多くの人が一回は見たことのある人生ゲームの「紙幣」。最新版でも変わらず存在するが、マスなどの内容は進化している。
撮影:小林優多郎
3年ぶりの行動制限のない年末年始。久しぶりに親族や友人で集まったという人もいるだろう。
家族や親戚、友人と集まった時に遊んだものとして思い出深いものといえば、複数人で遊べるボードゲームではないだろうか。
筆者は中でも、1968年の発売開始から55年が経過する定番ボードゲーム『人生ゲーム』をオススメする。
その歴史的な背景は別途記事にまとめているが、今回は直近で2022年10月発売の「人生ゲーム ゴールデンドリーム」から、現在に合わせて進化した「人生ゲーム」の姿を解説したい。
リアルより「夢」が見られる最新作
2022年10月発売の「人生ゲーム ゴールデンドリーム」(メーカー希望小売価格:4950円税込)
撮影:小林優多郎
ゴールデンドリームは、71作品目となる最新作。とはいえ基本的なルールは従来の人生ゲームとほぼ変わらない。
「億万長者を目指す」という人生ゲームのゴールはそのまま。プレイヤーが一人一人コマを、ルーレットの出目で進めていき、止まったマスの指示などに従っていく。
新たな要素としては、標準的な人生ゲームにあった「株券」などの代わりに「お宝カード」がある。このカードは、メインのボードとは別の「ゴールデンアイランド」のボードに移動することで、ゲットできるアイテムだ。
個性豊かなお宝カード。
撮影:小林優多郎
お宝カードにはいくつかのカテゴリーがあるが、「黄金のリンゴ(6万ドル)」「秘伝のタレ(8万ドル)」など、個別に名前と金額が記されている。
当然もらえるお宝は「見つけたもの勝ち(先着順)」。ゴール時点まで持っていたお宝は、勝敗を決める「総資産」に影響してくる。
おもしろさはそのまま。現代風の表現にアレンジ
ドローンパイロットやインフルエンサーなど、「今風」な職業カード。
撮影:小林優多郎
まさにお宝が見つかれば、一攫千金のゴールデンドリームというわけだが、テーマにあった演出だけではなく、マスや職業カードなどに現代に合った表現が施されている。
例えば、職業カードには人生ゲームで初めて「ドローンパイロット」が追加された。
また、マスにも
など、流行のキーワードがふんだんに取り入れられている。
「メタバース」など、目新しいキーワードが並ぶ。
撮影:小林優多郎
個人的に気になったのはいわゆる「結婚マス」の変化だ。今回「ゴールデン仕様」ということで、コマ=自動車に乗せる人物ピンは、金色一色。
そのため「ピンク」「ブルー」といった性差と色を結びつけるような要素がない。それに合わせてか、結婚マスの名称も「同乗者を乗せよう!」になっている。
「同乗者を乗せよう!」マス。
撮影:小林優多郎
同乗者を乗せよう!マスは、ルーレットによって結果が変化するが、50%の確率で「同乗者を乗せずにドキドキひとり旅コース」へ行くことになる。これもまた、現代の多様な生き方が表現されているように思う。
コミュニケーションを意識して内容を選定
「推し」や「石油王」などの言葉も。
撮影:小林優多郎
実際に編集部の数人でプレイしてみたが、やはりこういったキーワードがあると、かなり盛り上がる。
筆者の個人的な見解だが、ボードゲームという性質上、こうしたおもしろさはプレイヤーの想像力、「なりきり」にかかっていると思う。
「あ、やっぱり自分は手堅く稼ぎたいね」とか「なんで絵とか買っちゃうんだろう、でも現実でも……」など、ゲームとリアルがバランスよく混濁するのに、「最近聞いたことある単語」はいいスパイスになる。
実際、タカラトミー広報もBusiness Insider Japanの取材に対し、人生ゲームの魅力を「コミュニケーションを楽しみながら遊べる点」と話す。
「『人生ゲーム』はボードゲームの中では実は珍しく、戦略性がほとんどないゲームになります。
ルーレットの出目=運でほぼすべてが決まるので、年齢や経験の差が一切関係なく、どなたでも平等に遊んでいただくことができます。
そのため人生ゲームの開発にあたっては、プレイヤー同士のコミュニケーションを楽しんでいただくことを重視しており、マス目の内容についても、コミュニケーションがより盛りあがる内容を意識して選定しております」(タカラトミー広報)
生産完了の「令和版」は例外的な人生ゲーム
生産完了してしまった令和版。
撮影:小林優多郎
まさに「戦略性がほとんどない」「年齢や経験の差が一切関係ない」が人生ゲームの魅力となっているが、そんな人生ゲームの中でも「例外」(同広報)は存在するという。
直近にリリースされたものだと、「人生ゲーム+令和版」がそうだという。
令和版は2019年6月に発売され、現在は大人気の末に生産完了となっている。
その人気の秘密は、令和版に書かれたサブタイトル「目指せ TOP OF インフルエンサー」からも推察できるように、その思い切りの強さにある。
マス目ではお金ではなく、フォロワーが増減する。
撮影:小林優多郎
ゴールデンドリームより、さらに現代風にマス目をアレンジ。また、人生ゲームのセオリーでもあった「億万長者になる」という点が「トップインフルエンサーになる」ことに変わっている。
そのため、お札や株券などはない。プレイヤーが動かすコマも、自分や家族・同乗者を乗せるのではなく、「フォロワー」を引き連れる仕様になっている。
コマはフォロワーを引き連れられる仕様。
撮影:小林優多郎
一時期、販売場所によってはプレミア価格もついた令和版だが、ブームは過ぎたのか、現在は価格の落ち着いた中古品が出回っている。
編集部でも中古品を入手してプレイしてみたが、同社広報が「例外」と称するだけあり、戦略性が重要な……有り体に言えば「かなり頭を使う」作品に仕上がっていた。
ぜひ、人が集まるこの時期に進化している定番ゲームを遊んでみては。
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