セールスフォースのマーク・ベニオフCEO。
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セールスフォース(Salesforce)のマーク・ベニオフ(Marc Benioff)CEOは、2023年1月5日に2時間近くにわたって行われた同社の大規模なレイオフ計画に関連する全社会議で、2022年12月に一部の社員を激怒させた、セールスフォースの社員、特にパンデミック中に採用した新入社員の生産性に問題があるという発言を今一度強調した。
その際、ベニオフ氏は新たなことを指摘した。Insiderが入手した全社会議の音声によると、それはオフィスに出社しない若手社員も生産性が低い可能性があるというものだった。
「新型コロナウイルスのパンデミック前の2020年と同水準のパフォーマンスや生産性が見られない」とベニオフ氏は全社会議で述べた。
「社員の一部、特に新入社員の一部の数字を見ると、生産性が以前ほど高くない」
ベニオフ氏と共同創業者のパーカー・ハリス(Parker Harris)氏は、2022年12月中旬にベニオフ氏が全社へのSlackのメッセージで新入社員の生産性が低下していることを示唆し、社内で大騒ぎになった事態を収拾するために全社会議でこの話題を持ち出した。
Insiderが確認したSlackのメッセージによると、ベニオフ氏は「(2021年と2022年のパンデミック中に採用された)新入社員は生産性の大幅な低下に直面している」と発言していた。このSlackメッセージには何百人もの社員が反応したが、その多くが彼の主張に反発するものだった。
ベニオフ氏はそうした反発に対処するため、主張をさらに強化し、説明や事例を提示した。
ベニオフ氏は出席した4万7000人以上の社員に、自分はCOO兼営業責任者のブライアン・ミルハム(Brian Milham)氏から年間契約額(annual contract value:ACV)の96%が50%の営業担当者によってもたらされていると聞いたことがきっかけで、社員の生産性について投稿するに至ったと述べた。ACVは特定の顧客からの年間収益を測定する方法だ。
「セールスフォースの営業担当の半分はあまり生産的ではなく、その多くは新入社員だ。なぜだろうか」。ベニオフ氏はその時の発言について詳しく語った。
「我々のリモート社員のマネジメントが不十分なのか。我々に新しいスキルが必要なのか。なぜなら、このようなことは我が社の歴史上、一度もなかったからだ」
ベニオフ氏はまた、これはパンデミック後の経済が軟化し、顧客がソフトウェアへの支出を減らしたためだけではないと主張した。そして、会社は依然として大規模な取引を成立させているが「一方で、営業組織の半分は本当に苦戦している。どうすればいいのか分からないという感じだ」と述べた。
「心理的にも技術的にも、いくつかの問題が起きているのだろう」(ベニオフ氏)
ベニオフ氏は、リモートワークが問題なのだろうかと疑問を口にした。特に若手社員に関しては「おそらく、人間関係を築いていないのだろう」と述べた。そして、「若手社員は、かつて我々が経験したような社会経験や人との出会い、回転椅子に座って仕事をする経験を得ていないのではないか」と口にした。
CEOが新入社員、若手社員、リモート社員(特に営業部門)の生産性について、このような主張を繰り返すのを聞いた社員は、あまり喜んではいないようだ。
ある人は「彼が我々とは違う世代のCEOであることは明らかだ」と述べている。
昨年11月に数百人の営業社員が解雇の対象となった後、複数の現社員と元社員がInsiderに語ったところによると、セールスフォースの業績評価システムが難しい顧客に関して非現実的な目標を作成し、失敗を招いているとのことだった。
セールスフォースの広報担当者は当時、Insiderへのコメントの中で次のように述べていた。
「当社の営業成績プロセスは、説明責任を促すものです。残念ながら、それが原因で退職する人もいますが、当社ではそうした人々の転職を支援しています」
ベニオフ氏は、コードネーム「Org 62」と呼ばれるプロジェクトについて議論する際にも、こうした不満を口にしそうになった(ORg 62とは、セールスフォースの主力製品であり、営業担当者の効率性を高めるためのCRM製品をより効果的に活用するためのプロジェクト)。
「もっと危機感を持ってOrg 62を再構築する必要があるということだろうか」 とベニオフ氏は全社会議で述べている。
Insiderが閲覧した会議の出席者らのSlackメッセージによると、さらなる人員削減に関する議論の一環として、ベニオフが生産性向上に言及したことにセールスフォースの社員は動揺していたという。
会社が大量解雇を実行する一方で、生産性を向上せよと要求することは、生産性をさらに阻害するものでしかないという人もいる。
「皮肉にも、今週はセールスフォースの生産性が失われた1週間だと言えるだろう」と会議に出席していた営業担当社員は語った。
セールスフォースに追加のコメントを求めたが、返答は得られていない。