メタのマーク・ザッカーバーグCEO。
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- 2023年1月9日、メタは住宅広告やクレジット広告に関する新たなターゲティングアルゴリズムを発表した。
- この動きは、約4年前に同社が公正住宅法違反の疑いで訴えられたことを受けてのものだ。
- メタのプラットフォームは、2026年6月まで連邦政府の監視下に置かれ、その改善の進捗が見守られることになる。
フェイスブック(Facebook)を運営するメタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)は、公正住宅法(Fair Housing Act)違反の疑いが指摘された訴訟でアメリカ司法省と和解し、2023年1月9日に新たな広告ターゲティングアルゴリズムの使用を開始した。
この動きは、アメリカ政府と大手テック企業の間で4年近くにわたって繰り広げられた訴訟と交渉の集大成だと言える。ことの始まりは、2019年3月にアメリカ住宅都市開発省が、メタがターゲット広告アルゴリズムによって「住宅差別を可能にした」として同社を提訴したことだった。その6カ月後には、フェイスブックが高齢者や女性に他の人と同じ住宅や金融サービスの広告を表示せずに差別しているとして、集団訴訟が起こされた。
公正住宅法は、住宅販売や賃貸において、性別、宗教、肌の色、ジェンダー、障害、家族構成などを理由に差別することを禁じている。
メタの広告ターゲティングアルゴリズムは、定期的に差別的な行為を行っていないかが精査されている。また、年齢や性別に基づく雇用や採用の差別を助長しているとの疑いについても、メタは調査を受けている。
メタは、広告主が広告を見せたい相手と見せたくない相手の属性を選択できるようにしており、それについてアメリカ自由人権協会(ACLU)などの団体は、メタによる「デジタル・レッドライニング」だとして非難している(レッドライニング(赤線引き)とは、金融機関が低所得階層の黒人が居住する地域を、融資リスクが高いとして赤線で囲み、融資対象から除外するなどして差別した行為)。ACLUは2022年1月に、これらの慣行は市民権の侵害であり、差別がオンラインで行われたからといって同社が監視の目から免れるべきでないと主張し、アミカスブリーフ(第三者の意見書)を提出した。
メタは2022年6月、住宅都市開発省の代理人として同社を訴えた司法省と和解し、新たな広告ターゲティングシステムを構築することに同意した。そして1月9日、アメリカの住宅広告向けに「Variance Reduction System」と呼ばれる新システムを発表した。これは雇用や融資の広告にも適用する予定だと、メタはブログ記事で述べている。
また「Special Ads Audience」機能についても2022年8月で終了したと付け加えた。これは、広告主が住宅、雇用、ローンなどのターゲットとなる特定の人口層を選択し、広告を配信することができるという機能だった。
「業界全体で、アルゴリズムの公正性へのアプローチは、特にデジタル広告に関しては進化の過程にある」とブログには記されている。
「しかし、差別につながりかねない重大な懸念に対処するにあたって、合意形成を待ってはいられない。特に、住宅、雇用、融資など、長年続く不平等な扱いが経済的機会の形成に影響されるような分野に関してはそうだ」
司法省の公民権部門を率いるクリステン・クラーク(Kristen Clarke)司法長官補佐官は、大手テック企業の差別的行為に対する責任を問う上で、メタの新システムは「極めて重要なステップ」だと述べている。和解案によると、メタの改善の進捗は、2026年6月まで連邦政府が監視することになっている。