スイスのダボスで開催される世界経済フォーラム2023を前に行われた抗議活動。2023年1月15日。
Arnd Wiegmann/Reuters
- 世界のトップ1%が、2020年以降に生まれた42兆ドルの富のうち3分の2を得たことが、イギリスの非営利団体オックスファムの報告書で明らかになった。
- 一方で、17億人以上の労働者がインフレ率が賃金上昇率を上回る国で生活している。
- オックスファムは政府に対し、富を再配分するべく、富裕層への課税を強化するように求めている。
世界各国の政府は「富裕層つぶし」の政策によって超富裕層の数を減らす必要があると、オックスファム(Oxfam)は1月16日に発表した報告書で指摘した。
イギリスを拠点とする非営利団体のオックスファムはこの報告書で、最も裕福な人々が、COVID-19のパンデミックが始まった2020年以来に創出された42兆ドル(約5380兆円)のうち3分の2を手にしたとしている。これは、残りの99%の人々が新たに蓄えることができた富の2倍だと、オックスファムはクレディスイス(Credit Suisse)のデータを引用して述べた。
ユーロスタット(Eurostat)、トレーディング・エコノミクス(Trading Economics)、コンサルタント企業のコーン・フェリー(Korn Ferry)のデータをオックスファムが分析したところ、 この格差の拡大を反映して、少なくとも17億人の労働者が賃金上昇率をインフレ率が上回る国で生活している。
オックスファムは、「より公平で合理的な世界の富の分配」に向けて、課税やその他の動きを通して、2030年までに富と富裕層の数を半減させることを提案している。
また、最も裕福な層への税率を少なくとも60%以上に恒久的に引き上げることも求めている。オックスファムは中でもキャピタルゲインの税率引き上げを各国政府に求めている。
「我々は変革のためにこれを行う必要がある。公共のサービスをより良くし、社会をより幸福に、健康にするためだ。そして気候危機に対応するため、超富裕層の非常識な排気量に対抗する解決策へ投資しなければならない」と、オックスファム・インターナショナルのエグゼクティブ・ディレクター、ガブリエラ・ブッチャー(Gabriela Bucher)は報告書の中で述べた。
経済協力開発機構(OECD)のデータをもとにしたオックスファムの分析によると、富裕層への課税は1ドルの収入に対してわずか4セントだ。
オックスファムの調査によると、裕福な人の収入の多くは不労所得で資産に対するリターンによるものだが、平均の課税率は18%で、給料や賃金に対する最高税率の半分強にすぎない。
「超富裕層への課税は、不平等を減らし民主主義を復活させるための戦略的な前提条件だ」と、ブッチャーは報告書で述べている。
オックスファムはこの報告書を、スイスのダボスで世界経済フォーラムが始まった1月16日に発表した。