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ABEMAのワールドカップ配信が「落ちなかった」理由…WAUはほぼ倍、それでも耐えた

ABEMAの広告

2022年11月22日、渋谷駅構内に掲示されたABEMAの広告。

撮影:吉川慧

「FIFAワールドカップカタール2022」(以下、W杯)は、アルゼンチンの優勝で幕を閉じた。

今回のW杯は、放送だけでなく「配信」が活用されたことも大きなトピックだ。日本ではABEMA(アベマ)が全64試合を無料中継して話題となった。

MMD研究所が12月23日に発表したアンケート調査によると、W杯をテレビで視聴した人が49.1%に対し、ABEMAで視聴した人は17.8%。計算上、W杯を見た人の4分の1がABEMAで視聴した、ということになる。

MMD研究所のアンケート調査結果

W杯視聴者の4分の1程度がABEMAで視聴した計算になる。

出典:MMD研究所

ABEMAでの視聴者が最も多かった試合は、12月5日(現地時間)に開催された「日本対クロアチア戦」。2000万人以上が視聴したという。

だがABEMAは、日本対クロアチア戦で「視聴制限」こそかかったものの、サービスが落ちることもなく視聴された。

なぜABMEAは視聴数が急拡大するなかでも「落ちなかった」のだろうか?

2000万人以上が同時視聴、それでも落ちなかったABEMA

ABMEAはW杯終了後、自社での配信についてデータをいくつか発表している。

前述のように、最も多く視聴されたのは日本対クロアチア戦だ。2位・3位と日本戦が続き、W杯決勝戦が4位に入った。

ABEMAが公開した資料 視聴ランキング

大きく盛り上がった日本戦と決勝が視聴ランキングの上位に。

出典:ABEMA

視聴者のうち56%が試合をリアルタイムで見ており、翌日などにオンデマンド視聴した人、ダイジェスト版などを見たのは44%となっている。

ほぼ半数の人が「生視聴」しているわけで、熱心なファンがABEMAで視聴したのであろうことが伺える。

リアルタイムの割合

視聴者の54%が試合をリアルタイムで観戦していた。

出典:ABEMA

ライブ視聴が多かったということは、ABEMAにはそれだけ、同じ時間にアクセスが集中したということになる。

2022年10月29日、サイバーエージェントの2022年度通期決算資料で示されたABEMAのWAU(1週間のアクティブユーザー数)は約1800万。

ABEMAはW杯の間はこれが3000万を超えていた、とする。つまり、利用者数は平時の倍近くまで急増していたと想定できる。

WAU

W杯前までのABEMAのWAU。W杯中は、最盛期には一気に倍近くまで伸びていたと想定される。

出典:サイバーエージェント

ABEMAでの配信中に表示される数字が「視聴者数」だ。ただ誤解が多いのだが、これは「同時視聴者数」ではなく、番組スタートからの累計視聴者数だ。

だから視聴をやめてから再び視聴すると、視聴者数はさらに+1される。そのため、この数字を直接、視聴率などと比較するのは難しい。

それでも、同じ時間に1700万、2000万といった数の人々が視聴したことが、ABEMAにとって過去例がないほど大きなことだった事実は揺るがない。

クロアチア戦「視聴制限」の秘密

ただ、最も多数の視聴者を集めた日本対クロアチア戦では、前述の「入場制限」が実施され、一時新規アクセスができない状況になった。すでに見ている人は問題なく視聴できたが、途中から身始めようとした人はアクセスできない時間帯が存在した。

ABMEA側は、入場制限が「想定したシナリオの中に含まれていた」と話す。

「ユーザーの入退場に合わせて視聴中のユーザー数を制御する対応を行なっていました。

『入場制限』は視聴開始を行なったのち、画面遷移やバックグラウンド操作を実施しない場合においては制限がかからない仕組み」(ABEMA広報)

これは、制限をかけたとしてもサービス全体への影響を防ぎ、視聴できなくなる人を最小限に抑えるという判断をしていたことを示している。

なお、MMD研究所の調査によると、ABEMAでの視聴の満足度は89.2%と極めて高い。画質や本田圭佑氏の実況などの影響もあるだろうが、「落ちることがなかった」ことも大きい。

ABEMA配信の満足度

ABEMAでの配信は「やや満足」を含めた満足度は89.2%と非常に高い。

出典:MMD研究所

サイバーエージェント・藤田晋社長も、W杯終了時に、サービスを維持した技術陣へねぎらいの言葉をツイートしている。

過去の失敗に学んで負荷をコントロール

ABEMAは開局初期に、手痛い失敗もしている。AbemaTV(ABEMAの当時の名称) 1周年記念企画『亀田興毅に勝ったら1000万円』」(2017年5月配信)では、試合のゴングが鳴った瞬間、サービスが落ちた。視聴者が集まりすぎて負荷が高まりすぎたためだ。

その後同社は「アクセス集中」についての知見を溜め続け、大きな障害を起こすことも、画質劣化などのトラブルを起こすこともなく、W杯の配信に備えてきた。

ABEMA側は、今回の状況を以下のようにコメントしている。

「インフラ面においても、日本 vs. クロアチア戦を除けば想定した負荷見積もり以内であり、おおむね良好な品質でサービスを提供できたと思います。

試合を重ねるごとに当初想定していたアクセス数よりも多くのユーザーに視聴される傾向が強くなりました。

インフラへの負荷も高まりましたが、日本 vs.クロアチア戦を除けば、おおむね想定した延長上にある負荷でした」(ABEMA広報)

負荷を乗り切れた理由の1つは、ネット配信についての知見が広がり、「CDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)」の活用が進んだことも重要だ。

CDNは、データを分散するネットワークのこと。サービスを提供する事業者のサーバーへのアクセスがあると、それを利用者の近くにある別のサーバーへと誘導し、負荷が一部のサーバーへと集中することを防ぐ。

今は映像配信だけでなくあらゆるサービスでCDNが活用されており、表からは見えないが、インターネットを支える重要な役割を担っている。

ABEMAの場合には、サービス自体はAWS(アマゾンウェブサービス)を構築してつくられており、CDNとしては、AWSの「Amazon CloudFront」と、同じく業界大手のAkamaiのサービスを併用しているという。

これらを活用するノウハウをこれまでに得ていたことが、W杯の負荷を乗り切れた理由……ということなのだろう。

なお、クラウドの上にサービスが構築されているということは、負荷が下がったら契約を絞ることで無駄を減らせる、ということでもある。

W杯に合わせてAWS・Akamaiとの契約量を増やした上で、その後アクセス数が落ち着いてくると、状況に合わせてコストを下げていく、という形と推察できる。

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