地球から218光年の距離にある「ケプラー138」とその惑星の想像図。
NASA, ESA, and Leah Hustak (STScI)
- 豊富な水で構成され、生命が存在するかもしれない2つの系外惑星が発見された。
- 系外惑星は、これまでに5241個発見されている。
- 系外惑星の大気の化学組成の分析によって、水が存在するかどうか判断されている。
こと座の方向、218光年の距離にある薄暗い赤色矮星「ケプラー138」の周りを、2つの惑星「ケプラー138c」と「ケプラー138d」が、周回している。
これら2つの系外惑星は、その多くが水でできている可能性があるという研究成果が「Nature Astronomy」に掲載された。
しかし、時速2万8000kmで進む宇宙船が到達するのに800万年以上かかるほど遠くにある惑星のことがなぜ分かるのだろうか。
「トランジット法(食検出法)」によって、これまで多くの系外惑星が、赤い円で示された太陽系周辺の範囲内で見つかっている。「重力マイクロレンズ現象」の観測によって見つかった系外惑星は、黄色い点で示されている。
NASA/JPL-Caltech
「トランジット法」で恒星の減光によって惑星を発見
ほとんどの系外惑星は、「トランジット法(食検出法)」と呼ばれる手法で発見されている。
「つまり、ケプラー宇宙望遠鏡や他の惑星探査望遠鏡によって、恒星の前を通過する惑星が何度も観測されているということだ」と、モントリオール大学太陽系外惑星研究所の博士課程に在籍し、論文の筆頭著者であるキャロライン・ピオーレ(Caroline Piaulet)はInsiderに語っている。
惑星が恒星の前を通過するとき、恒星はわずかに減光する。それを強力な望遠鏡を用いて観測することで、惑星が発見できる。
NASA Ames
1992年に太陽系外の惑星が初めて発見されて以来、天文学者は太陽のような恒星を周回する系外惑星を探し求めてきた。
アメリカ航空宇宙局(NASA)の「太陽系外惑星アーカイブ」によると、すでに5241個の太陽系外惑星の存在を示す直接的な証拠が見つかっている。
系外惑星が生命を育む条件を備えているかどうかを知るには、大気の化学組成の測定が必要だ。これは、恒星からの光が大気中を通過する際に、それぞれの分子に対応する特定の波長が減衰する様子を示すスペクトルを分析することで行われる。
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が取得したデータによって、系外惑星「WASP-96b」の大気には水、雲、もやが存在することが明らかになった
NASA, ESA, CSA, and STScI
遠くの宇宙で生命が存在するのかどうかを調べる際、地球上の生命を維持するための要素である液体の水や継続的なエネルギー源となる炭素、その他の元素の探索が行われる。
水に覆われた惑星
ピオーレとそのチームは、ハッブル宇宙望遠鏡と引退したスピッツァー宇宙望遠鏡のデータを用い、ケプラー138dの大気組成について追跡調査を行った。するとそれが、38日ごとに主星を周回する別の惑星「ケプラー138e」の発見につながった。
ピオーレらは、ケプラー138cとケプラー138dがほぼ同じ質量と大きさで、地球よりも20%程度大きいことを明らかにした。
また、体積の最大半分が岩石よりも軽い物質でできている可能性が高いと結論づけた。
地球と系外惑星「ケプラー138d」の内部構造を示した図。
Benoit Gougeon (University of Montreal)
「これらが岩石だけでできているわけではなかったことに驚いた。より軽い物質が含まれているはずだ。きっと水だろう」とピオーレは言う。
「我々はよく、地球は海に覆われた青い惑星だと表現する。だが、これらの系外惑星には、地球よりもはるかに多くの水が存在するだろう」
アメリカ海洋大気庁(NOAA)によると、地球の海の平均的な深さは約3.7キロートルだ。一方ケプラー138cとケプラー138dの海の深さは2000キロメートルにもなるとピオーレは推計している。
太陽系外にも水の世界が数多く存在するかもしれない
液体の水が豊富な惑星は、これまで考られていたほど珍しいものではないかもしれないとピオーレは言う。
2022年8月、別の研究チームが、深い海に覆われている可能性のある惑星「TOI-1452b」を発見した。海の存在について確証を得るには、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による追跡観測が必要だ。
太陽系には、地球の他にも水のある天体が存在する。
NASA
しかし、海のある天体を探すために、天文学者が宇宙の果てまで冒険する必要はない。木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドスのように、氷の層の下に海がある天体は、太陽系のすぐ近くにあるからだ。
今では水の豊富な天体が次々と見つかるようになっているが「そこにどのような種類の生命が存在しうるかについては、あまり分かっていない」とピオーレは言う。
NASAの土星探査機カッシーニは2015年10月、土星の衛星「エンケラドス」から熱水が噴き出す様子を観測した。そのときのイメージ図。
NASA/JPL-Caltech
宇宙で生命体を探すにあたって制約の1つとなっているのは、生命を維持できる惑星がどのようなものかという定義が、地球上の生命に基づいていることだ。
しかし新たな天体を発見し、研究することで、地球というたった1つのサンプルを超えて、「ハビタブル(居住可能)」とはどういうことなのか、何が居住可能な世界なのかを明らかにできるだろう。