共通テストの「政治・経済」「現代社会」には時事的なトピックが登場しました。(写真はイメージです)
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センター試験に代わって導入され、今年で3回目となった大学入学共通テストが1月14日〜15日にかけて実施されました。1日目の地歴公民では時事的なトピックを反映した出題も。今回は公民分野のうち、現代社会と政治・経済の問題の一部を紹介します。
(※問題文は一部編集し、表記を改めるなどしています)
現代社会:「定額配信サービス」「イラスト投稿サイト」「プラットフォーム」が登場
現代社会の大問3は、高校生が受講した大学の体験講義の形式で問題を出題。経済成長の判断に用いる「名目GDP」と「実質GDP」の違いを問う設問が冒頭に登場した。
さらにインターネットを通じたビジネスについて言及。音楽の定額配信サービス、プラットフォーム間の競争と利用者の関係性、イラスト投稿サイトを例にしたWebサイトに関する出題があった。
この他、国家・政府の役割に関する設問もあり、2022年度の一般 会計の当初予算が総額で100兆円を超えたことも問われた。
政府は2022年12月、2023年度当初予算を114兆円規模で閣議決定した。5年連読で当初予算が100兆円を超えることになる。
問:先生は講義で、GDPの名目と実質の違いを解説した。キタさんが作成した次のノート中の【A】・【B】には後の語句ア〜ウのいずれかが、【C】には後の語句カ・キのいずれかが入る。【A】〜【C】に入る語句の組合せとして最も適当なものを、後の1〜8のうちから一つ選べ。
- 名目GDP:その時点の物価を使って求める
- 実質GDP:名目GDP÷物価変動調整用の指標(GDPデフレータ)
実質GDPを計算する理由
- 物価変動の影響を取り除くため
→生産物と生産量に変化がないとき、実質GDPは変化しない
仮想例
- ある年と翌年で、生産物と生産量が同じ
- スマートフォンだけ価格低下(同時に、付加価値も低下)
このときの翌年のGDPは、前年と比べて
・実質GDP:【A】 ・名目GDP:【B】
経済成長はどちらで判断?
- 通常、二つのGDPは同じ方向に変化:どちらを使ってもよく思える
- 2001年以降の日本
・2001年と2003年にGDP成長率が実質でプラス、名目でマイナス
・2019年に実質でマイナス、名目でプラス
→生産量の増減を判断するときは【C】GDPを使う
【A】•【B】に入る語句
ア:増加 イ:減少 ウ:同じ
【C】に入る語句
カ:名目 キ:実質
1:A-ア B-ウ C-カ
2:A-ア B-ウ C-キ
3:A-イ B-ウ C-カ
4:A-イ B-ウ C-キ
5:A-ウ B-ア C-カ
6:A-ウ B-ア C-キ
7:A-ウ B-イ C-カ
8:A-ウ B-イ C-キ
[正解は8]
問:先生は「インターネット接続の普及で人々の消費行動が変わりました。世界全体で見たとき、音楽CDの販売額より、音楽の定額配信の売上額の方が高くなりました。両者の違いを考えてみましょう」と述べ、違いを次の板書で説明した。
板書
定額配信の加入:一定期間自由に音楽を聴ける状態になるサービスの購入
サービスの取引対象:以下の三つをすべて満たす
- 物質ではない
- 生産と消費が同時
- 作り置き(在庫)ができない
上の板書を踏まえ、次のA〜Cからサービスの取引に該当するものをすべて選んだとき、その組合せとして最も適当なものを、後の1〜8のうちから一つ選べ。
A:理髪店で髪を切ってもらった。
B:コンビニエンスストアがアルバイト従業員を雇用し、働いてもらった。
C:駅で切符を購入して鉄道に乗り、目的地まで移動した。
1:AとBとC
2:AとB
3:AとC
4:BとC
5:A
6:B
7:C
8:サービスの取引に該当するものはない
[正解は1]
問:先生は「21世紀になってプラットフォームをもつ新興企業が多数誕生した」と解説した。キタさんは講義後に質問をした。次の会話文中の【X】には後の記述ア・イのいずれかが、【Y】には後の記述カ・キのいずれかが、【Z】には後の記述サ・シのいずれかが入る。X〜Zに入る記述の組合せとして最も適当なものを、後の1〜8のうちから一つ選べ。
会話文
先生:ビジネスでは、生産者と消費者、表現者と視聴者といった様々な立場の人や企業が集まって交流する場という意味で使われます。身近な例としてはSNSや動画共有サイト、通販サイトがあります。
キタ:かなり多様ですけど、なぜまとめて議論されるのですか?
先生:その質問に答える前に、最近誕生した、学生が興味をもちそうなイラスト投稿サイトの例を説明します。制作者がイラストを投稿したいのは、見る人が多いWebサイトです。絵を見るのが好きな人も、投稿が多いWebサイトを利用します。広告を出す企業は、利用者が多いWebサイトに出稿します。いま、あるWebサイトの人気が出て、利用者数が他のWebサイトより多いとき、利用者はどういう行動をすると思いますか?
キタ:【X】と思います。
先生:正解です。このメカニズムが働いた結果、複数のプラットフォームが同分野で競争するとき、【Y】という結果になる点が共通しているので、まとめて議論されます。
キタ:この結果は、プラットフォームの利用者にとっていいことですか?
先生:そうとは限りません。プラットフォームどうしは、利用者を集めようと使い勝手や手数料などの様々な面で競争しているので、【Z】方が利用者は価格やサービスの面で得することが多いです。
【X】に入る記述
ア:毎回同じ人気のあるWebサイトを利用する
イ:必要に応じてWebサイトを使い分ける
【Y】に入る記述
カ:複数のプラットフォームの利用者数が横並びになる
キ:利用者数が多いプラットフォームに、さらに利用者が集まる
【Z】に入る記述
サ:単一のプラットフォームが、安定してサービスを提供する
シ:複数のプラットフォームが、競争しつつサービスを提供する
1:X-ア Y-カ Z-サ
2:X-ア Y-カ Z-シ
3:X-ア Y-キ Z-サ
4:X-ア Y-キ Z-シ
5:X-イ Y-カ Z-サ
6:X-イ Y-カ Z-シ
7:X-イ Y-キ Z-サ
8:X-イ Y-キ Z-シ
[正解は4]
問:グローバル化や企業の大規模化など、現代社会には様々な変化があるなかで、国家・政府の役割が今改めて問われている。国家・政府の役割に関する記述として最も適当なものを、次の1〜4のうちから一つ選べ。
1:2008年の世界金融危機を機に、新興国を含む主要国が経済問題について話し合う新たな会議として、G7サミットが開かれるようになった。
2:「大きな政府」を否定し、「小さな政府」を目指すべきだとする考え方を、修正資本主義という。
3:国と地方の役割・関係を見直した地方分権一括法の施行により、日本の地方公共団体が扱う事務は法定受託事務に一本化された。
4:日本の国の予算のうち、政府の一般行政に関わる一般会計の2022年度当初予算は、総額で100兆円を超えている。
[正解は4]
政治・経済:「為替介入」や日本の安全保障、「SDGs」も
政治・経済でも時事的なトピックスが登場。大問2では「為替介入」に関する設問があった。政府・日銀は2022年9月〜10月に政府・日銀がおよそ24年ぶりに実施しており、かなりタイムリーな内容だ。さらに、2011年3月時点と2021年3月時点の日本国債の保有者・保有高を比較する出題もあった。
大問3では、「核兵器による世界的危機」や「戦争の違法化の試み」に関する設問が登場。日本の安全保障政策に関する出題もあった。加えて、成人年齢の引き下げを受けて2021年に改正された少年法に関する設問があった。
国際経済に関する内容では、大問4で「SDGs(持続可能な開発目標)」がテーマに。サプライチェーンやフェアトレードの知識が問われた。
問:核兵器に関する条約についての記述として誤っているものを、次の1〜4のうちから一つ選べ。
1:部分的核実験禁止条約では、大気圏内核実験や地下核実験が禁止された。
2:包括的核実験禁止条約は、核保有国を含む一部の国が批准せず未発効である。
3:核拡散防止条約によれば、核保有が認められる国は5か国に限定されることとなる。
4:第一次戦略兵器削減条約では、戦略核弾頭の削減が定められた。
[正解は1]
問:次の会話文中の空欄【ア】・【イ】に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の1〜4のうちから一つ選べ。
X:国際連盟は紛争の平和的解決と【ア】の一環としての制裁とを通じて国際社会の平和と安全を保障しようとしたよね。国際連盟規約において戦争に課された制約は限定的で、戦争の違法化を進める動きが生じたんだ。
Y:それを進めた国際規範に、【イ】があるよね。これは、国際関係において国家の政策の手段としての戦争を放棄することを目的としたものだよ。しかし、第二次世界大戦の勃発を抑止できなかったよね。
X:その後、国際連合憲章では、国際関係において武力による威嚇または武力の行使を禁止しているんだよ。これによって、【イ】に比べて制度上禁止される国家の行為は拡大したんだ。21世紀になっても武力紛争はなくなっていないので、武力による威嚇や武力の行使の違法化をもっと実効性のあるものにすべきではないのかな。
1:ア-勢力均衡 イ-不戦条約
2:ア-勢力均衡 イ-国際人道法
3:ア-集団安全保障 イ-不戦条約
4:ア-集団安全保障 イ-国際人道法
[正解は3]
問:日本の安全保障に関する記述として最も適当なものを、次の1〜4のうちから一つ選べ。
1:日本の重要影響事態法による自衛隊の海外派遣に際しては、日本の周辺地域においてのみ自衛隊の活動が認められる。
2:日本のPKO協力法による国連平和維持活動に際しては、自衛隊員の防護のためにのみ武器使用が認められる。
3:日本は武器の輸出に関する規制として、防衛装備移転三原則を武器輸出三原則に改めた。
4:日本は安全保障に関する重要事項を審議する機関としてを設置した。
[正解は4]
問:空欄【ア】〜【ウ】に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の1〜8のうちから一つ選べ。
・少年(20歳未満の者)の事件は、全件が【ア】に送られ、【ア】が処分を決定する。
・16歳以上の少年のときに犯した故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件については、原則として【イ】への逆送決定がされる。逆送決定がされた事件は、【イ】によって起訴される。
・少年のときに犯した罪については、犯人が誰であるかがわかるような記事・写真等の報道(推知報道)が禁止される。
2:2021年少年法改正のポイント
・【ウ】以上の少年を「特定少年」とし、引き続き少年法を適用する。
・原則として逆送しなければならない事件に、特定少年のときに犯した死刑、無期または短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件を追加する。
・特定少年のときに犯した事件について起訴された場合には、推知報道の禁止が解除される。
1:ア-地方裁判所 イ-検察官 ウ-14歳
2:ア-地方裁判所 イ-検察官 ウ-18歳
3:ア-地方裁判所 イ-弁護士 ウ-14歳
4:ア-地方裁判所 イ-弁護士 ウ-18歳
5:ア-家庭裁判所 イ-検察官 ウ-14歳
6:ア-家庭裁判所 イ-検察官 ウ-18歳
7:ア-家庭裁判所 イ-弁護士 ウ-14歳
8:ア-家庭裁判所 イ-弁護士 ウ-18歳
[正解は6]
問:空欄【ア】・【イ】に当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の1~4のうちから一つ選べ。
企業は、こうした問題に対処する責任を有していると考えられ、実際さまざまな取組みがみられます。その一つとして注目される取組みが【イ】です。【イ】とは、発展途上国産の原材料や製品について公正な価格で継続的に取引することにより、立場の弱い発展途上国の労働者の生活改善や自立をめざす取組みのことです。
【ア】に当てはまる語句
a:セーフティネット b:サプライチェーン
【イ】に当てはまる語句
c:フェアトレード d:メセナ
1:ア-a イ-c
2:ア-a イ-d
3:ア-b イ-c
4:ア-b イ-d
[正解は3]
問:会話文の空欄【ア】・【イ】に当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の1〜4のうちから一つ選べ。
○相互に関連する問題であるとの認識から、国連において加盟国の総意によって17の目標が幅広く提示された。
○これらの目標は2030年までに達成がめざされる。それぞれの目標をどう達成するかは各国が決定する。
X:17もの目標を幅広く提示するSDGsでは、それぞれの目標が他の目標に関連することになるため、包括的に取組みを進める必要があるという考え方がとられているんだね。また、それぞれの目標をどう達成するかは各国に委ねられており、各国の自主性が重視されている点も特徴的だね。
Y:ただ、相互に関係しているとしてもかなり幅広い目標だし、各目標をどう達成するかを各国が決定できるのなら、どれほどの意味があるか疑問だな。少しずつでも、一つ一つ目標をどう達成するか具体的に定めて条約で約束し、守らない国に対しては責任を追及することで目標の達成を図っていくべきじゃないかな。
X:そうかな。【ア】。
Y:そんなにうまくいくのかな。とくに、各国の経済発展を阻害するような目標を国際社会で達成するには困難が伴うと思うよ。たとえば、環境保護と経済発展をめぐる発展途上国と先進国との利害対立が、SDGsの目標の一つである気候変動問題への国際社会の対処を難しくしていることは「政治・経済」の授業でも学習したよね。
X:たしかに、そこが国際的な問題の難しさだけど、そうした事情を踏まえた点にSDGsの意義があるのではないかな。【イ】。
【ア】に当てはまる記述
a:SDGsには、国家の対応能力の限界が問題となるものも多いので、違反を責めるよりも、各国の自主的な取組みを国際社会が促すとともに、それをサポートする体制を作ることが重要だよね
b:良好な地球環境が経済発展を促すように、経済発展につながる要因はさまざまだよね。SDGsが経済発展によって貧困からの脱却を図ることに専念した目標である以上、経済発展を促進するための包括的な取組みが不可欠だよね
【イ】に当てはまる記述
c:SDGsの目標の多くは先進国ではすでに達成されており、貧困など多くの問題を抱えている途上国を対象に目標を設定したものだから、ターゲットを絞ることで達成しやすい目標を設定したのだと思うよ
d:SDGsは、各国にそれぞれ優先すべき課題があることを踏まえて、できるところから目標を追求できる仕組みを作ったことが重要だよね。包括的な目標を示し、達成方法を各国に委ねたのはそのためだと思うよ
1:ア-a イ-c
2:ア-a イ-d
3:ア-b イ-c
4:ア-b イ-d
[正解は2]
大学入試センターによると、2023年の志願者数は51万2581人(うち現役生が43万6873人)。志願者は前年(53万367人)と比べて1万7786人減った。