アメリカの郵政公社USPSのEV宅配車両。「Next Generation Delivery Vehicle」(NGDV)と呼ばれている。Oshkosh社が製造を担当。USPSは2022年12月、2028年まで6万6000台以上のEVを配備し、少なくとも4万5000台がバッテリーEVになると発表している。
撮影:Business Insider Japan
EV(電気自動車)が身近なものになる中で、物流を支える商用車の電動化が世界でどう進むのかは、自動車産業を見る上で大きなポイントだ。
矢野経済研究所が1月13日に発表した調査では、2023年以降、急激に拡大するとの見通しを示している。
電動化比率を示した興味深いグラフは以下の通りだ。
赤枠部分は編集部による加工。
出典:矢野経済研究所のプレスリリース「電動商用車の世界市場に関する調査を実施(2022年)」より
矢野経済研究所によると、世界の商用車全体の販売台数は2022年、2305万台となる見通し。サプライチェーンの混乱による生産遅れなどが影響し、2020年水準を下回る数字だ。
一方、電動商用車(ここでは、ハイブリッド、PHV、電気自動車、燃料電池車まで含む)全体は2022年も販売台数が伸び続けており、2021年までは1%前後だった電動化比率は、2022年は一気に3.7%にまでシェア拡大が進む見込みだ。
同研究所では、内燃機関車と電動車の価格差が同等になる仮定の「アグレッシブ予測」と、バッテリー価格や積載量、航続距離などの課題が残ったと仮定する「コンサバティブ予測」の2つの予測を示している。
このうち、拡大傾向を保守的に見たコンサバティブ予測でも、2025年に商用EVは全世界の商用車販売台数の10%に達する。背景には、「環境問題、企業の社会的責任という観点からも、電動車の普及は今後も促進されるとみられ、BEVを中心に電動商用車の販売台数は増加していく」(プレスリリースより)という、社会的な要請がある。
ただ、商用車のEV化に関しては、各国で温度差がありそうだ。
同研究所では、その牽引役となるのは「欧州と中国を中心に市場を形成していく見通し」だとする。とりわけ欧州はロシアによるウクライナ侵攻の影響からエネルギー危機の懸念がくすぶり続けているが、今のところ、積極的なEV化を進めようとす方針は堅持している。
商用車におけるEV化は、1月初旬にラスベガスで開催されたCES2023の展示でもわかるように、バッテリーEV(BEV)一辺倒にはおそらくならない。
CENNTROがCES2023で展示した小型の商用EV「LS200」。1トンの荷物を積め、最高時速は約80キロ(50マイル)。1充電あたりの航続距離は264キロ(164マイル)をうたう。
撮影:Business Insider Japan
同じくCENNTROの燃料電池車のトレーラーヘッド。
撮影:Business Insider Japan
上のCENNTRO社の展示写真を見ても、BEVと燃料電池車をそれぞれ展示するような状況がある。背景には、バッテリーのコストが高いこと、また航続距離の課題も残るため、用途によってEV化の最適解を用意するという流れになっているものと思われる。
同研究所はプレスリリースを「商用車においてもBEV一本化ではなく、長距離輸送は、HEV、FCEV、代替燃料を活用するなど、パワートレインごとの適材適所が進むとみられる」と締めくくっている。