「ロック」の全容。
Courtesy of Stratolaunch
- ストラトローンチ・システムズが開発した「ロック」は、世界最大の飛行機だ。
- 翼幅は約117メートルで、サッカーのピッチよりも長い。
- 2023年1月13日、モハーベ砂漠で9回目のテスト飛行を終えた。
アメリカの航空宇宙企業ストラトローンチ・システムズ(Stratolaunch Systems)が開発する「ロック」は、世界最大の飛行機だ。ロケットや小型の乗り物を搭載するための母艦としての利用が想定されている
飛行中のロック。
Courtesy of Stratolaunch
ロックは、翼幅が世界最大であるだけでなく、オールコンポジットの素材で製造された飛行機としても世界最大だ。
2017年に初めて公開され、2019年に最初のテスト飛行を行った。
ロックはこれまで1機しか製造されていない。空中から軌道に打ち上げられるロケットや極超音速機を搭載する母艦機としての利用が想定されている。
アメリカ連邦航空局には「N351SL」というコード名で登録されている。
ロックは、これまでに9回のテスト飛行を行っており、最新のテストでは、カリフォルニア州南東部を6時間かけて飛行し、これまでで最長の飛行時間となった
滑走路を走るロック。
Courtesy of Stratolaunch
ストラトローンチのプレスリリースによると、9回目のテスト飛行では、1月13日にモハーベ航空宇宙空港を出発し、最高高度約7000メートルに達したという。
2023年前半にはロックに搭載された極超音速機タロン-Aが初めての極超音速飛行を行う予定だ。
ストラトローンチのザッカリー・クレバー(Zachary Krevor)CEOは「我々のすばらしいチームは予定の通り、進展を続けている」とリリースで述べ、ロックを利用した初めての極超音速飛行テストが「これまでにないほど近づいている」とした。
ロックは、その巨大さで知られている。翼幅は約117メートルで、これはサッカーのピッチよりも長い
世界最大の飛行機、ロック。
Courtesy of Stratolaunch
ロックの驚くべき大きさは、翼幅80メートルの超大型ワイドボディ機、エアバスA380さえも小さく見せる。
ロックの全長は73メートル、高さは15メートル、ペイロード(荷物の可搬量)は約230トンとなっている。滑走路は少なくとも3700メートルの長さが必要なほど巨大な飛行機だ。
ストラトローンチは、マイクロソフト(Microsoft)の共同創業者であるポール・アレン(Paul Allen)の「ロケットを確実に打ち上げられる飛行機を作りたい」との思いから設立された
ロックの全容。
Courtesy of Stratolaunch
2018年にアレンが亡くなると、サーベラス・キャピタル(Cerberus Capital)がストラトローンチを買収し、研究開発を加速させた。
ストラトローンチは、ユナイテッド航空で使われていたボーイング747-400ジャンボジェットを2機購入し、それらを解体したパーツを用いてロックを組み立てており、素材にはカーボンファイバーが用いられている。
この飛行機は、民間機の巡航高度よりも少し低い高度約9400メートルでロケットを発射できるように設計されている。他の極超音速機とは異なり、空港の滑走路を使って離着陸することになる。
2022年11月、ストラトローンチはテスト飛行に関してアメリカ空軍研究所からの支援が得られることになったと発表した。
ロックはボーイング747のエンジン6基を搭載している
飛行中のロック。
Courtesy of Stratolaunch
ロックのエンジンは、ワイドボディの民間機にも採用されているプラット&ホイットニー(Pratt & Whitney)のPW4056だ。ロックは最大3基のロケットを搭載できるように設計されている。
注目すべきは、ロックの機体が一般的な丸みを帯びたデザインのジェット機とは異なり、底面が箱のようなデザインになっていることだ。また片方の機体はデータ解析機器を搭載するためのものであり、与圧されない。
ロックは2019年に4億ドルで売りに出されたが、正式な取引は行われなかった
タロン-Aを搭載したロック。
Courtesy of Stratolaunch
CNBCが2019年6月に報じたところによると、ストラトローンチの親会社であるバルカン(Vulcan)は、アレンの死後、ロックを4億ドルで売却しようとしていた。複数の関係者によると、3社の航空宇宙企業を運営するリチャード・ブランソン(Richard Branson)と交渉していた。この件に詳しい人物によると、ブランソンは1ドルなら購入してもいいと答えたという。
CNBCは、当時の売却計画についてストラトローンチとバルカンにコメントを求めたが、返答は得られなかった。