そろそろ海外旅行にという人は増えている。ただ、円安や燃料費の高騰で、なるべく無駄は省きたいと考えているはずだ。
撮影:小林優多郎
日本を含め各国の行動制限の緩和により、旅行を含め海外渡航の機運は高まりつつある。
全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)が12月21日に公開した2022年12月28日から2023年1月5日の予約状況によると、国際線の予約率は2021年度比で、ANAが37.5%増、JALが39.4%増だ。
この年末年始に久しぶりに海外で羽を伸ばすという人も多いだろう。
しかし、コロナ禍前の2019年頃とは異なる円安傾向や、ロシアによるウクライナ侵攻による世界的な燃料高騰により、旅行者にとっては金銭的に苦しい状態が続いている。
そこで、今回は旅行時に必要不可欠な「決済」と「通信」の観点から便利かつお得なノウハウを紹介。本稿では「決済」について、筆者の体験と共に解説する。
クレカは便利だが海外手数料がかかる
ボストンの歩道にあった駐車料金を支払う機械。硬貨に加えて、VisaとMastercardのカードも使える。
撮影:小林優多郎
VisaやMastercardなどといった国際ブランドが付与されたクレジットカードは、旅行先として人気な国では必需品になるといって良い。
けれど、気にしておきたいのは「海外手数料」だ。これは国内発行のクレジットカードを海外の加盟店で利用する際、1回の決済ごとに請求額に上乗せされる事務手数料だ。
例えば、三井住友カードは+2.20%、楽天カードは+1.60〜2.00%(国際ブランドによって異なる)、エポスカードは+1.63などと、設定されている。
筆者が11月に三井住友カード発行のクレジットカードで決済した明細。決済タイミングのアメリカドル/日本円の為替は11月11日が高値142.4800円、15日が高値140.6200円だったが、手数料込みのレートは1ドルあたり数円程度で高い。
画像:筆者によるスクリーンショット
ただ、実際の明細には「支払い金額に対して+●●円」という形ではなく、「カード会社規定による現地通貨対日本円の為替レート」で請求金額算出された表示のため、明細を見ても海外手数料の存在をあまり意識できない仕組みになっている。
もし、アメリカで100ドルの決済を海外手数料2%のカードで決済した場合、当日の為替レートが1ドル140円だとすると、単純計算で100ドル×140円×1.02=1万4280円。
この為替レートも、国際ブランドの取り分(手数料)が含まれており、公開市場のレートと比べると割高になっている場合がほとんどだ。
複数外貨に対応した決済サービスで手数料を抑えられる
Revolutの物理カードで、海外のハンバーガー屋の支払いをしているところ。
撮影:小林優多郎
ちょっとでも無駄な出費は抑えたい、そんな時にオススメなのが複数の通貨に対応するマルチカレンシー口座と紐づいた決済サービスだ。
代表的なサービスだと、イギリスのフィンテックベンチャー「Revolut(レボリュート)」や「Wise(ワイズ、旧称TransferWise)」、ソニー銀行の「Sony Bank Wallet」、JALとSBIグループが共同で提供する「JAL Global WALLET」などがある。
いずれのサービスもVisaもしくはMastercardのプリペイド/デビットカードを発行。日本円と特定の外貨の両替に対応。
また、あらかじめ外貨を購入していなくても決済時に必要ば分だけ両替してくれる「自動両替」機能なども対応している。
12月26日時点の各社ホームページより抜粋。
画像作成:Business Insider Japan
筆者は9月〜11月にかけて、アメリカの3つの地域に出張をしたが、いずれもRevolutをメインの支払い方法として活用してみた。
10月の出張時には、出発日である10月17日にRevolutアプリで日本円からアメリカドルに両替。合わせて公開市場価格と空港内の現金両替のレートを確認した。結果は以下の通り。
- Yahoo!ファイナンスでの外国為替情報:1ドル=148.4100円(安値)/149.0800円(高値)
- Revolut:1ドル=約148.84円
- 空港内両替所:1ドル=151.28円
10月17日時点のRevolut(左)と空港内両替所(右)の為替レート。
撮影:小林優多郎
差はわずかではあるものの、かなり実際のレートに近い値で両替できているのがわかる。前述の通り、利用時は、「10ドルの買い物であれば、10ドル分の外貨の残高から引き落とす」形のため、手数料も発生しない。
なお、Revolutの場合は、月額無料のスタンダードプラン加入の場合、土日での両替は一定の手数料が上乗せされる。平日は手数料無料だが、それも月間75万円までとなっている。
アプリやスマホ/ウェアラブルの使い勝手も重要
写真手前から、Revolut、Sony Bank Wallet(PlayStationデザイン)、JAL Global WALLETのカード。
撮影:小林優多郎
筆者はRevolutの他に、Sony Bank Wallet、JAL Global WALLETを所持している。
その中であえてRevolutを使ったのは、スマホアプリの使い心地とスマホやスマートウォッチへの対応状況が最も良かったからだ。
Revolutは元々スマホアプリを中心に機能が設計されているため、両替、カードの利用停止/再開、利用通知、利用明細の確認。海外やネット利用での制限などが1つのアプリで完結する。
Revolutのアプリ画面。
画像:筆者によるスクリーンショット
さらに、スマートフォンやスマートウォッチに対応という意味では、Google Payに対応しており、NFC搭載のAndroidスマホやWear OSデバイスで利用できる。
Sony Bank WalletもGoogle Pay、Fitbit Pay、Garmin Payに対応しているが、両替はSony Bank Walletアプリではなく、別の「ソニー銀行アプリ」を利用する必要があるため、やや煩雑に感じた。
Google Pixel Watchに登録したRevolutカードで、Visaのタッチ決済(Google Pay)を使っている様子。
撮影:小林優多郎
また、いずれのサービスも日本向けにはApple Payに対応していないため、iPhoneやApple Watchでのタッチ決済には利用できない。
筆者は実際、Revolutをスマホ(Xperia PRO-I)とスマートウォッチ(Google Pixel Watch)に登録してアメリカで利用したが、現地ではほとんど財布に触れずに済んで、非常に快適だった。
弱点は主に「付帯保険」
こうしたマルチカレンシー口座対応のプリペイド/デビットカードにも弱点はあり、あえて3つを紹介する。
1つ目は、全世界で使えるとはいえ、公共料金、携帯電話、ガソリンスタンドなどでは利用できない場合があるという点。
2つ目は、プリペイド/デビットという性質上、「残高以上は払えない」という点。サービスによってはオートチャージなどの仕組みを駆使する必要がある。
そして3つ目は付帯保険の有無だ。以下のサービスにはショッピングや不正利用時の補償が各サイトに明記されている
- Revolut……不正利用時はVisaなどのチャージバック裁定によって補償
- Wise……不正利用時はMastercardなどのチャージバック裁定によって補償
- Sony Bank Wallet……ショッピング保険(動産総合保険、年間最大50万円)、不正利用補償(利用限度額の範囲)
- JAL Global WALLET……紛失盗難補償(カードの不正利用補償、年間最大10万円)
Sony Bank Walletは今回比較した中では唯一無料のショッピング保険を付帯している。
出典:ソニー銀行
別途、個人で保険会社のショッピングや旅行保険に入ることで対処はできるが、無料での利用範囲だと全体として補償は比較的薄いと考えて良いだろう。
特に年会費が有料のクレジットカードについては補償の幅が手厚い場合が多く、高額な商品や移動手段などの決済は、普段使っているクレジットカードを使うべきケースもあるだろう。