セールスフォースのマーク・ベニオフCEO。
REUTERS/Denis Balibouse
セールスフォース(Salesforce)の関係者は、同社の新会計年度が始まる2023年2月に、主に営業職を対象としたさらなるレイオフが実施されるのではないかと戦々恐々としている。
8人の社員と元社員がInsiderに語ったところによると、今回の営業職のレイオフはセールスフォース社員の10%を削減する計画の一環として実施される見通しだという。また、業績にもよるが、2023年中にさらなる10%の人員削減も検討されているようだと、この件に詳しい人物は話す。別の内部関係者は、より大規模なレイオフの可能性について、社内で議論されているのを耳にしたことがあると言う。
2023年1月4日、同社はコスト削減を目的とした広範なリストラの一環として、社員の10%をレイオフする計画を発表した。セールスフォースの直近の社員数は7万3461人とされており、この数字をもとに計算すると最大で7000人程度が削減される可能性がある。Insiderの既報の通り、同社の幹部らはEメールや全社会議を通じ、レイオフは今後数週間続く見通しだと社員に繰り返し伝えている。
Insiderは、1月初めに行われたセールスフォースの全社会議の音源を入手した。ベニオフCEOはこの全社会議で「『1回きりで終わり』というような線引きをするつもりはない」と社員に向けて語っている。
セールスフォースの会計年度は1月31日に終了する。第4四半期というのは、エンタープライズソフトウェアの販売会社にとっては通常、売り上げが最も大きくなる四半期だ。この時期、営業担当者は売り上げノルマを達成すべくクライアントに契約締結を強く迫ることになる。1月は、2月1日から始まる新年度に向けて、営業チームが重要な契約を成立させ、テリトリーやアカウントを割り当てる時期だと関係者は言う。
セールスフォースはパンデミック中に大きな成長を遂げたものの、その後の経済の軟化により、クライアント企業がこれまでと同じペースでクラウドソフトを購入することは考えにくい。過去長いこと、同社は見通しの(下方修正ではなく)上方修正を行ってきたが、2022年8月、通期売上高の見通しを5月に予測していた約310億ドル(約3兆9700億円、1ドル=128円換算)から、約300億ドル(約3兆8400億円)に下方修正した。
このような背景から、2023年1月初めの最初の人員削減では、ほとんどの営業担当者が対象にならなかったという。
同社のレイオフに詳しいある人物は、「この四半期の業績をこれ以上悪化させないようにとの配慮です」と話す。
セールスフォースの最高人材責任者(CPO)、ブレント・ハイダー。
Salesforce
営業の生産性に関する警告
関係者らも、レイオフの具体的な進め方については知らされていなかったが、人員削減の際には営業ノルマに対する成績が考慮されるのではと複数の社員は予想している。
2022年11月、同社は何百人もの人員を削減した。その多くは営業職だったが、ここでの解雇判断は成績によってなされていたと見られている。当時セールスフォースの社員だった人物によると、同社では人員削減に先立ち、失敗させるための営業部隊を立ち上げ、非現実的な目標と難しい顧客を割り当て、業績がトップだった者にさえペナルティが与えられるようなノルマを課したという。
また、Insiderの既報の通り、1月初めの全社会議ではマーク・ベニオフCEOが営業チームの「生産性」の問題について長々と語った。
ベニオフは、同社の年間契約額(annual contract value:ACV、特定の顧客からの年間収益を測定する指標)の96%が、50%の営業担当者によってもたらされたと語った。
Insiderが入手した音声によると、ベニオフはその全社会議で「我が社の営業職の半分はほとんど生産性が低く、その多くは新しい社員だ」と語っている。
チーフ・ピープル・オフィサー(CPO)であるブレント・ハイダー(Brent Hyder)も、セールスフォースにとって第4四半期の「事業目標」を達成することが重要であると、その全社集会で述べている。この話を聞いた関係者は、年度が切り替わったタイミングでさらなるレイオフがあることを示唆しているようだと語った。
一方、不安が広がる社員たちは、次に影響を受けるのはどの部門なのかを知りたがっている。そのせいで「社内の生産性はゼロに近い状態です」と、今回のレイオフに詳しい関係者は語る。
関係者らによれば、今後のレイオフの計画はまだ会社から聞かされていないが、Insiderがセールスフォースに取材したところ、アメリカでのさらなる人員削減を計画中であることを認めた。ただ、2月に営業職の人員が削減されるかどうか、そしてさらなるレイオフが検討されているかについては無回答だった。