アメリカと日本向けにクラウドファンディングで展開されていた「Float Run」が正式製品として登場した。
撮影:小林優多郎
ソニーは1月24日、オープンイヤー型の新しいイヤホン「Float Run」(フロートラン)の正式発売を発表した。
実売価格は2万円前後(税込)で、発売日は2月3日を予定している。
ソニーとしては、ランニングなどのアクティビティー用途やテレワークなどでの「ながら作業」に適した製品としてリリースする。
開放型ながら大型ドライバーで音質を確保
製品版のパッケージ。プラスチックフリー梱包になっている。
撮影:小林優多郎
Float Runはソニーが2021年11月にクラウドファンディング「Indiegogo」で公開し、目標300台出荷に対して、開始から5時間で達成した製品(出荷は2022年9月以降)。
今回はその製品版にあたり、外箱以外の仕様の違いはない。
Float Runの本体。カラーバリエーションはブラックのみ。対応コーデックはSBCとAAC。各種簡易接続機能(Googleの「Fast Pair」、Windowsの「Swift Pair」)には非対応。
撮影:小林優多郎
最大の特徴はオープンイヤー型=開放型イヤホンであるという点。
イヤホンにはさまざまな種類があるが、一般的なのは耳栓のごとく耳を塞ぐ密閉型(カナル型)、密閉までいかないが耳に引っ掛けるインナーイヤー型がある。
Float Runは開放型なので、耳をふさがない。耳の至近距離にスピーカーがあり、周囲の音と一緒に音楽が聴ける。
開放型にはFloat Runのようなタイプのほかに、昨今では骨伝導式の製品(Shokzシリーズなど)や、ソニー自身が過去にリリースしている音導管設計のもの(Xperia Ear Duoなど)がある。
充電端子はUSB Type-C。ケーブルのみ付属する。連続音楽再生時間は最大10時間(公称値)。
撮影:小林優多郎
開放型の利点は、外音を自然に取り込め、通気性がよく比較的長時間の利用も苦にならない点がある。
さらに、Float Runの場合は16mmドライバーという比較的大きな振動板を採用しているため、かなり広がりのある音を楽しめる。
スピーカーが耳元で浮いている感覚
装着すると耳の後ろとバンドでバランスが取れる。
撮影:小林優多郎
実際に装着してみると、その軽さと聴ける音楽体験がかなり好印象だ。
ソニーで外音取り込み&軽量というと、直近では2022年2月に発売されたワイヤレスイヤホン「LinkBuds」を思い出す。
LinkBudsは振動板に穴を開けて周囲の音を取り込むというユニークな製品だったが、装着方式としてはインナーイヤー型に近かった。
後ろから見ると白いスピーカー部分が「浮いている」のがわかる。
撮影:小林優多郎
一方、Float Runは耳元にスピーカーを浮かせる感覚だ。ほとんどの設置面は頭の側面や耳の後ろにあるため、圧迫感がゼロに近い。
最初は、きちんと位置を固定できるか不安に思ったが、バッテリーや基板を含む重さがある部分が耳の後ろに配置されており、自然にバランスが取れるようになっている。
満員電車レベルに近づかないと音漏れの心配なし
周りの音を聞き逃さない、圧迫感がないことが開放型のメリットだが、密閉空間ではやや「音漏れ」がする。
出典:ソニー
気になるのは、「音漏れ」だろう。音漏れするか、しないかで言えば「する」。
ただし、装着した人にかなり近づかないとわからない程度ではある。もう少し具体的にいうと、比較的狭い空間で、肩と肩がくっつくほど近づいてようやく聞こえるといったイメージだ(音量や聞いている音楽にもよるだろうが)。
満員電車などでの利用はやや周囲が気になるといった感覚だが、本製品の利用イメージである屋外でのランニングや家での「ながら作業」に利用する分には、特に問題ないだろう。
むしろ、比較的大型の振動板が耳の外にあるのにここまで漏れない、ということにビックリする。
これに対し、ソニーの担当者は「なるべくスピーカーを耳元に近づけることで、音漏れの低減と音質向上を測っている」としている。
マイクの非力さはやや気になる
IPX4相当の防滴性能を持ち、多少の汗が付着しても問題ない。
出典:ソニー
気になった点は密閉型などに比べ、まだ量産体制に差があるのかカラーバリエーションがブラックしかない点。加えて、マイクは1つしかなく、性能としてはあまり良くない点が挙げられる。
特に後者は、通話やテレビ会議などで使うには、ややスペック不足感が否めない。「通話できない」というほどではないが、AI技術などを搭載した他のソニー製品などに比べると不鮮明になる。
これはもともとのコンセプトが「スポーツギア」であることを踏まえると、違和感のある仕様とは言えない。ただ、ハイブリットワークが普及する昨今に合わせて、製品版で改良しても良かったのでは、という気にはなる。
とはいえ、周りから声のかけられやすい職場や家で仕事をしつつ、ラジオや好きな音楽を楽しむにはピッタリの端末ではある。ランニングなどの運動をしないという人も検討の余地はある。