エジプト第18王朝の第2代ファラオ、アメンホテプ1世のミイラ。エジプトのカイロ美術館で。2006年4月撮影。
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- 古代エジプト人がミイラを作るときに鼻から棒などで脳をかき出していたと聞いたかもしれない。
- 実験でもっと簡単な方法が示唆された。それは脳をかき混ぜることだと専門家は述べている。
- 古代の遺体整復師は脳を液化させてから取り出していたようだ。
学校で習ったこととは違い、古代エジプトの遺体整復師は、遺体を来世のために準備する際、フックを使って鼻から脳をかき出してはいなかったようだ。
ずっと不快ではあるが、もっと効率的な方法を用いていた可能性があることが実験によって示唆されたとミイラ研究の専門家であるステファン・バックリー(Stephen Buckley)は語った。
ヨーク大学の考古学者で分析科学者であるバックリーは、脳を取り出す方法をヒツジで実験したという。この研究は、イギリスのエジプト学者、フィルス・リーク(Filce Leek)の1969年の論文にインスパイアされたもので、ヒストリーチャンネルのドキュメンタリー「ミイラ法医学(Mummy Forensics)」の一部として映像化された。
彼は、脳の塊をかき出すのは簡単ではないことを突き止めた。
「バラバラになった塊を引っかけるのは、特に効率的でもないし、成功しやすいわけでもない」と彼はInsiderへメールで語った。
「挿入と除去を繰り返していると、脳の小さな塊が金属製のフックに付いて、ゆっくりと取り除ける可能性はある」と彼は語った。
「だが、脳を液化させる方が、かなり簡単だ」
「およそ20分間、脳をフックでかき混ぜれば、液化して取り出せる」とバックリーは後のインタビューで話した。
「とても好ましいこととは言えないが、脳を取り除くためにはより効率的だ」
アメンホテプ1世のCTスキャンで、埋葬された際、脳がまだあったことがわかった。
S. Saleem and Z. Nuwass
ミイラに脳が残されていることもあるという。
「特に初期のとても良い状態で保存されている王室のミイラでは、脳は残されたままだ。それを取り除く必要はなかったのだ」
当時のエジプト人は微生物について知らなかったが、内臓を取り除くことは遺体の腐敗を遅らせるために非常に効果的であることを間違いなく理解していた。そして余裕があれば、彼らは腸や肺などの内臓を取り出して保存していた。瓶に保存する場合や、遺体に戻す場合もあった。
ただし、脳は頭蓋骨の中でミイラ化するため、防腐処理の際に体内に残されることがあった。
例えば、トトメス1世、アメンホテプ3世の妻であるティイ女王、アメンホテプ1世のミイラは、いずれも脳が残されたままで発見されている。