アップルは最新のMac、iPad、iPhone向けに「フリーボード」機能をリリースした。
撮影:小林優多郎
アップルが日本時間12月14日に追加した新機能「フリーボード」。
その名の通り「自由に描けるデジタルボード」の役割を持つ機能だが、その実力はどれほどなのか。
iPadOS 16.2、iOS 16.2、macOS Ventura 13.1にアップデートした各端末で使ってみた。
iPad+Apple Pencilで使いやすいホワイトボードアプリ
さまざまなオブジェクト、書き込みが配置できる「フリーボード」(画像はiPad版)。
画像:筆者によるスクリーンショット
「フリーボード」はいわゆるホワイトボードアプリの一種だ。デジタル上の板の上に文字や手描き文字、付せん、写真、図などを自由に配置できる。
さらに、iCloud経由で共有し、Apple IDを持つ家族や知人に共同編集を依頼することもできる。
同様の共同編集可能なホワイトボードアプリは「Miro(ミロ)」や、アドビが買収を発表したFigmaの「FigJam(フィグジャム)」、グーグルの「Jamboard(ジャムボード)」など複数ある。
そんな中でフリーボードの強みは、言うまでもなく「アップル製品との親和性の高さ」だ。
「ドラッグ&ドロップ」操作で、Safariからフリーボードに画像をコピーできる。
画像:筆者によるスクリーンショット
筆者は「iPad mini(第6世代)」「iPad Pro 12.9インチ(第5世代)」という異なるサイズのiPadを普段から使い分けている。2機種とも、基本的な機能は同じだ。
フリーボードの使い勝手はアップル純正の「メモアプリ」や写真アプリなどで使える「マークアップツール」に近い。
iPhoneでも使えるためタッチでも基本的な機能は利用できるが、Apple Pencilがあれば簡単な絵の描画やスクリブルを使った「手描き文字入力」が可能となる。
スクリブル機能を使えば、ペンを持ったまま「文字入力」ができる。
画像:筆者によるスクリーンショット
Apple Pencilのオプション機能である「Apple Pencilのみで描画」をオンにしておけば、Apple Pencilで画面に触れたときはペン、指で触れたときはオブジェクト選択、ピンチイン・アウトで拡大縮小といったマルチな使い分けもできる。
Apple Pencilの設定。
画像:筆者によるスクリーンショット
また、プリセットの「図」も豊富だ。
四角や丸、ひし形などのチャート図やマインドマップで使えそうな基本図形はもちろん、食べ物や動物、車などのシルエットがそろっている。
当然、それらの図形は拡大縮小してもギザギザにならない(ジャギーが発生しない)し、中身の色(塗り)や線の色や幅も自由に設定できる。
動物など様々なジャンルの図形が登録されている。
画像:筆者によるスクリーンショット
枠線の色や太さも変更可能。
画像:筆者によるスクリーンショット
なお、図形とは別に「付せん」も用意されているが、少し浮いたように見える影がついている点や、自由変形ができない(正方形が維持される)点などが、図形とは異なる。
いわゆるレイヤー(階層)的な構造をしており、後から追加したものは、前に追加したものより「手前」に配置されるが、オブジェクトごとに表示できるメニューから「背面(最背面)」「前面(最前面)」に移動させることも可能。
アプリ上では「背面」「前面」とあるが、これはレイヤーを1段階動かすのではなく「最背面に移動」「最前面に移動」の効果がある。
画像:筆者によるスクリーンショット
ファーストインプレッションとしては、非常に快適だ。非常に凝るなら別だが、簡単な図版を書いたり、マインドマップをつくる分には遜色ない機能を持っている。
Windows、Androidでは使えないが……
共有・共同編集は可能だが、かなり「相手を選ぶ」。
画像:筆者によるスクリーンショット
一方で、前述の競合ツールと比べると物足りないことが2つある。
1つ目は「対応デバイス」だ。フリーボードは12月20日時点で最新のiPadOS 16.2、iOS 16.2、macOS Ventura 13.1にアップデートしないと利用できない。
これは本当にそのままの意味なので、これらより古いバージョンのMacやiPad、iPhoneでは使えない。古めの機種では最新OSにアップデートできないケースもあり、そういった機種では使えないということになる。
もちろん、AndroidやWindowsでも利用できない。
手元にあったソニーのAndroidスマホ「Xperia PRO-I」で、共有用のリンクにアクセスしてみたが、Apple IDを確認されるまでもなくこの表示に。
撮影:小林優多郎
試しに手元のAndroidスマートフォンに、共有用のURLをコピーしてアクセスしてみたが、Apple IDの認証が走る前に「門前払い」されてしまった。
この仕様だと、相手の端末がわからないビジネス用途での利用は難しい。あくまでも個人での利用、もしくはApple IDを持つ家族、友人との共有が想定されているようだ。
個人的には、競合ツールのほとんどがOSを基本的には選ばないウェブツールである点、アップルも「FaceTime」で(ウェブベースで)AndroidやWindowsユーザーに門扉を開いている点を踏まえると、もう少し頑張ってほしいと感じた。
なお、書いたフリーボードはPDFで出力することもできるので、どうしても非対応のユーザーに送りたい場合は活用しよう。
対応Macでもマウスユーザーだと使いづらい
Mac版フリーボード。
画像:筆者によるスクリーンショット
2つ目は「Mac版フリーボード」の使いにくさだ。フリーボードの真価は「iPad+Apple Pencil」の組み合わせで発揮される、と言ってもいい。
具体的には、Mac版フリーボードが手描きができない。ペンが使えないのでしょうがないとも感じるかもしれないが、マウスやタッチパッドで線すら引けない仕様なのは、ただただ不可思議だ(図形に用意されている直線は配置できる)。
また、表示領域の移動もマウスだとしにくい。iPad版では2本指などのタッチ操作で直感的に表示範囲の拡大や移動が可能だが、Mac版でマウス装着時は、縦横のスクロールバーを操作する(マウスにホイールが付いている場合は、上下移動だけホイールでできる)。
例えば、Miroの場合は右クリックを押しながらのドラック操作で自在にスクロールができる。
基本タッチパッドが使えれば問題ないとはいえ、マウスユーザーにも優しい仕様に今後アップデートされることに期待したい。