athima tongloom.
TikTokが新たな「ポッドキャスト」機能をテストしている。TikTokアプリがバックグラウンド状態でも、動画の音声を聴き続けられる機能だ。
普通ならTikTokを閉じれば動画はすぐに再生が止まってしまうが、この機能が実現すれば、ユーザーは動画を再生しながらスマホで別のタスクをこなせるようになる。
Insiderがこの機能の存在を初めて知ったのは、コンテンツクリエイターのエミリー・スクヴァーチ(Emily Skvarch、@future4caster)の投稿だ。動画をポッドキャストとして聴くオプションがアプリに表示され、「ポッドキャスト」というページにサムネイルが現れる。画面最上部には、「アプリをバックグラウンド状態に切り替えても音声の再生が続きます」というバナーメッセージも表示された。
Screengrab/TikTok/Sydney Bradley
「私のところには何の通知も来ませんでしたが、すごく面白いですね!」とスクヴァーチは言う。Insiderが問い合わせるまで、この機能について知らなかったという。
TikTokがポッドキャストへの参入を試みるのは、テックやメディア業界の企業がポッドキャストという音声コンテンツの世界で足場を築こうと鎬を削っているからだ。ポッドキャスト広告費は2023年には22億5000万ドル(約2880億円、1ドル=128円換算)に到達すると、Insider Intelligenceは予測している。
このほどデータ分析企業のモーニング・コンサルト(Morning Consult)が実施した調査によると、現在では多くのアメリカ人消費者が、ポッドキャストを音声ベースの媒体というより動画ベースの媒体として捉えているという。
この調査に回答した2202人のうち、46%は動画を含むポッドキャストを好むと答えており、音声のみのポッドキャストを好むと答えた42%を上回っていた。回答者の3分の1はYouTubeがお気に入りのポッドキャストアプリだと回答しており、それにSpotifyとApple Podcastsが続いた。
YouTubeがポッドキャストプラットフォームとして人気を博していることから、Spotifyなどの競合他社は動画機能を追加し、ジョー・ローガン(Joe Rogan)のようなトップクラスのポッドキャスト配信者を誘い込もうとしていると、複数の関係者がInsiderの取材に答えている。
次世代リスナーの獲得を目指すSpotifyとTikTok
Spotifyは、ここ数年でかなりの額をポッドキャストに投資しており、アンカー(Anchor)、ギムレット・メディア(Gimlet Media)、ザ・リンガー(The Ringer)などを買収したり、ジョー・ローガン、エマ・チェンバレン(Emma Chamberlain)、エイヴァ・デュヴァーネイ(Ava DuVernay)やハリー王子とメーガン妃などの著名人との独占契約やデモ契約を結んだりしている。
こうした投資戦略がSpotifyの最終利益に悪影響を及ぼしたため、Spotifyはこのほどアメリカでの新たなポッドキャストの予算を凍結したと、ブルームバーグ(Bloomberg)は報じている。
SpotifyのCEOを務めるダニエル・エク(Daniel Ek)は、2022年6月に行われたSpotifyの投資家向けイベントで次のように語っている。
「ポッドキャスト分野は依然として投資段階であり、まだ収益性は出ていません。しかし当社では、ポッドキャスト分野には40〜50%の粗利益を生み出すポテンシャルがあると考えています」
SpotifyとTikTokは、消費者向け音声分野で今後数カ月のうちに本格的な競争を繰り広げる準備をしているようだ。音楽ストリーミングの分野ではSpotifyが優勢だが、TikTokは既に新たな音楽に出会うプラットフォームとしてトップクラスの地位を築いている。
SpotifyのエクCEOは2021年11月、ブルームバーグの取材に対して、TikTokが囲い込みに成功した若年ユーザー層の獲得について、Spotifyにも「改善の余地がある」と答えている。
Spotifyはその後、TikTokのやり方を真似る形で、Spotifyのアプリ上で新たな音声コンテンツを見つけやすくするためTikTokのようなフィードをテスト的に導入したりしている。
さらにSpotifyは、TikTokの運営企業であるバイトダンス(ByteDance)が保有するオーディオストリーミングアプリと、3つのグローバル市場で競合している。なおInsiderが初報を報じたように、バイトダンスは2022年5月、ユーザーが「音楽を購入、再生、共有、ダウンロード」でき、「ポッドキャストおよびラジオ放送コンテンツ」を提供するアプリ「TikTok Music」の商標をアメリカで申請している。
TikTokは今後、Spotifyのストリーミング事業にとって大きな脅威となる可能性がある。TikTokは2022年、サウンドオン(SoundOn)という楽曲配信ツールをリリースした。また、主に自社アプリ上でリリースしているサウンド機能を手がける専門のチームも擁している。
TikTokのポッドキャストへの野心はまだ不透明だが、ポッドキャスト分野での成長を狙っているとみられる兆しは他にも複数ある。例えば、ポッドキャストのホスティングと配信のプラットフォームであるAudiomeansが2022年10月にポッドニュース(Podnews)に語ったところでは、あるボットがAudiomeansのポッドキャストフィードのデータ収集を開始しており、このボットはTikTokによるものだったという。