アイスランドにあるクライムワークスの施設「オルカ」。
Climeworks
- クライムワークスは、空中から二酸化炭素を吸収する技術について第三者機関の認証を得た。
- 温室効果ガス排出量は十分なスピードで減少していないため、二酸化炭素の除去は気候変動対策としての重要性が高まってきている。
- 大気から直接回収する「DAC(Direct Air Capture)」は初期段階にあり、拡大には政府の支援が必要だ。
最新の気候危機対策の勝利は、監査という形でもたらされた。
スイスのクライムワークス(Climeworks)は2023年1月、大気から二酸化炭素を吸収して地中に蓄積させる同社の新技術が第三者機関によって初めて認証され、ひとつの成果を収めた。
同社の気候ポリシー部長を務めるクリストフ・ベウトラー(Christoph Beuttler)は、大気から二酸化炭素を直接回収するというまだ初期段階の「DAC(Direct Air Capture)」という技術において、この認証は大きな前進をもたらしたと語った。
アイスランドにある施設は、ストライプ(Stripe)、マイクロソフト(Microsoft)、ショッピファイ(Shopify)などの顧客に炭素除去を提供しており、DACでは唯一稼働中の商用施設だとベウトラーはInsiderに話した。実証された科学的方法を開示することで業界がスケールアップする道筋をつけることができるという。
「何トンの二酸化炭素を除去できたのかを合意することが、非常に重要だ」と彼は話した。森林への植樹など、排出量を削減するさまざまな手段があり、共通の測定方法を確立することが必要不可欠だ。
「クライムワークスが除去した多くの二酸化炭素は、植林とは同じではないため、基準が必要だ。植林した木は燃焼したり、分解したりするかもしれない。我々が行っているように1000年単位ではなく、1000年どころか100年ももたないかもしれない」
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、国や企業が2050年までに温室効果ガスの排出量を半減させることができないため、二酸化炭素の除去が気候危機の解決に重要な役割を果たすとしている。除去しなければ、地球への壊滅的な影響を防ぐために気温の上昇を産業革命前のプラス1.5度に抑えるというパリ協定の目標を達成するのは事実上不可能だ。
植樹をしたり、湿地帯を復元させたりすると二酸化炭素を吸収するが、地球上には十分な広さがないため、自然は唯一の解決策にはできないことを科学者が明らかにした。そこで、DACが注目されている。その技術は1980年代の太陽光や風力発電技術のようなものだとベウトラーは述べている。
オックスフォード大学によるこの種のものでは初めてとなる報告書によると、毎年約20億トンの二酸化炭素が大気から除去されているが、そのほとんどは森林によるものだという。DACのような新しい技術はその数分の一にすぎず、気候変動対策の目標達成に貢献するためには、2050年までにその数百倍もの二酸化炭素を除去する必要がある。
グローバル・カーボン・プロジェクトの調査によると、2022年に世界で排出された二酸化炭素は405億トンに増加した。
「今後10年で新しい展開があれば、今世紀後半には目標達成が可能になる。つまり、次の10年間がとても重要だ」と報告書の共同著者でウィスコンシン大学マディソン校のグレゴリー・ネメ(Gregory Nemet)教授は記者会見で語った。
クライムワークスは、アイスランドの施設は4000トンの二酸化炭素を回収できる能力があると、Insiderに話した。同社はその10倍の能力を有する施設を、2024年までに建設したい考えだ。同社では、ファンを使って空気を吸い込んでフィルターで二酸化炭素を回収し、CarbFix社と共同で二酸化炭素を地中の岩石層に閉じ込める手法をとっている。
アイスランドにあるクライムワークスの施設で、鉱物化された二酸化炭素。
Climeworks
ベウトラーは同社が大量の二酸化炭素を除去する価格を下げるためには、さらなる政府の支援が必要だと述べている。同社は企業と合意した除去価格について開示していない。国際エネルギー機関(IEA)は、市場価格を1トンあたり600ドルから1000ドルだとしている。
「マイクロソフト、スイス・リー(Swiss Re)など、我々の法人クライアントはいずれも素晴らしいが、十分な除去を達成するためには石油やガス業界ほどの規模に拡大しなければならない。政府にこれらの技術を購入してもらうことが必要だ」とベウトラーは語った。
アメリカでは、インフレ抑制法によって、投資家を惹きつけるために二酸化炭素永久除去の税額控除を1トン180ドルに引き上げ、エネルギー省は5年で35億ドルを投じて、4つの大規模なDAC施設を作る計画だ。欧州委員会は独自の計画の準備を進めているが、他に二酸化炭素除去の拡大計画を進めている国はほとんどない。