訓練中のイギリス軍の主力戦車「チャレンジャー2」。
Finnbarr Webster/Getty Images
- イギリスは、ウクライナに主力戦車「チャレンジャー2」を提供すると述べた。
- このパワフルな戦車は、ロシアのどの戦車よりも優れていると専門家がInsiderに語っている。
- しかし、より重要なのは、この動きをきっかけに他の西側諸国もウクライナに戦車を提供するようになる可能性が高まることかもしれない。
BBCによると、イギリスのリシ・スナク首相は2023年1月14日、ウクライナに主力戦車「チャレンジャー2」を提供すると述べた。西側諸国がこれほどパワフルな戦車をウクライナに送るのは初めてのことだ。
ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領はイギリスに謝意を表明し、このことは「戦場で我々を強化するだけでなく、他のパートナーに正しいメッセージを送ることになる」と述べた。また、イギリスの支援は「一貫して強力」であったが「今や揺るぎないもの」になったと付け加えた。
最初に提供されるのは約12台で、一個中隊の装備としては十分だが、ウクライナが要求している数百台の戦車にははるかに及ばないということをイギリスは理解しているという。
専門家がInsiderに語ったところによると、この戦車はロシアのどの戦車よりも優れており、戦場でロシア軍に大きな打撃を与えることができるだろうとも報じられている。
しかし、退役軍人でリスク・インテリジェンス企業シビライン(Sibylline)のCEOであるジャスティン・クランプ(Justin Crump)によると、戦車は十分な数をそろえないと効果が得られないため、チャレンジャー2をわずかばかり配備しただけでは「形だけのジェスチャー」にしかならないという。
しかし、より重要なのは、この動きをきっかけに他の西側諸国もウクライナに戦車を提供するようになる可能性が高まることだとクランプは考えている。特に、ヨーロッパ諸国ですでに使われているドイツ製の量産型戦車「レオパルト2」が提供されることになりそうだという。
「レオパルトは1対1の対戦では(チャレンジャー2に)劣るが、10台のチャレンジャー2より400台のレオパルト2の方が効果的だと思う」とクランプは述べた。
ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領は1月11日、ウクライナにレオパルトを提供する計画だと述べた。ただし、この戦車はドイツで製造されているので再輸出に規制がかけられており、計画を実行するにはドイツの許可が必要になる。ドイツのロベルト・ハーベック副首相は1月12日、ポーランドの計画を妨げるつもりはないと述べ、ドイツもその計画に追随するかを検討しているところだと報じられた。
チャレンジャー2はロシアの戦車よりはるかに優れている
パワフルなチャレンジャー2の能力は、ソビエト時代の「T-72」といったロシアの主力戦車をはるかに超えるという。「チャレンジャー2は、ウクライナでやるべきことができるように設計されている」と、戦車を操作した経験のあるクランプは言う。
「冷戦時代に設計されたチャレンジャー2、レオパルト2、アメリカ製のM1エイブラムスなどはすべて、ロシア製の戦車の能力を大幅に超えるように設計されている」
チャレンジャー2は車体長約8.2メートル、全高約2.4メートル、重量62.5トンで、1200BHP(制動馬力)のV型12気筒ディーゼルエンジンを搭載している。
訓練中のイギリス軍の主力戦車「チャレンジャー2」。
Finnbarr Webster/Getty Images
火力に関しては、3門の砲を装備している。主砲は55口径120mmライフル砲で、対戦車弾や高火力の粘着榴弾弾を発射できる。クランプによると、これはやや軽量の戦車や陣地壕などを破壊するためのものだという。
あとの2つの装備はチェーンガンとハッチ用マシンガンだ。
クランプはチャレンジャー2の射撃統制システムは驚くほど正確だと述べている。特に2キロメートル以内の攻撃は正確で、必要であればもっと遠くのターゲットまで狙うことができる。
1991年の第一次湾岸戦争では、イギリス軍のチャレンジャーが約5000メートル先のイラク軍戦車にミサイルを着弾させ、戦車対戦車の攻撃距離として史上最長を記録した。
チャレンジャー2は、レーザー距離計を用いて風や気温、目標車両の進行方向などさまざまな要素について考慮しながら砲を調整し、ターゲットに向けて発射する。
他にも熱探知カメラで夜間でもターゲットを追跡することができ、指揮官席に設置されたペリスコープで360度の視界が確保されている。
チャレンジャー2の装甲はロシアのT-72の直撃にも耐えられる
チャレンジャー2には指揮官と砲手を含む4人の乗員が搭乗できる。砲手と指揮官が同時に別々の標的を追うことができる「ハンターキラー能力」と呼ばれる照準システムを搭載している。
この戦車はチョバム装甲(別名ドーチェスター装甲)で守られていることにより、いっそう強固なものとなっている。クランプによると、これは世界有数の優れた装甲だという。この装甲の材質について、正確な組成はトップシークレットとなっているが、ロシアのT-72の直撃にも耐えられるとテレグラフが報じている。
クランプの経験上、外国の指揮官がこの戦車について最も感銘を受けていたのは、効率的なサスペンションシステムであり、他の戦車では通るのが難しい地形でも簡単に走行できたことだったという。
クランプが気に入った機能は、戦車の電源システムから切り離されても作動する大型の電気ケトルだった。これで兵士は温かい飲み物やレトルトの食事を用意することができる。