アマゾンは日本でも中小企業を対象とした配送パートナープログラムを展開する。
撮影:小林優多郎
アマゾンは12月19日、日本国内で新しい配送方法「Amazon Hub デリバリーパートナープログラム」を正式に開始した。
Amazon Hub デリバリーパートナープログラムは、アマゾンが中小規模の事業者と契約し、アマゾンで注文された荷物を契約した事業者に配送してもらう取り組みだ。
まさに「近所のお店の店主やスタッフが、アマゾンの荷物を届けるようになる」と考えるとわかりやすい。
既存の配送方法と比べて、どんな違いがあるのか解説しよう。
本業の余った時間で荷物を届ける
Amazon Hub デリバリーパートナープログラムの特徴。
撮影:小林優多郎
現在、アマゾンは日本国内で大きく分けて3つの配送方法を活用していた。
- デリバリーサービスプロバイダー(アマゾンが契約した地域の配送業者)
- Amazon Flex(アマゾンと業務委託契約を結んだ個人の配送者)
- サードパーティーキャリア(日本郵便、ヤマト運輸、佐川急便)
そこに加わったのが、今回のAmazon Hub デリバリーパートナープログラムだ。同プログラムは、2015年にインドで開始し、スペイン、メキシコに続き日本が4カ国目。
Amazon Hub デリバリーパートナープログラムとAmazon Flexは「本来は運送業ではない人が荷物を運ぶ」という点では同じだが、Flexが個人事業主を対象にしているのに対し、Hubは中小規模の事業者が対象となる。
Amazon Hub デリバリーパートナープログラムの条件。
撮影:小林優多郎
契約できる業種は特に定められていないが、加入条件として
- 主業務の空き時間やスタッフがいる
- 荷物を一時的に保管できる場所がある
という点が主に挙げられる。
契約した事業者は、2週間ごとに空き時間と運べる荷物の個数を指定する。その後、各地にあるアマゾンの配送拠点から契約事業者に荷物が運ばれ、その事業者が最後の注文者への配送を担う。
アマゾンでは現状、注文者が配送方法を選べない。配送先が対象の9地域(東京・千葉・埼玉・神奈川・大阪・京都・兵庫・愛知・福岡)であれば、順次Amazon Hub デリバリーパートナーが運ぶケースが出てくる。
ただ、その性質上、Amazon Hub デリバリーパートナーが運ぶ荷物は、「拠点から2km圏内」の配送先の注文に限定され、また荷物も徒歩や自転車で運べるレベルの重さ・大きさのものに限られる。
報酬は「配送できた商品」ごと
写真左からすでにAmazon Hub デリバリーパートナープログラムを活用している「フォトショップダイヤ」(東京)の鈴木吉昭さん、「浜田商店」(大阪)の濱田良太さん、柴犬専門店「オオノ」(千葉)の大野裕子さん。
撮影:小林優多郎
アマゾンはこの仕組みを2020年9月から実験的に開始。19日の会見では東京の写真館、大阪の居酒屋兼卸売業、千葉の柴犬専門店の3人の店主が登壇した。
それぞれ目的や重視するポイントは違ったが、いずれも「本業の間に働ける(逆に本業のある日・時間は配送しない)」「収入が増える」「地域の人との接点が増える」点が継続の理由になっていると話していた。
今回のAmazon Hubや既存のFlexは、事業者・個人側に「できないときは、やらない」という選択肢がある程度確保されている。
アマゾンジャパン アマゾンロジスティクスでディレクターを務めるAwanish Narain Singh(アヴァニシュ ナライン シング)氏。
撮影:小林優多郎
アマゾンによると、Amazon Hub デリバリーパートナープログラムの1拠点あたりの配送個数は1日あたり30〜50個。
単価は明らかになっていないが、報酬は「配送できた荷物の個数単位」となっており、支払いは2週間に1回単位で支払われる。
本業にするには運ぶ荷物を増やすしかなく、そうなると「余った時間」以外でも働く必要が出てきてしまうため、あくまでも「副業・副収入」の立ち位置のプログラムであることがわかる。
一方で、アマゾンは各国で労働問題を抱えている。大量の注文を捌く、各拠点や配送網の一部のスタッフから、労働に対する適正な報酬や待遇を求められている。
Amazon Hub デリバリーパートナープログラムでも、一定の運送品質を保ちながら、地域の事業者とパートナシップを築けるのか。
アマゾンは今後Amazon Hub デリバリーパートナープログラムの対象地域を日本全国に拡大予定で、その手腕が試される。