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経済にとって激動の2022年を締めくくるにあたり、2023年における自身の経済的な目標と、それを達成するために実行すべき戦略について考え始めることは大切だ。
新しい年にお金をどう貯蓄し、投資すればよいのかを知るため、Insiderは「スーパーセーバー(超貯蓄家)」やお金の専門家、さらには経済的自立を果たしたり、経済的自立を目指す人たちにアドバイスを訊いた。
彼らは最高のアドバイスを提供してくれただけでなく、2023年に彼らがどのように投資していくつもりなのかも明かしてくれた。
株式市場は投資手段の1つにすぎず、オルタナティブ資産を検討すべき
ローレン・シモンズはニューヨーク証券取引所(NYSE)で史上最年少の女性トレーダーとなった。
Lauren Simmons提供
22歳でニューヨーク証券取引所の最年少女性トレーダーとなった、元株式トレーダーでパーソナルファイナンス専門家のローレン・シモンズ(Lauren Simmons)は、「株式市場以外にも投資する手段がたくさんある」ことを世の中の人に知ってもらいたいと言う。
彼女は、株式トレーダーとして働いていたときを振り返ってこう語る。
「取引所フロアで働いている人たちの90%は、自分では株式投資をしていませんでした。彼らの多くは長期にわたって取引の現場で働き、それまでにさまざまな不況を経験し、人々がすべてを失うのを目の当たりにしてきたからなんです」
彼らは投資をしていなかったわけではなく、「別の資産に投資していた」とシモンズは話す。
彼女もそうである。
シモンズのポートフォリオは多様だ。自分が信頼を寄せる個々の企業に投資する一方で、美術品、ワイン、高級ハンドバッグなどのオルタナティブ資産にも投資している。
「高級なオルタナティブ資産クラスの取引は活況を呈しています」と彼女は語った。
彼女自身は、美術品と高級ハンドバッグをそれぞれ2点ずつ所有している。このようなアイテムが「潜在的に不況に強い投資になる可能性がある」と考えているのだ。
もちろん、どんな投資にもリスクは伴う。絵画やハンドバッグの価値が上がる保証はないと彼女は指摘する。しかし、オルタナティブ資産投資は、2023年のポートフォリオを分散型にする優れた手段となる可能性がある。
緊急用の資金を増やす
ニューハンプシャー州を拠点とする不動産投資家、“木こりの地主”ことマットとその家族。
Matt、Ashley提供
プライバシー上の理由から“木こりの地主”という名を使うマットは、ニューハンプシャー州で100戸以上を所有する不動産投資家である。経済的自立を達成した彼のポートフォリオは、毎月10万ドル(約1330万円、1ドル=133円換算)を超す家賃収入を上げている。
不動産に投資するかどうかにかかわらず、厳しさが予想される2023年を迎えるにあたり、誰もが現金の余力を増強することで恩恵を得ることができると彼は話す。
地主として、マットは特に滞納家賃の増加と立ち退きのリスクに備えている。リフォームやその他大規模な資本プロジェクトを保留にして、そのお金を緊急用の資金に振り向けているのだ。
できる限り現金の余裕を増やす。これは、自分でコントロールできる支出を削減するか、収入を増やして貯蓄に回すお金を増やすことを意味する。そして、そのお金をいざという時のための資金に加えるのだ。
自分が理解しているものに投資する
シアトルを拠点とする不動産投資家トッド・ボールドウィン。
Todd Baldwin提供
自力で億万長者になったトッド・ボールドウィン(Todd Baldwin)は、お金に関する一番のアドバイスとして、「自分が理解しているものにのみ投資すること」だと語る。彼にとって、それは23歳から続けてきた不動産への投資を意味する。
どこに投資しようと、その前にその具体的な投資を友人にどれだけうまく説明できるかを考えるのだ。それが賢明な投資手段である理由を明確に説明できないなら、投資を始める前にもう少し調べてみるべきだ。
インデックスファンドにも投資する一方で、ポートフォリオのごく一部に仮想通貨を組み入れているボールドウィンは、2023年に守るべき投資原則をさらに5つ提案している。
- 投資を分散させる
- 投資と貯蓄を混同しない
- 保険は投資ではない
- 長期的な投資を行う。いったん投資したらその後は気にしない。デイトレードをしない
- 株はゼロになる可能性がある。仮想通貨はゼロになる可能性がある。不動産がゼロになることはほとんどない
仮想通貨など、価格が変動しやすい資産への投資は「多くのお金を稼ぐことができる一方で、すべてを失う可能性もある。お金を払って不動産を購入したとしても、1日で30倍、いや5倍にすらなることはない。しかし、時間の経過とともに億万長者になることは間違いない」と、不動産こそが富への最も確実で信頼できる道だとボールドウィンは考えている。
手元に現金があるなら運用する
ミレニアル・マネーの創業者で、『Financial Freedom』の著者グラント・サバティエ。
Grant Sabatier提供
資産運用に関するウェブサイト、ミレニアル・マネー(Millennial Money)を創業し、経済的自立を果たした後に『Financial Freedom(邦訳:FIRE——最速で経済的自立を実現する方法) 』を執筆したグラント・サバティエ(Grant Sabatier)は、投資家にとって良いニュースがあるという。
「貯金があり、投資を検討しているなら、2023年がうってつけです。2023年は、過去15年間で投資には最高レベルの年になるでしょう」
それは「2008年以降、つまり過去14年から15年間で、あらゆるものが上昇してきたから」だとサバティエは言う。
「パンデミック初期の狂気を除けば、15年もの間調整が行われてこなかったため、本当にあらゆるタイプの投資家、特に若い投資家にとって、回収可能な価値が大量に存在します。投資先がどこであろうと、より多くのお金を手に入れることができるのです」
サバティエは、経済に一時的な落ち込みがあると株価は低くなり、投資家はその機会を利用することができると指摘している。
彼は、株式市場以外にも投資するのに良い時期だと言う。
「借入など金融手段の利用が非常に難しくなると、あらゆるものの評価は下落します。お金を手に入れることがとても難しくなるので、株式からあらゆる形態の不動産、さらにはオンラインビジネスやオフラインビジネスに至るまで、ほとんどすべてのものが売りに出されるでしょう」
時間があるなら雑音には耳を傾けず、最後まで目的を貫く
ザ・ベストインタレストの創業者ジェシー・クレイマー。
Jesse Cramer提供
32歳のザ・ベストインタレスト(The Best Interest)の創業者、ジェシー・クレイマーは、4万2000ドル(約560万円)の赤字から、32万5000ドル(約4300万円)の純資産を持つまでになり、40代半ばで経済的自立を果たすべく順調に道を歩んでいる。
彼が、時間のある若い投資家へ送るアドバイスは、「最後まで目的を貫き、短期的な雑音には耳を傾けないこと」。
だがこれは「言うは易く行うは難し」である。
「2022年は難しい年であり、2023年もまたそうなる可能性が十分にあります。弱気相場が12~24カ月、場合によっては36カ月続いてもおかしくありません」
一方で、20〜40代にとっては、「自分がリタイアする頃には、これは数十年も前の出来事であり、ほんの些細なことになるでしょう」と指摘する。
彼は、「必要に応じて定期的な微調整を行いながら、長期的に保有するつもりで資産の多様なポートフォリオを購入する」という彼自身の投資戦略を変更してはいないと言う。
投資顧問会社にフルタイムで勤務し、副業で投資に関するブログを書いているクレイマーは、雇用主が組んだ分散型ポートフォリオに投資していると言う。
「これまで大半は良い時期でしたが、新型コロナによる景気後退でポートフォリオが約30%下落したときも投資を続けました」(クレイマー)
クレイマーは景気後退がプロセスの一部であることを理解しており、それゆえに2020年の株式市場の暴落時にも、2023年に向けてもパニックに陥っていない。
創造性を発揮して投資の資金を調達
シアトルを拠点とする不動産投資家で、エバーグリーン・ハウジング・ネットワークの共同創業者ルドミア・ワノット。
Ludomir Wanot提供
30歳を前に経済的自立を果たした不動産投資家で、エバーグリーン・ハウジング・ネットワーク(Evergreen Housing Network)の共同創業者でもあるルドミア・ワノットは、変化する市場では、自らの戦略を進んで変更する必要があると認識している。
「今現在はこれまで以上に創造性を発揮することに集中しなければならない」とワノットは語る。2022年後半、彼のホールセールビジネスは、買い手側の関心の低下により打撃を受けていた。
ワノット率いるチームが創造性を発揮して導き出した方法の1つは、買い手が売り手から直接購入するセラーファイナンスの利用だ。
セラーファイナンスでは、買い手と売り手が利息や手付金などの融資条件について交渉し、合意することができる。買い手は「現在の市場で銀行から出される条件よりも、有利で柔軟な条件を引き出せる可能性のほうがはるかに高い」とワノットは説明する。
このプロセスは売り手側にもメリットがある。これらの取引によってキャッシュフローが生まれ、高額な代理店手数料を省くことができ、債務不履行の場合、物件の所有権は完全に売り手側に残るのだ。
ワノットは、すでに2022年にセラーファイナンスを利用しており、利息の支払いを大幅に節約した。2023年にはさらに活用する計画だ。
知識は力。賢い貯蓄と投資戦略についての知識を磨く
The FI Coupleの創業者アリ・ルポとジョシュ・ルポ。
Ali Lupo 、Josh Lupo提供
ザ・エフアイ・カップル(The FI Couple)の創業者アリ・ルポ(Ali Lupo)とジョシュ・ルポ(Josh Lupo)夫妻は、やりくりで収入の大部分を貯蓄に回し、10万ドル(約1330万円)あまりの借金を返済し、早期リタイアする準備を整えた。
しかし、必ずしもお金のやりくりに秀でていたわけではない。2人は、お金に関するオンライン記事やポッドキャストなど、無料のリソースを使って経済状況を好転させたのだ。
これは誰でもできることだと2人は言い、「知識は力であり、将来の金銭面や投資において情報豊かな参加者になる手助けとなる」と力説する。
本、ポッドキャスト、YouTube動画を活用すれば、借金の返済や投資など、自身の経済状況に関連する具体的なトピックについて学ぶことができる。
ルポ夫妻は、収入と支出の差を大きくする方法を考えることをあらゆる人に勧めている。それは、より多く稼いでより多く節約する方法を考え出すこと、2人の言葉を借りると「攻撃と防御を同時に行う」ことを意味する。
「収入と支出の差が大きくなると、リタイアした後のことや投資の計画にそのお金を使うことができます」と夫妻は言う。そして投資する時が来たら、「よく調べ、どんな投資先であれ、それについて十分な情報を得ること」と語る。
2023年に達成したいことを厳密に考え、計画をまとめる
イアン・グループは15万ドル(約2000万円)相当以上のローンを返済した。
Ian Group
21万ドル(約2800万円)相当の学生ローンのうち15万ドル(約2000万円)以上を返済したイアン・グループ(Ian Group)は、明確な目標とビジョンがなければ大きな成功を収めることはできないと話す。
グループは2023年には借金を完済する予定であり、自身のInstagramアカウント「IanBuildsWealth」を通じて、他の人々の負債管理を手助けしている。
「自分がどうなりたいかを考え、計画を立てる。2023年についてよく考え、常に望んでいた受動的所得の流れを手に入れる、ずっと望んでいたビジネスを始める、まったく異なる方向にキャリアを進めるために資格を取得するなど、今から1年後を想像する必要があります」(グループ)
ビジョンから始めて、具体的な目標を設定することで、そこに到達するための計画を厳密にまとめるのだ。
ちなみに、「計画を立てるのに決意も必要なければ新年である必要もない」と彼は指摘する。一年中いつでも、借金と縁を切る、早期にリタイアする、副業を始めるなどの計画は立てられる。しかし、何かを始めるうえで新年のほうが気持ちが上がるなら、それに身を任せるのが良いだろう。