日本労働組合総連合会(連合)が、カスタマー・ハラスメント(カスハラ)に対する意識や実態を把握するために「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022」を実施しました。
直近3年間で自身もしくは同じ職場の人がカスハラを受けたことがある人1000名を対象にリサーチをした結果、「カスタマー・ハラスメントを受けたことで、生活上に変化があった」人が76.4%にのぼることがわかりました。
出典:カスタマー・ハラスメントに関する調査 2022(連合)
調査概要
調査タイトル:カスタマー・ハラスメントに関する調査2022
調査対象:ネットエイジアリサーチのモニター会員を母集団とする18歳~65歳の被雇用者またはフリーランスで、直近3年間で自身もしくは同じ職場の人がカスタマー・ハラスメントを受けたことがある人
調査期間:2022年11月11日~11月12日
調査方法:インターネット調査
調査地域:全国
有効回答数:1000サンプル
実施機関:ネットエイジア
女性への暴言(60.2%)が最も多い被害
出典:カスタマー・ハラスメントに関する調査 2022(連合)
カスハラ被害として最も多かったのは「暴言」(55.3%)でした。
特に女性(60.2%)は男性(55.3%)に比べて4.9ポイント高いという結果に。次いで「説教など、権威的な態度」(46.7%)、「同じクレーム内容の執拗な繰り返し」(32.4%)、「威嚇・脅迫」(31.9%)が続きます。その他、女性では「セクハラ行為」が16.6%と、男性(3.1%)と比べて10ポイント以上高くなるという結果が出ています。
カスハラを受けたために「出社が憂鬱になった」人が38.2%
ハラスメント対策関連法が2022 年4月に全面施行され、パワー・ハラスメント、セクシュアル・ハラスメント、マタニティ・ハラスメント、ケア・ハラスメントとともに、パワー・ハラスメントに関する雇用管理上の防止措置が全事業主に義務化されました。
しかし、カスハラ防止措置については、現段階では「望ましい取組」にとどまり義務化はされていません。
出典:カスタマー・ハラスメントに関する調査 2022(連合)
カスハラ被害を受けたことで、「出勤が憂鬱になった」(38.2%)、「心身に不調をきたした」(26.7%)、「仕事に集中できなくなった」(24.3%)、「眠れなくなった」(17.6%)、「人と会うのが怖くなった」(16.9%)などの深刻な影響が出ています。
特に女性は「出勤が憂鬱になった」が45.0%と、男性(33.2%)と比べて10ポイント以上高くなっており、被害の影響が大きいことがわかります。
カスハラが増えた、深刻になったと思う人がそれぞれ3割超
出典:カスタマー・ハラスメントに関する調査 2022(連合)
カスハラの状況の変化についての質問には、直近5年間の「発生件数の変化」で「増加した(計)」(36.9%)、「深刻さの変化」では「増加した(計)」は36.5%となっています。また、「新型コロナウイルス感染拡大」の影響で増加、深刻化したという回答がそれぞれ2割を超えました。
カスハラ増加、深刻化の背景に「コロナ禍の影響」が約5割
出典:カスタマー・ハラスメントに関する調査 2022(連合)
こうしたカスハラの増加、深刻化の理由を聞いたところ、「格差、コロナ禍など社会の閉塞感によるストレス」が増加48.2%、深刻化47.1%とともに5割近い数字となっています。また、これに劣らず多いのが「過剰な顧客第一主義の広がり」で、増加が43.6%、深刻化は44.9%でした。
カスハラ対策に取り組む企業は2割に留まる
出典:カスタマー・ハラスメントに関する調査 2022(連合)
では、カスハラに対して、企業はどのような対応に取り組んでいるのでしょうか。
「カスタマー・ハラスメントを禁止する社内規則の制定」(28.7%)、「カスタマー・ハラスメントへの対応に関するマニュアルの作成」(25.9%)、「カスタマーハラスメントへの対応に関する研修」(21.7%)など、いずれも2割に留まりました。
格差の拡大、コロナ禍などで人々のストレスが増加する中、カスハラを防止するため企業側の具体的な制度整備、対応が求められそうです。