海外出張や旅行など、増えてきている。
撮影:小林優多郎
行動規制緩和で、海外旅行・出張などの人の行き来が活発化している。
特にこの年末年始は2021年度に比べて海外に渡航する人が増えているようだ。
とはいえ、円安や燃料費の高騰でコロナ禍前と同じ金銭感覚で旅行をすることは正直難しい。
そこで、今回は旅行時に必要不可欠な「決済」と「通信」の観点から便利かつお得なノウハウを紹介。本稿では「通信」について、筆者の体験と共に解説する。
Wi-Fiルーターより現地SIMより、ローミングがいい時代がきた
海外渡航時、スマートフォンはもはや必需品(2019年10月撮影)。
撮影:小林優多郎
一昔前には「海外旅行でパケ死」という言葉が一部で話題になっていた。これは、海外で携帯電話を使っていて、帰国後に高額な通信/通話料を請求される……といった内容だ。
しかし、それは昔の話。「音声通話」は気をつけるべきポイントはあるが、データ通信については安心して使える時代が来ている。
国内4キャリア(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル)はいずれも、海外データローミングを実行する前にSMSの通知やスマホ側での設定を必須化している。
そのため、ローミング設定を有効にしなければ基本的に現地で「知らないうちに請求額が増していく」ことはない。
一部地域を除き、海外渡航先で人気の地域のほとんどは従量課金ではなく日付や時間ごとの定額制を採用しており、よっぽど長期間でない限り青天井に通信する、といったことはない。
そんな状況下ではあるが、さらに踏み込んだ使い勝手のいい3つのキャリア・サービスが以下の通りだ。
- NTTドコモ「ahamo(アハモ)」
- 楽天モバイル「Rakuten UN-LIMIT VII」
- ソフトバンク「アメリカ放題」
追加料金不要で使える太っ腹な「ahamo」
NTTドコモのオンライン専用プラン「ahamo」。
撮影:小林優多郎
対象地域が広く、追加料金なしで使えるという意味で最も使い勝手がいいのは、NTTドコモのオンライン専用プラン「ahamo」だ。
データ通信を、日本人の渡航先約95%をカバーしている(NTTドコモ調べ)という82の国・地域で利用できる。
筆者も11月からahamoを契約してアメリカで使ってみたが、前述のスマホ側での設定(Androidの場合はデータローミングをONにする)だけで利用開始できた。
注意点としては、使い放題というわけではなく、月間で利用できるデータ容量は国内の月間20GBと共有される点が挙げられる。
例えば、海外渡航前に15GBを日本で使っていれば、渡航先では5GBしか使えないし、海外での利用分はその残り容量から消費されていく。
筆者の11月分のahamo利用明細。アメリカ滞在時間は5日ほどだったが、海外データ量は4.2GBほどだった。
画像:筆者によるスクリーンショット
また、月額+1980円(税込)のオプション「ahamo大盛り」で追加された+80GB分は海外データ通信の利用範囲外になる。
20GBを超えると通信速度は送受信ともに最大1Mbpsに制限される。ただし、1GBあたり550円(税込)でデータ容量を購入すると、制限は外れる。
また、ahamoの海外利用は長期渡航には向かない。
それは、ahamoでは海外でデータ通信を始めた日(日本時間)から15日経過後の0時以降に、利用容量に関わらず上下最大128kbpsに制限されるからだ。
この場合は、データ容量を購入しても制限は外れないので注意が必要だ。
無料で海外2GB通信+通話が可能な「Rakuten UN-LIMIT VII」
楽天モバイルの「Rakuten UN-LIMIT VII」。
出典:楽天モバイル
4キャリア中、最も新しい通信事業者である楽天モバイルの「Rakuten UN-LIMIT VII」も海外で使いやすい料金プランになっている。
ahamoほどではないが、Rakuten UN-LIMIT VIIでも追加料金なしで毎月2GBの海外データ通信が利用できる。利用可能エリアは67の国と地域。
2GB超過後は上下最大128kbpsに制限されるが、「my 楽天モバイル」のアプリやWebサイトで、1GBあたり500円(非課税)で購入することで、制限が外れる仕組み。
アプリでデータ容量の購入や残量の確認がわかりやすいので、渡航期間や自分の利用用途など必要な時にのみ購入するといった使い方でいいだろう。
「my楽天モバイル」アプリでは海外利用分を確認できる。
撮影:小林優多郎
また、データだけではなく通話の面でも、楽天モバイルは海外利用しやすい。
公式のコミュニケーションアプリ「Rakuten Link」をインストールしておけば、Rakuten Link同士の発着信はもちろん無料。また、発信がRakuten Linkからであれば海外から日本の(Rakuten Linkではない)番号への発信も無料で利用できる。
また、Android版では海外で着信した際も無料で通話できる。
筆者はサブ回線として楽天モバイルを契約しており、普段から固定回線に電話する際などRakuten Linkを活用している。
通常の音声通話と比べると、音質がやや悪く遅延もある。ただ、条件さえそろえば、日本で使える電話番号でそのまま海外でも無料で発着信ができるというのは、かなり心強い。
弱点は、iOS版Rakuten Linkでは、着信に対応しておらず、着信時は国・地域別の従量課金が発生する点。それに、データ通信において大量のデータを使おうとすると、結構侮れない金額になる点だろう。
例えば、ahamoと同じ最大20GBの海外データ通信を可能にするには、楽天モバイルでは追加18GBが必要になるため、単純計算で9000円かかる。
無料・無制限のソフトバンク「アメリカ放題」
ソフトバンクの「アメリカ放題」。
出典:ソフトバンク
最後に紹介するのはソフトバンクの海外オプション「アメリカ放題」だ。
アメリカ本土やハワイ、アラスカなど地域は限られているが、追加料金不要で、さらに通話もデータ通信も使い放題となるのは破格の設定だ。
アメリカ放題対象地域に入るとメッセージが送られてくる。
画像:筆者によるスクリーンショット
対応プランも特に指定されておらず、ソフトバンクのプランであればいい(ワイモバイル、LINEMOは非対応)。国内向け最上位プランの「メリハリ無制限」はもちろん、5年間は月額990円(税込)の「データ通信専用3GBプラン」でもいい。
弱点は言うまでもなく、アメリカ以外およびグアム、サイパンは対象外となる点だろう。
KDDIは無料の海外データ通信枠はなし、
KDDIの「世界データ定額」。
出典:KDDI
気になるのは「使い勝手のいい3つのキャリア・サービス」の選外となったKDDI陣営のプランだ。
auとUQ mobile、povo1.0(受付終了)の場合は、海外150以上の国・地域で使える「世界データ定額」が適用される。
世界データ定額は、事前予約すると「490もしくは690円」、事前予約しないと「980円」で24時間使い放題になるプランだ。
こちらも事前予約さえすればかなり割安なプランと言えるため使わない手はないが、他キャリアと比べて「無料で使える枠」がないのは事実だ。
また、現行のオンライン専用プランである「povo 2.0」では海外通話(従量課金の発着信)には対応しているものの、海外データ通信については、2021年9月のサービス開始時点から現在に至るまで約15カ月間「サービスの提供を予定」と言うステータスから更新がない。
povo2.0ユーザーが海外でデータ通信をするにはKDDIもしくは別のキャリアのプランへ契約変更するか、デュアルSIM端末で別途契約をするか検討する必要があるだろう。