Money Forward, Money Tree
- 2022年末に発表された新しいNISAの枠組みは、世間に大きな期待をもたらした。それに向けて、2023年は投資熱もさらに高まると見られている。
- そんななか、自らの金融資産の全容を把握するのに役立つのが家計簿アプリだ。
- 特に証券口座情報も取得できる「マネーフォワード ME」と「マネーツリー」は、投資家が求める機能も備えている。この2つを投資家目線で比較してみた。
FPの資格を持つ筆者は、収入と支出、さらに株式投資による損益を表計算ソフトにまとめ、月ごとに資産の推移を管理している。
しかし、2023年はもっと手軽に、PCだけでなくスマートフォンでも管理したい。そこで、家計簿アプリの導入を検討することにした。
株式投資をしている私にとって、数ある類似アプリのなかでも、証券口座の情報を自動で反映してくれる「マネーフォワード ME」と「マネーツリー」は魅力的だ。
特に今年は新しいNISAの姿が見えてきて、さらに世間の投資熱は高まると見られている。だから、いまあらためて、この2つの投資管理にも使える家計簿アプリを比較レビューしてみたいと思う。
まずはマネーフォワード MEとマネーツリーについて、両方のアプリで共通している特徴、そしてそれぞれのアプリ固有の特徴を箇条書きにしてみた。
- 収入と支出から資産額を算出
- 銀行口座・証券口座の情報を自動で家計簿に反映
- クレジットカード・電子マネーの情報も自動で家計簿に反映
「マネーフォワード ME」固有の特徴
- 資産比率を見やすい円グラフで表示
- レシートの自動読み取り機能がある
- ウィークリーレポートで週ごとの支出額を把握可能
「マネーツリー」固有の特徴
- シンプルで余計な機能がない
- 「現金記録」で財布の中身を記録可能
- 副業の経費も管理可能(個人事業主・フリーランサー向け)
こちらを踏まえて、それぞれの良いところ、気になる点を深堀りしていく。
円グラフが見やすい「マネーフォワード ME」
マネーフォワード MEは、2012年にリリースされたスマホ向け家計簿アプリだ。各種ある家計簿アプリの中で最も認知度が高く、利用率が高いと謳っている。
給与などの収入、生活費などの支出があるたびに内訳を入力すれば、その月の収支を自動で計算してくれる。給与の手取りが20万円、支出が15万円であれば、収支はプラス5万円といった形だ。
登録すれば銀行口座の情報を自動で反映してくれるほか、株式を売買する証券口座とも連携できる。 預金だけでなく証券口座まで把握できる機能は投資家にとって嬉しい。クレカとも連携可能だ。
なお、こうした機能は他の家計簿アプリにも搭載されており、目新しいものではない。銀行口座や証券口座、クレカとの連携機能は後述のマネーツリーにも搭載されている。以下、マネーフォワード MEの特徴をまとめてみた。
1)見やすい円グラフ
マネーフォワード MEのUIの中で筆者が特に良いと感じた部分は円グラフだ。収入・支出に関しても円グラフで表示されており、どの部分の出費が大きいか一目でわかる。
有料版になるが資産についても同様で、預金・証券など各資産の保有比率が円グラフで表示される。特定の資産に偏っていないか認識することができる。 投資家としては重要な、安定したポートフォリオの組み立てに役立つだろう。 一方マネーツリーの場合は棒グラフしかなく、資産比率のイメージがわきにくいかもしれない。
2)レシートの自動読み取り機能
レシートの自動読み取り機能も便利な機能だ。レシートを撮影するだけで支出の金額・種類・店舗名を自動で読み取ってくれる。支払いのたびに手で入力するといった面倒を省くことができるため、支出記録の習慣化につながるだろう。
3)ウィークリーレポート
週ごとの支出を表示してくれるウィークリーレポートも便利な機能だと感じた。レポートでは食費や交通費、交際費など、支出額を項目ごとに整理してくれる。
前週よりも食費が高くなっていれば、外食の際に気を付けようとするだろう。レポートを頻繁に確認することで節約癖がつくかもしれない。
なお、無料版では連携可能数が4件までに制限されるほか、過去1年分のデータしか閲覧できないなど制限が多い。
プレミアム会員にならないとアプリの機能を十分に使いこなすことはできないだろう。有料会員は月額500円もしくは年額5300円だ。
現金主義者やフリーには嬉しい「マネーツリー」
マネーツリーでは主なメニューが「現金記録」「個人」「経費」の3つに分かれている。「個人」画面では銀行口座や証券、電子マネーなどの総資産を把握できるほか、支出額が表示されるなど、一般的な家計簿アプリ機能として利用できる。
連携先の銀行や証券口座を登録すれば情報が自動でアプリに反映されるようになる。簡単に言えば、マネーフォワード MEと同じような機能だ。マネーツリーは「個人」メニュー以外の部分が特徴的である。
1)シンプルなデザイン・機能
何よりマネーツリーはシンプルなデザインが特徴的だ。資産管理画面では銀行口座・証券など項目ごとの金額が大きく表示されていて見やすい。 各証券口座の画面を開くと、国内株式・米国株式・積み立てNISAなど、各商品群の項目と金額が表示されているだけだ。 他機能につながるボタンが隅に小さく表示されているだけであり、コラムなどへのリンクも無いため洗練されている印象がある。
2)財布の代わりとなる「現金記録」
「現金記録」のメニューは手元の現金収入(ATMからの引出し)および現金での支払い額を記録する画面である。例えば財布の中の現金残高を把握するための画面として使うことができる。
クレジットカードでの支払いには罪悪感を感じるものの、現金では簡単に支出してしまう人は多いだろう。マネーツリーで現金の支出入を管理すれば、現金支払いで無駄が無いか一目で把握することが可能になる。
3)コスト管理できる「経費」
「経費」は個人事業主やフリーランサーが必要とする経費を記録する画面だ。つまり、マネーツリーを使えばアプリ一つで個人の家計簿と事業経費の両方を管理することができる。
「現金管理」画面から経費として記録した支出が「経費」画面に反映されるほか、銀行口座の管理画面から支出の一部を経費にふるい分けることで経費として反映される。月額500円以上のプランではAIによる経費の自動検出機能を使うことができ、銀行口座の取引明細の中からAIが経費として認識した分を自動的に経費として計上してくれる。
マネーツリーには無料版を含め、4つのプランが提供されている。個人の家計簿としてのみ使いたい方は「Moneytree Grow」(月額360円)で十分だろう。フリーランサーなど、経費をアプリで管理したい方は「Moneytree Work」(月額500円)がおすすめだ。ちなみに月額1400円の「Moneytree Corporate」は法人向けとなる。
どちらも一長一短
マネーフォワード MEとマネーツリーを使ってみて筆者が感じたのは、どちらも一長一短ということだ。
両者ともにメインの金融機関と連携できるため機能面では大差ないものの、UIには違いがある。資産の割合をすぐ把握したい筆者にとってマネーフォワード MEのような円グラフ機能はありがたい一方、マネーツリーにある現金管理画面は使いたい。
そして、副業をしている筆者にとってマネーツリーの「経費」項目はありがたいが、レシートを自動で読み取ってくれるマネーフォワード MEの機能も欲しい。どちらを使うかはもうしばらく使ってから結論付けたいと思う。