森ビルの辻慎吾社長。(2023年1月24日)
撮影:吉川慧
森ビルが東京・港区で進めるプロジェクト「虎ノ門ヒルズ」が2023年秋に“完成”を迎える。森ビルの辻慎吾社長は1月24日の記者発表会で、今年7月に竣工する虎ノ門ヒルズで4棟目となる超高層ビル「ステーションタワー」(高さ約266メートル)を今秋に開業すると発表した。
虎ノ門ヒルズ全景現況写真。2023年1月12日撮影
森ビル提供
虎ノ門ヒルズは2014年5月竣工の森タワーを起点に、ビジネスタワー(2020年1月竣工)、レジデンシャルタワー(2022年1月竣工)と段階的に拡大してきた。今年7月にはステーションタワーが竣工し、秋に開業を予定する。
虎ノ門ヒルズは東京メトロ日比谷線の虎ノ門ヒルズ駅とも直結し、オフィス、住宅、ホテル、商業施設、情報発信拠点が入居。新たなビルの竣工で、虎ノ門ヒルズの延床面積は20年前に開業した「六本木ヒルズ」に匹敵する約80万平方メートルになる。超高層ビル4棟は地上2階部分のデッキで結ばれる。
「森ビルは集中したエリアに特化して、港区で事業を続けている。(六本木ヒルズ・虎ノ門ヒルズなどの)“ヒルズ”がつながっていくことで、このエリアが評価をされてきた。都市としてかなり強い磁力を持つようになってきた。それぞれが互いを補い、相乗効果で街全体を良くしていきたい。ヒルズの連なりの中で、エリアが強くなっていく」(辻氏)
森ビルの戦略エリア図。
撮影:吉川慧
辻氏は「都市再開発事業としては異例の約9年というスピードで拡大・進化を続けてきた。いよいよ一つの街、“ヒルズ”になる」とした上で、「グローバルプレイヤーが惹きつけるグローバルビジネスセンター」としての虎ノ門ヒルズの魅力に自信を見せた。
歩行者デッキ(愛称「T-デッキ」)現況写真(2023年1月12日撮影)
森ビル提供
「虎ノ門ヒルズ」エリアの開発は、戦後60年以上にわたって開発が難航した「マッカーサー道路」と呼ばれた「環状2号線」の開発と一体となって進められてきた。
環状2号線はトンネル化され、2022年12月に全面開通。その上に森タワーが建てられた。環状2号線の全面開通で羽田空港と都心部の交通アクセスが向上。虎ノ門ヒルズには空港リムジンバスや都心部、臨海部を結ぶBRTが発着するバスターミナルが整備された。
こうした経緯を振り返り、辻氏は「虎ノ門ヒルズプロジェクトの特徴は、単なるビルの建て替えではなく、かつてない大規模な都市インフラと一体となって再開発を実現したことにある」と語った。
虎ノ門ヒルズ配置図
虎ノ門ヒルズ配置図
質疑応答の中でも、辻氏は東京都心部の再開発の意義をこう語った。
「世界との都市間競争にどうやっていくのかを考えてきた。その森ビルの答えが六本木ヒルズであり、虎ノ門ヒルズであり、麻布台ヒルズ(今秋開業予定)だ」
「東京は、世界中からヒト・モノ・カネ・情報を惹きつける磁力のある都市でなければならない。オフィスだけでなく住宅、ホテル、商業施設や緑地空間などグローバルプレイヤーが求める都市機能を徒歩圏にコンパクトに集積させることが必要だ」
「オフィスの供給量過多ではないのか」という質問には、自社の調査データを元に否定した。
撮影:吉川慧
一方で、質疑応答では人員削減が続く外資系企業が森ビルのテナントとして入っていることから、今後の展望について報道陣から問われる場面もあった。これに対し、辻社長は以下のように語った。
「森ビルはGAFAの3つがテナントさん。特に外資系に強いデベロッパーではある。アメリカの金利の上昇、景気後退が注目されているが我々も注目している。IT系も含めて外資系企業の○人削減というニュースもあるが、コロナ禍でものすごい人を増やしていた。それで例えば1万人削減といっても、以前より規模は膨らんでいる」
「今は投資を抑えたり人を削減しているが、今まで成長してきたように、これからも成長していくと捉えている。IT系企業の方々をみると、最初より何倍も拡大している。生で見ていて、とても強いと感じている。長い目で見たらまだまだこれからも成長していくと見ている。だからこそ東京が強くないと、海外から色々なものが入ってこないと東京は減っていくだけだ」