Fajar Kholikul Amri/Getty Images
今回は、こちらの応募フォームからお寄せいただいた読者の方からのご相談にお答えします。
「30歳」を迎え、自身のキャリアの現状に対して焦りを感じているとのことです。
Aさん
先日ついに30歳になってしまいました。社会人になりたての頃、30歳になったらこのくらいのことはできる社会人になっていたいと、なんとなく思い描いていたイメージがあるのですが、いざその年齢になってみたらイメージと全然違ってできないことばかりで、自分のキャリアに対してけっこう焦っています。「何者にもなれていない」といいますか……。
このまま焦り続けるのは嫌なので、今この時期にどんなアクションを心がけてキャリアを積めばいいのかアドバイスいただけたら嬉しいです。
(Aさん/30代前半/男性/メーカー)
「危機感」を抱くのは大切なこと
まず、Aさんがご自身のキャリアに対して「危機感」を抱いていること。
それはネガティブなことではありません。むしろとてもいいことだと思います。
危機感とは「変わろうとする意志」。人を動かす大きなエネルギーとなるものです。危機感があるAさんは「成長余地が大きい」と言えるでしょう。
最近、Aさんのように焦りを感じている若手は多いと感じます。
無理もありませんよね。会社が生涯のキャリアのレールを敷いてくれる時代は終わり、「キャリア自律」という言葉が注目されているように、キャリアの構築が個人に委ねられていますから。
その一方で、社会での「成功者」が低年齢化している傾向も見られます。
SNSを通じ、「インフルエンサー」「ユーチューバー」「スタートアップの経営幹部」など、20~30代にして著名になったり高収入を得たりする人の姿に触れる機会が多くなっています。
個人の「ブランド化」に成功した人たちと自分を比較してしまっている部分もあるのではないでしょうか。
とはいえ、実は「30歳の焦り」は今に始まったことではありません。昔は「35歳が転職限界年齢」と考えられていましたので、30歳という節目でキャリアを見つめ直す人は多かったのです。
そこでただ悩むだけでずるずると現状維持していくか、新たな行動を起こすか。
自分を変えようと決意すれば、どんなタイミングでも遅すぎることはありません。「思い立ったが吉日」。今できることは何かを考え、すぐにでも行動に移し、最善を尽くしてください。
そこで以降では、私から5つのメッセージをお送りします。
比較するなら「他者と」ではなく「過去の自分と」
先ほども触れたとおり、今はSNSを通じて多くの人の情報が入ってきやすい時代です。
頑張っている人を見て刺激を受けるのはいいことなのですが、「あの人は比べて自分は……」と比較して卑下することはやめましょう。
他者と比べてしまいそうになったら、「過去の自分」と比べてみてください。例えば5年前の自分を振り返ると、今の自分にはできるようになったことがたくさんあると思います。
自身の「成長」にフォーカスしましょう。
過去は変えられない。その中にある「価値」を見つけ出そう
Aさんは「30歳」の自分に対し、描いていたイメージと現実にギャップがあるとのこと。
でも、どうやっても過去を変えることはできません。変えることができないことを否定したところで、前向きなものは何も生まれません。
自分がやってきたことの中から「価値あるもの」を探しましょう。
成果を挙げた仕事もあるでしょうし、人から感謝されたこともあるはず。自信を持てる「強み」が必ずあるはずです。
自分で見出すのが難しい場合は、人に聞いてみてください。友達や家族、会社の上司、先輩、同僚など。メタ認知は意外と難しいもの。自分では気づかない強みが可視化されるかもしれません。
自分ならではの価値とは何なのかを考えてみてください。
30代でも異業種・異職種へのキャリアチェンジはできる
30歳のAさんは、今から思い切ったキャリアチェンジを図ることも可能です。
異業種・異職種への転職は、一昔前は「20代でなければ難しい」、近年は「30代前半でも可能」となり、直近では「30代後半でもチャンスが広がっている」状況です。
同業界・同職種の経験を求める「即戦力採用」が主流だった昔と比べると、採用難の今は「ポータブルスキル」をうまく活用すれば、30代でも未経験業界へのチャレンジがしやすくなっています。
ポータブルスキルとは、業界・職種を問わず持ち運べるスキルのこと。例えば「コミュニケーション力」「課題分析・解決力」「調整力」「交渉力」といったものです。
もし、今の業種・職種で成長イメージを描けないのであれば、異分野に目を向けてみるのも一つの手です。
ただし、30代に入ると年を重ねるごとに求められる期待値が高くなり選択肢は狭まりますから、少しでもキャリアチェンジを考えるならすぐに行動を起こしましょう。
「100%自分のために使える時間」を有効に使おう
30歳となれば、結婚・出産時期が迫ってくる方も多いことを考えると、自分のためだけに自由に時間を使える期間はあと数年。
育児をするとなれば、男性・女性ともに時間が制約されます。そして、「守るもの」ができれば、自分一人だけの都合で新たなチャレンジもしづらくなるものです。
ですから、20代以上に時間の有効活用を意識することをおすすめします。
「新たなプロジェクトを提案して責任者に手を挙げ、新たな経験を積む」「書籍・セミナー・ワークショップなどで学ぶ」「スキルアップにつながる副業をする」など、自身を一歩成長させるチャレンジに時間を投じてはいかがでしょうか。
キャリアコーチをパートナーにする手も
今の時代、Aさんのように30歳の節目を迎えた人だけでなく、あらゆる年代の人がキャリアに悩みを抱えています。
近年はビジネス環境の変化が目まぐるしく、今後もさらに変化が加速します。
40代でも50代でも、次のキャリアを模索し続けることになるでしょう。
そうした環境下で、「キャリアコーチ」「キャリアメンター」などのサービスが生まれています。
従来、キャリアの相談先といえば「転職エージェント」が主流でした。転職エージェントは転職検討者に求人企業を紹介して転職を成立させることで企業側から成功報酬を受け取るモデルであるため、個人からのキャリア相談は無料です。
しかし、最近は個人向けの有償サービスも増えています。
「求人紹介」とは切り離した形でキャリアに関する相談を受け、その人の強みの発見、強みをどう活かしていくかのアドバイスなど、キャリアデザインをサポートしてくれます。
数十年にわたって常にキャリアを考え続けていかなければならない時代、プロの知見と情報を持って伴走してくれるパートナーを見つけておくのも有効な手段です。
何をするにも遅すぎることはありません。思い立ったが吉日。自分で選んだ人生を正解にするのは自分次第です。
コロナパンデミックによりDX(デジタルトランスフォーメーション)が進みましたが、さらにここからは「生き方トランスフォーメーション」の時代が到来したと感じます。今、一歩踏み出すことで10年後、20年後、30年後の未来が大きく変わります。
ぜひアクションしてみてください。
※この記事は2023年1月16日初出です。
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森本千賀子:獨協大学外国語学部卒業後、リクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。転職エージェントとして幅広い企業に対し人材戦略コンサルティング、採用支援サポートを手がけ実績多数。リクルート在籍時に、個人事業主としてまた2017年3月には株式会社morichを設立し複業を実践。現在も、NPOの理事や社外取締役、顧問など10数枚の名刺を持ちながらパラレルキャリアを体現。2012年NHK「プロフェッショナル〜仕事の流儀〜」に出演。『成功する転職』『無敵の転職』など著書多数。2男の母の顔も持つ。