもその認知を広げ、特に「ですわ〜!」という中毒性のある語尾はサロメさんの代名詞となった。

7月13日には新グループ 「VOLTACTION」、にじさんじENでも2月に「Noctyx」、7月に「ILUNA」、12月には「XSOLEIL」と新たなグループが立て続けにデビュー。2020年8月デビューの「世怜音女学院演劇同好会」、2022年3月に傘下のバーチャル・タレント・アカデミー(VTA)からデビューした「Ranunculus」の例もあり、ユニットやグループでのデビューは「にじさんじ」のデビュー戦略の定石となりつつあるようだ。

ただ、「Noctyx」では遊間ユーゴさんが12月14日で卒業。ANYCOLORは「当社ライバーとしての活動に関わる認識、配信内外での行動について、多くのにじさんじ及びNIJISANJI ENライバーが所属する当社として容認できない点が多々あり、ご本人も納得の上、卒業」リリースで発表した。

「にじさんじ」創設当初から活動しているライバーにとっても、2022年は大きな節目となった。デビューから約5年、「にじさんじ」隆盛の立役者の元1期生・月ノ美兎さんが12月12日、チャンネル登録者数100万人を突破した。

ライブストリーミング領域では、にじさんじプロジェクト内のコラボ企画(「箱内コラボ」などと呼称)も活況だ。

今夏には舞元啓介さんが、にじさんじと縁の深い個人勢VTuberの天開司さんと共催している「にじさんじ甲子園」が開催された。2022年で3回目となった大会で、8月14日に開催された決勝戦の視聴回数は336万回超。今四半期の決算説明資料でも紹介された。

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出典:ANYCOLOR2023年4月期第2四半期決算説明資料

「にじさんじ甲子園」は監督となったライバーが野球ゲーム「パワプロ」シリーズのキャラメイクを用い、ライバーを選手として育成する笑いあり、涙ありの一大企画。

今年は念願の初優勝を果たし、涙とともに人間の心と感情を手に入れたリゼ・ヘルエスタさん、「にじさんじ」卒業が決まっていた黛灰さんのドラマチックな好投、監督として初采配を先輩ライバーの樋口楓さんに労われたレオス・ヴィンセントさんの号泣が多くの視聴者の感動を誘った。

また、にじさんじENのVOX AKUMAさんと、笹木咲さんがVOXさんに似せて生み出したVOX YASHIRO社築さん)の対決は国境を超えた笑いを提供。ネット上でミームにもなった。

この12月には剣持刀也さん主催の「マリオカート」最速を決める「マリカにじさんじ杯」が開催中。今年で5回目となり、81名のライバーが参加する。

年末には竜胆尊(りんどう・みこと)さん主催で開かれてきた「NJU歌謡祭」が「にじさんじユニット歌謡祭となり、総勢80名以上のライバーがAR・3Dを用いたステージを3日間にわたって披露する。公演の模様はYouTubeやニコニコ生放送での配信に加え、全国各地の映画館でもライブビューイングされる。

こうした大きなコラボ企画は、自分がこれまで知らなかったライバーと新たに出会える扉にもなっている。

「にじさんじ」運営も公式チャンネルでコンテンツ提供に力を入れる。意外な業界の工場見学をレポートする「にじさんじのB級バラエティ(仮)」やクイズ番組「にじクイ」をはじめ、2022年5月にはライバーたちが話題のゲームに挑戦する『ゲームる?ゲームる!』がスタートした。

さんと葛葉さんによる「ChroNoiR」やユニットグループ「ROF-MAO」も独自のYouTubeチャンネルで番組企画をメインに活動の幅を広げている。今夏には女性ライバー7人による男装ユニット「Sepiast」も結成された。

8月は笹木咲さんと椎名唯華さんのユニット「さくゆい」が結成4年の初オリジナル楽曲「さくゆいたいそう」を発表。TikTok上で人気を集めた。

売り上げの柱2:コマース

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画像:ANYCOLOR 2023年4月期 第2四半期決算説明資料より引用

売り上げの2つ目の柱は、公式のECサイト「にじさんじオフィシャルストア」などで販売されるオリジナルグッズなど、コマース事業でのコンテンツだ。今四半期の売上高は19億9200万円(前期比2億7400万円減)で、売上高の3割以上を占めている。

グッズやチケット購入に必要な「ANYCOLOR ID アカウント」の数は71万4000(前年同期比101%増)。内訳を見るとインターネットに親しみのある10代〜20代を中心に固定ファンを増やし、29歳以下が82%を占めている。男女比では男性36%、女性64%となっている。

出典:ANYCOLOR2023年4月期第2四半期決算説明資料

コマース分野では、ライバーがデザインしたTシャツやマグカップなどグッズのほか、ライバーの衣装を実際に再現したアパレル商品も販売している。

さらに「ボイス」と呼ばれる音声コンテンツも人気だ。2月ならバレンタイン、12月ならクリスマスなど季節に応じたドラマCDのようなボイスコンテンツもファンに支持されている。冬の「ウィンターデート」企画ではライバーをイメージしたマフラーなども発売している。

各ライバーの誕生日やユニット活動の周年記念日の前後には、著名イラストレーターの書き下ろしイラストを用いたアクリルスタンドなどの記念グッズが企画され、公式ファンクラブと共にこちらも“推し活”のメインシーンの一つとなっている。

加えて10月にはライバーがプロデュースするアパレルプロジェクト「UN-DIMENSION」がローンチ。第1弾コレクションは「ジェンダーレス」をテーマに叶さん、樋口楓さんを起用。大丸東京店でポップアップストアもつくられた。

売り上げの柱3:イベント

10月に開催された「にじさんじフェス」の様子。

10月に開催された「にじさんじフェス」の様子。

撮影:吉川慧

3つ目は所属ライバーのコンサートなどのリアルの場でのイベント収益だ。今四半期の売上高は8億3700万円(前期比6億6400万円増)と大きく躍進した。

この四半期の決算にも現れている通り、にじさんじにとって2022年はリアルの場でのイベント開催で存在感を発揮した年だった。

7月には葛葉さん、叶さん、「ROF-MAO」によるライブ「Aim Higher」を開催。10月には幕張メッセの1〜6ホールで文化祭をテーマにした過去最大級のイベント「にじさんじフェス」が開かれた。

「にじさんじフェス」では公式番組やユニットによるステージ、ライバーが企画した特別授業、1対1で話せる「視聴覚室」企画、ライバーの企画から生まれたアトラクションなどが人気を博した。

ライバーの私物やライバーが創作した美術作品なども展示され、普段は配信で見ているライバーが確かにこの世に存在しているという質感をこれでもかというほど味わえるイベントだった。

「魔王様」ことヤン・ナリさんが配信で描いたにじさんじライバー全員のイラストのパネル展示。

「魔王様」ことヤン・ナリさんが配信で描いたにじさんじライバー全員のイラストのパネル展示。

撮影:吉川慧

ライバーがプロデュースしたフードメニューも人気で、Business Insider Japanの記者が訪れた際には150分待ちの盛況ぶり。待ち時間がトレンド入りするほどだった。また、新型コロナ禍で延期にされた「にじさんじ」4周年記念の3D音楽ライブ「FANTASIA」の振替公演も併せて実現した。

近年、にじさんじの音楽活動はさらに広がりを見せている。6月には、にじさんじでも屈指の歌唱力を誇る3人(町田ちまさん、戌亥とこさん、朝日南アカネさん)がボーカルユニット「Nornis」を結成。2023年3月に初のワンマンライブを大阪で開催する。

ソロでは2022年にメジャー・デビューを果たした叶さんが2023年3月に初のソロコンサート『午前0時の向こう側』を大阪で催す。10月には▽▲TRiNITY▲▽が2ndアルバム『Δ(DELTA)』発売した。

近年は3Dモデルの精細さやステージの演出技術も向上しており、3Dモデルを得たライバーも増えている。今後もリアル領域でどのような活動が展開されるのか期待が集まる。

売り上げの柱4:プロモーション

画像:ANYCOLOR 2023年4月期 第2四半期決算説明資料より引用

4つ目がプロモーション。「案件」とも呼ばれ、企業の新商品やゲーム、サービスなどのPRで得られる収益だ。今四半期の売上高は8億2700万円(前期比1500万円増)だった。

2022年はソーシャルゲームや食品メーカーなどに加え、GoogleYahoo!など大手プラットフォームやNTTドコモの「ahamo」との案件なども広がった。コンビニエンスストアとのコラボでは、ファミリマートがタイアップしたゼリーやドリンクなども誕生した。

こうした企業の商品PR以外に、メディアでの活動も増えた。10月からはJFN系列のFMラジオ『AuDee CONNECT』で緑仙さんがパーソナリティに就任。火曜レギュラーとして活躍している。プロ野球Jリーグとのコラボも生まれ、FIFAワールドカップのカタール大会では全試合を中継するABEMA TVのサポーターに舞元啓介さん、伏見ガクさん、静凛さんが就任した。

ここまで各領域の決算内容とライバーの活動を振り返ってみたが、2022年はそれぞれのライバーの活動の幅が次元を超えて広がったことはもちろん、ユニットの可能性もさらに広がった年だったと言えるだろう。

誹謗中傷対策で「ホロライブ」運営会社と協力体制

こうしてライバーの活動とANYCOLORの収益の幅が広がる一方、所属するライバーに対する誹謗中傷行為などへの対策も課題となっている。

所属ライバーが活動休止や引退に追い込まれてしまう事例もあるからだ。

直近では「にじさんじ」のアクシア・クローネさんが8月に配信活動を休止。ANYCOLORによると、SNS等において「誹謗中傷、悪意に基づく虚偽の情報の流布、アクシア・クローネに関わった他の弊社所属ライバーに対する誹謗中傷や危害予告がなされ、これが悪化・継続」していたという。

加えて、アクシアさん以外の所属ライバーの配信でも「(アクシアさんの)名前が含まれたスパムコメントが大量に投稿され、弊社の配信事業に対する著しい業務妨害行為」があったという。

ANYCOLORは「今回のような誹謗中傷行為等及び業務妨害行為によって、弊社所属ライバーが活動休止に追い込まれた事実を極めて重大な問題として捉えており、こういった卑劣な言動を決して許容いたしません」と表明した。

アクシアさんも「無期限活動休止」について説明した自身の配信で一部ファンの行動に苦言を呈し、理解を求めていた。

しかし、アクシアさんは11月30日をもって「にじさんじ」を卒業。ANYCOLORによると「本人の強い意向」だったという。

こうした中で、業界では大きな動きがあった。ANYCOLORと、「ホロライブプロダクション」などを運営するカバーが12月5日、所属するVTuberに対する誹謗中傷行為などの根絶に向けた対策で連携すると発表。業界の大手2社が所属VTuberたちが安心して活動できる環境を断固守っていく姿勢を改めて示したかたちだ。

具体的には以下の内容での連携を検討している。

・所属バーチャルライバー/所属タレントに対する名誉毀損行為、プライバシー権の侵害行為、『荒らし』行為等の営業権の侵害行為、殺害予告・ストーカー行為等の攻撃的行為に対して、その対策の実行にあたってのノウハウの共有


・(両社の所属バーチャルライバー/所属タレントを被害者とする事案に関する)法的措置を含めた各種対策の連携、警察諸機関と両社との連携体制の構築等(ANYCOLOR・カバーの共同声明文より)

共同声明文で両社は誹謗中傷行為などについて、「インターネット掲示板やSNS等において、匿名のもと気軽に行われている」「所属バーチャルライバー/所属タレントの心を傷つけ、その活動が困難な状態に陥らせ、ひいては彼ら/彼女らの人生をも狂わせてしまう」と、強い言葉で指摘した。

所属ライバーが自由で安心・安全に活動できる環境を整え、個性や才能を発揮できるステージをいかに確保できるか。ファン側としても、ライバーの裏にはリアルな人間がそこにいると認識し、応援できるかが、今後の成長のキーの一つでありつづけそうだ。

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