市場が不安定になる可能性があるとしても、投資家は2023年にポートフォリオを拡大することができるだろう。
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2022年には株式市場が下振れした。投資家は2023年が市場にとって良い年になることに期待しているが、ウォール街は確信を持っていない。
Insiderは先日、大手投資会社11社を対象に聞き取り調査を行った。そのうち5社は、2023年末にS&P500が4000(1月4日の値から4%増)を超えると予測している。その他は、4000に達してから横ばい(2社)、3900で頭打ち(3社)、3400まで下振れ(1社)という予想だった。
ウォール街のトップストラテジストたちは米国株に関する予想においては意見を異にしているものの、正しい投資先を選ぶ投資家には利益を得られる機会があるという点では全員が一致している。
この記事では、調査対象となった企業が明かした、株式市場と経済に関する見解や2023年に推奨する投資先を紹介する。
バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)
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2023年の展望:バンク・オブ・アメリカは、2023年はリセッション(景気後退)で企業業績が下がるが、アメリカの株式市場は横ばいだと予想している。強い消費者と企業の堅調なバランスシート、着実な賃金上昇、すでに弱気になっているセンチメントをそれほど悲観しない理由として挙げた。
高金利や地政学的リスクにより、2023年のアメリカのGDP成長率は0.4%低下し、失業率は2ポイント増の5.5%となると見る。2022年に株式市場と経済を苦しめたインフレは3.2%に弱まると予想している。
推奨する投資先:経済が低迷する中で、バンク・オブ・アメリカは優良株、小型株、エネルギー・生活必需品・金融・公益事業セクターの企業を勧めている。
優良株や小型株はリセッション時にも下落耐性が高いという。エネルギーセクターは供給不足により原油価格が高止まりする中で引き続き堅調と見る。生活必需品セクターには価格決定力を持つ安定したディフェンシブ銘柄(景気動向に業績が左右されにくい銘柄)が多い。金融セクターは安値だが質が高い。公益事業分野は債券のようなもので、インフレ率が低下し債券市場が回復すれば良好なパフォーマンスを示すはずだという。
シティグループ(Citigroup)
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2023年の展望:シティグループは、利上げにより業績予想が低下し、株式市場はわずかに後退するが、株価収益率低下はすでにある程度織り込み済みだと見る。
アメリカは利上げに伴い2023年後半にヨーロッパに続いてリセッション入りする可能性が高いという。また、2023年の世界成長率は2%未満に低下すると予測する。しかし、景気後退は長続きせず2024年には成長が再開する可能性があると見ている。
推奨する投資先:シティグループは米国株に関して前向きではないが、ヘルスケア・情報技術・素材セクターの格付けをオーバーウェイト(投資の配分を基準よりも高める)としている。
シティグループは2022年を通して、ディフェンシブ性と成長性を示すそのユニークさからヘルスケアセクターを好んでいた。一方、テック株に関しては、その成長見通しがリセッション時に助けになるとの確信から2022年秋以降は強気になった。素材銘柄は長年のお気に入りであり、インフレから利益を得る対象としてエネルギー株よりも好ましいという。
クレディ・スイス(Credit Suisse)
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2023年の展望:クレディ・スイスは、金利が市場の重しとなり、2023年末の米国株は2022年12月中旬の水準とほとんど変わらないと見る。インフレが長引いて利益を圧迫する中、2023年の企業業績は3〜4%低下すると予想する。
しかし、EUとイギリスに景気後退が迫る一方で、アメリカではインフレが鈍化し、連邦準備制度理事会(FRB)が示唆していたよりも早く利上げを終了できればリセッションが回避されるかもしれない。それでもハードランディングの確率は40%と見る。
推奨する投資先:2023年、株式市場は引き続き苦しい展開となるだろうが、インフレ率低下と金融政策緩和に伴い、債券市場が2022年の壊滅的な状態から回復して下落リスクのヘッジ、分散のメリット、より良いリターンを提供するとクレディ・スイスは見ている。
クレディ・スイスのストラテジストは2023年の展望について詳述したレポートの中で次のように述べている。
「債券と株式のパフォーマンスが再び乖離するはずだ。経済成長の鈍化が企業業績を直撃し、2023年前半も引き続き株式市場のボラティリティは高くなる」
株式市場に留まるつもりの投資家はディフェンシブな姿勢を取って、コスト上昇を転嫁することで利益率を守れる企業のうち、参入障壁の高い業界の企業を見つける必要があるという。そして金利が安定すれば優良成長株がアウトパフォームするはずだと予想する。
狙い目のディフェンシブなセクターはヘルスケア、生活必需品、公益事業などだという。一方、通信サービス、金融、情報技術、一部の一般消費財も2023年には上向くと見ている。
ドイツ銀行(Deutsche Bank)
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2023年の展望:ドイツ銀行は、2023年にはS&P500が非常に高いボラティリティを示しつつ10%以上上昇すると見る。リセッション懸念による2023年中頃の大幅なマイナスから、年末までには楽観が広がり、大幅なプラスに転じると予想している。
消費者関連と住宅市場の主要経済指標はアメリカが2023年後半にリセッション入りする可能性を示唆しているが、労働市場の強さは景気後退がまったく起こらない可能性もあるという希望を与えているとしている。
推奨する投資先:2023年の大半で株式市場が上昇すると見るドイツ銀行は、金融・情報技術・一般消費財セクターの株への投資を勧める一方、ディフェンシブセクターはアンダーウェイト(投資する配分を基準よりも少なくする)、エネルギーや鉱工業のような循環株(景気や金利、季節などに応じて周期的な値動きをする)はニュートラルとしている。
金融セクターはすでに成長鈍化を織り込みつつあり、金利が比較的高い水準で留まったままリセッション懸念が弱まれば上昇する可能性もあるという。一方、テックと一般消費財の銘柄は2022年には低迷したが、リスク・リターンの見通しが改善すれば上昇が期待できると見る。
ドイツ銀行は、激しいインフレとロシアによるウクライナ侵攻のさなかにあっても米国株をアウトパフォームしている欧州株も好んでいる。欧州株が対米国株比で過去最安値で取引されていることは、さらなる上昇が期待できることを示唆しているという。
ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)
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2023年の展望:ゴールドマン・サックスは、2023年にはFRBの金融政策の引き締めサイクルが終わりを迎えたとしても企業業績成長と株式のリターンは横ばいで推移すると見る。
しかし、2023年のアメリカと世界の経済成長はプラス圏に留まるはずだという。アメリカでインフレが後退してリセッション入りする確率は30%に過ぎないと予測している。
推奨する投資先:ゴールドマン・サックスは、2023年にS&P500は弱気シナリオだと3150まで下落するとしている。基本シナリオでも上昇は見込めないとしつつも、投資家が完全に様子見を続けるべきだとは考えていない。
ヘルスケア、生活必需品、エネルギーといった金利リスクが低いディフェンシブセクターの株は保有する価値があるという。インフレ鈍化から利益を得る銘柄や、経済が低迷する中で高い利益率を示す銘柄も同様だ。逆に、採算性の悪い企業や利益率が低い企業は避けるべきだという。
JPモルガン(JPMorgan)
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2023年の展望:JPモルガンは、2023年に株式市場は穏やかに上昇するとしつつも、第1四半期には企業業績とバリュエーションがいずれも低下する中で約10%の下落という厳しいスタートを切ると見る。しかし、それ以降は利下げとファンダメンタルズ改善に伴って楽観が広がると予想する。
アメリカとヨーロッパでは経済の低迷が迫る中でも市場は上昇すると見る。景気回復のためにはインフレ率が下がって利下げが行われる必要があるという。
推奨する投資先:2023年、投資家は絶対的な意味でも、相対的なバリュエーションという意味でも、割安な銘柄に注目すべきだという。
JPモルガンは成長性を持ったバリュー株としてヘルスケアセクターを、ディフェンシブセクターでは不動産よりも公益事業を好んでいる。利上げが続いてリセッションが迫る中、アメリカの鉱工業などの循環株に関してはあまり楽観していない。
モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)
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2023年の展望:モルガン・スタンレーは、2023年は前半に企業業績の悪化によって株式市場が急落し、米国株にとって引き続き停滞の年となると予測する。しかし他社と同様に、年の後半には投資家が将来の成長に対し楽観的になって株価が大きく上昇する可能性もあると見る。
2023年のアメリカ経済は景気低迷を回避するはずだとしつつ、高い金利、雇用の伸びの鈍化、失業率上昇が相場の頭を抑えると予想する。
推奨する投資先:業績予想が持続不可能なほど高い水準に留まる限り、投資家はディフェンシブな姿勢を保つべきだとモルガン・スタンレーの米国株担当チーフストラテジストであるマイク・ウィルソン(Mike Wilson)は書いている。
厳しい市場環境の中で狙い目は、生活必需品、ヘルスケア、公益事業、エネルギーなどのうち、ディフェンシブなものだとウィルソンは言う。彼は経済低迷に強い、質の高い企業も好んでいるという。
「我々が好むのは依然として、高い経営効率や多額のキャッシュフローといった要素だ。そのような企業は経費規律やキャッシュフロー創出が報われてアウトパフォームを続けるはずだ」