ウェルスナビ 柴山和久 CEO
WealthNavi, Getty Images
Money Insiderでは、2023年も「もっとお金の話を楽しもう! 」と願っている。
そこで、年末年始の特別企画として、フィンテックの経営者たちに新年への想いをアンケート取材を行った。その回答を、12月28日から1月5日まで、毎日1名(全9名)ずつ掲載していく。
本記事では、全自動の資産運用サービス「ウェルスナビ(WealthNavi)」を運営するウェルスナビ株式会社の柴山和久CEOの回答を紹介。注目しているトレンドや新しい事業構想、そして自身のパーソナルファイナンス計画など、ざっくばらんに回答してもらった。
Q. 2023年に注目しているニュースやトレンドは?
2024年からのNISA制度拡充に注目しています。最大1800万円までの投資に対して税金がかからない制度で、「貯蓄から投資へ」の動きが本格化する可能性が高いと見ています。この機会に、投資に取り組みたいと考えている方も多いと思います。
投資と投機は違う
ただ、中には「投資は怖い」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。それは投機と投資を同じものだととらえているからかもしれません。
投機はお互いの富を奪い合うゼロサム・ゲームです。得をする人の裏には必ず損をする人がいます。一方、投資は経済成長によって増えたパイを分け合うものです。似て非なるものですが、どちらも「投資」と呼ばれることがあるので注意が必要です。
NISA制度を活用するうえでの王道は、「長期・積立・分散」の資産運用です。以下の3点を意識し、じっくり取り組むことをおすすめします。
1. 無理して投資しない
制度変更によって、通算1800万円までNISAで投資できるようになります。さらに、制度の期限がなくなります。これまでは最長でも20年という期間の制約がありましたが、今後は一人ひとりのペースに合わせて投資できるようになります。
1800万円という大きな金額を見ると、「急いで投資しなければ」と焦りを感じるかもしれませんが、生涯使える枠なので、無理をする必要はありません。余裕資金の範囲内で取り組むことが大切です。
2. 短期的な利益を追求しすぎない
「長期・積立・分散」の資産運用は、続けることで成果を徐々に実感できます。ウェルスナビの場合、運用を始めたばかりのときは相場次第でマイナスのリターンになることもありますが、運用を続けていくと、リターンは安定していくようになります。長期投資で成功するには、最初の苦しい時期を乗り越えて続けることが重要です。
3. 集中投資ではなく分散投資
未来は不確実で、正確に想像することはできません。特定の国や資産だけに投資をするのは高いリスクを伴います。予想外の事態に備えるうえでも、世界中のさまざまな種類の資産に分散することが有効です。また毎月の積立により、時間を分散してリスクを抑えることができます。
Q. 2023年、事業ではどんな新展開を考えていますか?
資産運用の隣接領域で新たなサービスをリリースし、働く世代の幅広いお金の悩みを解決したいと考えています。
今、ウェルスナビは自動でおまかせの資産運用サービスを提供し、働く世代の老後の資産形成をサポートしています。一方で、お金にまつわる悩みは幅広いといえます。たとえば、「毎月の収入のうち、いくらぐらい投資や貯金にまわせばよいのか」といった、資産運用と密接にかかわる悩みについて、現状ではアドバイスができません。多様なお客様の期待に応え、総合的なアドバイスを提供するため、新規事業の専門部署を立ち上げました。
将来的には、オンラインでお金にまつわるすべての悩みを解決できるようにしたいと考えています。2023年は着実にその第一歩を踏み出します。
Q. 2023年、個人的なお金分野における挑戦は?
時間の使い方を見直して、家族と過ごす時間を増やし、パーソナルファイナンスの質を向上させたいと考えています。
私を含めた多くの働く世代の最大の課題は、時間がないことです。私たちは日々働いて、時間とお金を交換していますが、私の場合、経営に割く時間と労力が多くなりすぎてしまっています。週末の時間は、翌週に働くための体力の回復に充てているようなものです。
2023年は、もっと家族との時間を増やしたいと思っています。コロナ禍では東京にいる時間が長かったのですが、娘も私も自然の多い場所が好きなので、週末は自然の中で過ごしたいです。
そのためには、平日の時間の使い方を変えていく必要があります。平日の仕事の時間を圧縮し、現在は週末に行っているパーソナルトレーニングやヨガの時間を作ってリフレッシュすることで、結果的に仕事の生産性は上がると考えています。働き方を変えて、持続可能な生活スタイルを維持することで、パーソナルファイナンスの質も向上するのではないでしょうか。