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アメリカ「同性婚」法制化に共和党からも賛成票。日本でも「6割超が支持」に政治はどう応えるか

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REUTERS/Kevin Lamarque

2022年12月13日、アメリカのバイデン大統領は、同性婚の権利を連邦レベルで擁護する「結婚尊重法案」(Respect for Marriage Act)に署名した。同法が成立したことで、全米すべての州で、同性婚および異人種間の結婚を合法と認めることが法律で義務付けられる。

アメリカでは州ごとに法律が異なるので、ある州で合法的に結婚した夫婦であっても、別の州でそれが認められないということは起きうる。そういう状態を防ぐには、連邦レベルでの保護が必要なのだ。また、この法は、海外で結婚した同性カップルにも適用される。

アメリカでは、1967年に連邦最高裁が異人種間の結婚を禁じる州法を違憲とする判決を下した。この判決が出るまで、当時のアメリカでは、南部を中心に16の州で異人種間の結婚が違法とされていた。2015年には、連邦最高裁が同性婚を認めない州法を違憲とする判断を下し、全米で同性婚が事実上合法となった。

いずれも既に連邦レベルで保護されている権利なのに、なぜこのタイミングでこのような法案が提出されたのか。それについては後述するが、この法案が下院、上院を通過し大統領の署名に至るまでのプロセスを見ていて、最近のアメリカ議会には珍しく、超党派での支持があったことがまず興味深かった。下院では39名、上院では12名の共和党議員が 民主党議員たちと共に法案に賛成票を投じた。

バイデン大統領は、法案に署名後、次のように述べた

「結婚はシンプルな問題だ。誰を愛するか。その愛する人に忠実であろうとするか。それ以上複雑なことは何もない。この法は、誰であれ、政府に干渉されることなく自分自身でその問いに答えを出す権利を持つのだ、と認めるものである」

【画像】ホワイトハウスで書面に署名する売電大統領と、拍手する人々

ハリス副大統領(右端)らが見守るなか、ホワイトハウスで「結婚尊重法案」に署名するバイデン大統領(2022年12月13日撮影)。

REUTERS/Kevin Lamarque



この法により、結婚を「男女間のもの」と定めたこれまでの連邦法(Defense of Marriage Act「結婚防衛法」、通称DOMA法)は、無効となる。DOMA法は、連邦議会が発議し、1996年9月にクリントン大統領が署名し成立したもので、「婚姻関係は1人の男性と1人の女性が結び付くことによって成立する」としている。この法によって、各州に同性間の結婚を却下する権限が与えられた。

なお、2013年、連邦最高裁判所は、DOMA法の一部を違憲と判断している。合衆国憲法修正第14条の「法の下の平等」と修正第5条の「デュープロセス(法の適正な手続き)」を踏んでいない、という判断に基づいてのことだった。

「結婚尊重法案」が署名された直後、ネット上で、そのことを讃える声を多く目にした。日本人で同性婚を支持する人々の中には、「うらやましい」という反応も少なくなかった。たしかに、このような法を成立させることができたということの意味は大きいと思うが、ここに至ったアメリカ社会の背景を考えると、手放しで喜んでいる場合ではないとも感じる。

前述のとおり、アメリカでは、異人種間の結婚も同性婚も、連邦最高裁の判決で既にその権利を認められている。なのに、なぜこのタイミングでわざわざ法制化する必要があったのか。その背景には、2022年6月に起きた「ロー判決ショック」がある。

「次の標的は同性婚」

【画像】色とりどりのプラカードを持って叫ぶ人々

米最高裁が中絶は違憲との判断を下すと、国内外で多くの市民が抗議の声を上げた(2022年7月、ワシントンDCにて撮影)。

REUTERS/Joshua Roberts

2022年6月24日、アメリカ連邦最高裁は、「胎児が子宮外でも生存可能になる(妊娠約24週目)までの中絶を禁じる法は違憲である」とした「ロー対ウェイド判決」(1973年)を覆した。ロー判決は、女性が人工中絶を選ぶ権利を保障する根拠になってきた歴史的に重要な判例だ。

しかしこの判例が覆されたことで(ドブズ対ジャクソン判決)、人工中絶を認めるか否かは、各州の権限に委ねられることとなった。

判決が出るや、多くの「赤い州(共和党支持が多い州)」で自動的に中絶が違法になったり、中絶ができる期間が極端に限定されたりするという状況が起きた。これまで例外とされていた近親相姦やレイプによる妊娠についても例外とせず、中絶手術を施した医師に禁錮を求めたり、市民が医師を提訴できる州法などもある。

判決に先立つ同年5月に判決文草案がリークされた(それ自体、異例の話である)ことから、この判決が近いうちに発表されるということは予想されていたが、この判決がアメリカ社会に与えた衝撃は甚大だった。アメリカ最高裁では、先例を尊重するのが原則だ。ミネソタ大学のデイビッド・シュルツ教授の研究によれば、1789年から2020年までの間で、最高裁が先例を覆した率は約0.5%であるという。人権を制限する方向に判例を覆すということは、輪をかけて珍しい。しかもロー判決は、約50年間にわたりアメリカ社会に定着してきたものだ。

多数派意見の中で、判決文のリード執筆者であるアリート判事は「この意見は、中絶に関係のない判例に疑問を投げかけるものと理解されてはならない」と述べているが、同じく保守のトーマス判事が多数意見で述べた言葉が、大変注目を集めることになった。

トーマス判事は、「ロー判決の法的な論拠が間違っていたならば、最高裁がこの数十年の間に認めた、憲法に明記されていない他の権利の論拠も間違っていたことになる」と述べ、「次はグリスウォルド、ローレンス、オーバーグフェルを含む判例を考慮し直すべき」としたのだ。

ここに挙げられた3つは、アメリカ人なら誰でも知っている重要な歴史的節目を作った判例だ。「グリズウォルド対コネチカット(1965年)」は避妊の権利に関する判例、「ローレンス対テキサス(2003年)」は同性愛行為を禁じる州法を違憲無効とした判例、「オーバーグフェル対ホッジス(2015年)」は同性婚を認めない州法を違憲とした判例だ。いずれも、ロー判決同様、プライバシーの権利、デュープロセス、法の下の平等が判決の根拠となっている。

バイデン大統領

中間選挙を間近に控えた民主党全国委員会で、有権者に中絶権の回復を訴えるバイデン大統領(2022年10月18日撮影)。

REUTERS/Leah Millis

このトーマス判事の発言により、「最高裁の次の標的は、同性婚、同性愛、避妊の権利だ」という強い危機感が広まった。ロー判決が覆されたことについて、「最高裁が右傾化していることは分かっていたはずなのに、こうなる前に、なぜロー判決を連邦レベルで法制化しておかなかったんだ」と民主党を批判する声も強く起きた。

バイデン大統領は、トーマス判事の発言を指して「最高裁は、極端で危険な道に我々を連れて行こうとしている」と批判し、「ロー判決」を法制化する連邦法が必要であり、それができるかどうかは11月の中間選挙にかかっていると有権者に呼びかけた。

昨年11月に行われた中間選挙で、歴史的パターンを裏切って与党・民主党が大敗しなかったのは、特に激戦州において、民主党支持者や無党派層の有権者たちが、州の中絶に対する方針を共和党に委ねることに危機感を持ち、民主党の席を守るべく投票所に向かったことが一因であるという分析が数多く出ている(一例として、ニューヨーク・タイムズの記事ガーディアンの記事を参照)。

共和党議員からも複数の賛成票

ただ、今回7月の下院、続いて11月の上院で、超党派の支持を受けて「結婚尊重法案」が通過したことを考えると、現在の最高裁の流れへの危機感は、民主党議員たちだけでなく、共和党の一部にも共有されているのかもしれない。

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