ルーン文字で「IDIBERUG」と刻まれた石碑。これは女性の名前だと考えられている。
Alexis Pantos/KHM, UiO
- これまで発見された中で最古と思われる「ルーン石碑」が、ノルウェーで発見された。
- ルーン文字が刻まれたこの石碑は、約2000年前のものとされる。
- スカンジナビア人は古代ローマ人と初めて接触した後にルーン文字を発展させたと思われるが、それがいつだったのかは明らかでない。
これまで発見された中で最古と思われる約2000年前の「ルーン石碑」が、ノルウェーで発見された。
この石碑は原始的なルーン文字や模様で覆われており、考古学者は紀元元年から紀元250年の間に刻まれたものだと考えている。
オスロ大学が発表したプレスリリースによると、2021年末にノルウェー東部の大きな墓地の近くで発見されたこの石碑は、他のルーン石碑と異なる点が多く、独特なものであり、謎の多いルーン文字について解明する手掛かりになるだろうとしている。
石碑の下の部分にははっきりとした文字が見えるが、他の部分は言語的な意味をなさない模様で覆われている。
Alexis Pantos/KHM, UiO
追悼あるいは文字の練習に使用された
この石碑には謎めいた模様が刻まれていて、これは他のルーン石碑とは異なる特徴だ。
「格子状の線や、小さなジグザグ模様の他にも、興味深い模様が刻まれている。すべての模様が言語的な意味を持つわけではない」とルーン学者で文字文化・図像学の教授でもあるクリステル・ツィルマー(Kristel Zilmer)はプレスリリースで述べている。
ルーン石碑(左)に刻まれた模様に、デジタル処理で線を書き加えた画像(右)。この模様はルーン文字を書く練習をしていたものと考えられる。
Alexis Pantos/KHM, UiO
この石はルーン文字を書く練習に使われた可能性がある。
「誰かがルーン文字を真似たり、研究したり、あるいは文字で遊んだりした可能性がある。もしかしたらルーン文字の彫り方を学んでいたのかもしれない」とツィルマーは述べている。
しかし、はっきりとした文字も刻まれていることで、この石に別の意味が与えられている。
それは「IDIBERUG」という文字だ。
このルーン文字は、バイキングが使っていた時代のものと比べると非常に原始的であるため、何を意味しているのか正確には分からない。
しかしプレスリリースによると、これは初期のルーン文字のスペルで「For Idibera(イディベラのために)」と記されている可能性があり、この場所に埋葬された女性あるいは家族を追悼する意味があったのかもしれない。
このルーン文字は「IDEREBUG」と刻まれており、女性を追悼していると考えられる。
Alexis Pantos/KHM, UiO
ルーン文字は古代ローマ人との初めての接触以降に発展
プレスリリースによると、ルーン文字は最初の6つの文字が「f u th a r k」であることから「フサルク(Futhark)」と呼ばれている。これがいつ誕生したのかは明らかではない。
ルーン文字はノルウェー最古の文字だ。紀元800年から1100年までスカンジナビアを支配したバイキングが使っていた文字だと思われることが多いが、考古学者によって1350年頃まで使われていたことが明らかになっている。
いつごろから使われるようになったのかは分からないが、ローマ帝国との初期の接触がきっかけになったのではないかと考えられている。
スカンジナビア人がローマ人と接触したのは、他のヨーロッパ文明よりも遅く、紀元元年から400年頃のことだった。ラテン文字に触発された古代のスカンジナビア人が、独自のアルファベットの開発を始めたのだろうとプレスリリースに記されている。
紀元500年以前に発見されたルーン石碑は、わずか30個しかない。
今回新たに見つかったルーン石碑は、発見されたスヴィンゲルド(Svingerud)遺跡の名にちなんでスヴィンゲルドスタイネン(Svingerudsteinen)と名付けられた。
石碑が見つかった火葬場から採取した炭や骨を炭素年代測定した結果、紀元300年以前のものであると判明したことから、この石碑はこれまで見つかった中で最古のルーン石碑だと考えられる。
ツィルマーは、この石碑の分析により、ルーン文字がどのように発生し、進化してきたのかについて、新たな発見があるだろうと考えている。