世界経済フォーラムが発表した報告書によると、「インフレ圧力の緩和など楽観的な要素もあるが、見通しの多くは依然として暗い」という。
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- 世界経済フォーラムは、2023年の世界経済の見通しは「暗い」と述べた。
- ダボス会議の初日に発表されたエコノミストへの調査によると、世界的な景気後退への懸念が高まっているという。
- グーグルやドイツ銀行といった大手企業のエコノミストたちは、ヨーロッパとアメリカが最も大きな打撃を受けるだろうと述べている。
世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)が2023年1月16日からスイスのダボスで始まった。初日にはトップエコノミストの考えをまとめた「2023年1月チーフエコノミスト展望」の報告書が発表され、それによると、2023年の世界経済の見通しは「暗い」ものであり、成長は弱く、景気後退の可能性が高いとの予想が示された。
報告書は「インフレ圧力の緩和など楽観的な要素もあるが、見通しの多くは依然として暗い」とし、「経済の不確実性の継続と歴史的規模の政策課題」に言及した。
WEFが調査した22人のチーフエコノミストの3分の2近くが、2023年に世界的な景気後退が起こる可能性が高いと答え、そのうち18%が「その可能性は極めて高い」と答えている。
「世界の成長見通しは依然として活力に欠け、世界的な景気後退のリスクは高い」と報告書に記されている。
しかし回答者のうち、UBS、グーグル(Google)、マイクロソフト(Microsoft)、バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)といった金融・ビジネス大手の専門家は、2024年にかけて経済成長には大きな地域差が生じると予想している。
経済成長が「弱い」または「非常に弱い」と回答したエコノミストは、ヨーロッパに関しては全員、アメリカに関しては91%だった。一方、中東、北アフリカ、南アジア、中国、東アジア・太平洋地域では半分以下だった。また、高いインフレが生じると予想しているエコノミストは、ヨーロッパに関しては半数以上だったのに対し、中国に関してはわずか5%にとどまった。
WEFによると、これはヨーロッパにおけるエネルギー価格の高騰、金利の上昇、「需要の低迷」を反映していると考えられるという。これに対し、中国ではゼロコロナ政策が解除されたことで経済が上向きになる可能性が高い。ただし、感染者が増えれば生産活動が停滞する可能性もある。
アマゾン(Amazon)、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)、セールスフォース(Salesforce)などの企業はすでにレイオフを発表しており、WEFの報告書によると、調査に回答したエコノミストはこのような雇用削減が続くと予想している。回答者の86%が多国籍企業が運営経費を削減すると答え、78%がそれは労働者の解雇だと予想している。ほとんどの回答者は、企業がコストの上昇を顧客に転嫁するだろうとも述べている。
しかし、このような悲観的な見通しにもかかわらず、現在の世界経済における主要な懸念事項の中には、年内に弱まると考えられるものもあると、報告書で強調されている。
回答者の3分の2は、2023年末までに生活費高騰の危機的状況がそれほど深刻でなくなると予想しており、3分の2近くは年末までにエネルギー危機が改善し始めると楽観的に考えている。しかし、JPモルガン(JPMorgan)のジェイミー・ダイモン(Jamie Dimon)CEOは2022年12月、ヨーロッパのエネルギー危機は悪化し、数年間続く可能性が高いと予想している。