パタゴニア50周年の新作は「かなり地味?」素材に込めたメッセージとは

新作の服

パタゴニアの2023年春夏の新作がお披露目された。中央は「Funhoggers Anorak」(税込み2万900円)。

撮影:横山耕太郎

パタゴニアは1月25日、2023年春夏の新商品を報道関係者らにお披露目した。

1973年創業のパタゴニアにとって、今年は創業50周年の記念イヤーという。

だが新作として並んだ商品は、ぱっと見ただけでは、これまでの商品とあまり代わり映えしない印象を受ける。

しかしその「地味さ」にこそ、グローバル企業として環境保全に対する取り組みを牽引してきたパタゴニアの姿勢が象徴されていた。

オーガニックコットンの「手前」を支援

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パタゴニアはオーガニック・コットンの生産を支援するとうたう。

撮影:横山耕太郎

服

コットン・イン・コンバージョンを使用した「Funhoggers Anorak」(税込:2万900円)。

撮影:横山耕太郎

50周年の新商品として新たに投入するフード付きアウター「Funhoggers Anorak(ファンホガーズ・アノラック)」の特徴は、「コットン・イン・コンバージョン(移行期間中の綿)」という素材を使用していること。

パタゴニアでは1996年から、使用する全ての綿について、オーガニック(有機栽培)認定を受けた農場で生産された素材を使っている。ただ、オーガニック農場の認定を受けるには、化学肥料などの使用を中止してから3年の移行期間が必要とされる。

その期間中はオーガニック・コットンと名乗ることができないため、パタゴニアでは綿農家を支援することを目的に、数年前からオーガニック栽培へ移行期間中の綿「コットン・イン・コンバージョン」を使用してきたという。

25年以上前からオーガニックに切り替え

服

中央は「Funhoggers Anorak」の別カラー。ユニセックスでサイズはXSからXLまで展開する。

撮影:横山耕太郎

2023年春夏の新作では、このコットン・イン・コンバージョンを大々的に使用した製品を発表した。

「今では当たり前のように衣類に使われるようにオーガニック・コットンですが、パタゴニアは25年以上前に切り替えています。切り替えた当時は、まだオーガニック・コットンが広く認知されている時代ではなかったと思います

パタゴニア日本支社・マーケティング担当の小林優子氏はそう話す。

「今回使っているコットン・イン・コンバージョンなどの素材も、広がっていけばと思っています」(小林氏)

人気の定番も「あえてコットンで」

人気の定番商品のショートパンツ「バギーズ」は、これまで化学繊維を使用していたが、2023年春夏の新作として、コットン・イン・コンバージョンを使った商品も展開する。

化学繊維を使用した従来製品が税込8250円なのに対し、コットン・イン・コンバージョンを使った商品は同1万450円と少し高い。

機能だけをみれば、化学繊維を使っている従来製品の方が乾きやすさなどの面で上回っている。ただ、消費者の環境への関心は高まっているという。

「特に若い世代などで、以前よりも、値段が高くても環境への負荷が少ないものを買いたいという意識が増しているように感じています」(小林氏)

ショートパンツ

コットン・イン・コンバージョンをつ使用した、男性向けの「Funhoggers Shorts」(税込1万450円)

撮影:横山耕太郎

パンツ

定番の化学繊維を使っているショートパンツ。手触りはコットン製とは全く違う。

撮影:横山耕太郎

オーガニック最高水準の素材も

またオーガニックの最高水準である「リジェネラティブ・オーガニック・サーティファイド・コットン」を使用した新作も発売する。

この素材は、畑の土を耕さず、綿以外の作物を周期的に栽培するなど、土壌を改善しながら行う方法で生産された綿を指すという。

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撮影:横山耕太郎

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リジェネラティブ・オーガニック・サーティファイド・コットンを使ったシャツ(税込み7480円)。

撮影:横山耕太郎

50年を祝うだけの限定品は作らない

アメリカに本社を置くパタゴニアは2022年9月、創業者のイヴォン・シュイナード氏が、彼と家族が保有していたパタゴニアの株式を、環境保護に取り組むNPOと新設するトラストに譲渡した。

この決定により毎年約1億ドル(約130億円)という株式配当金が、環境保全に使われることになり、世界を驚かせた。

今回発表された一見すると「地味」に見える新商品も、この流れを汲んで、環境負荷を意識した素材に振り切った結果と言えるだろう

看板

新作展示会の入り口には、株式を譲渡した創業者イヴォン・シュイナードの言葉が掲げられていた。

撮影:横山耕太郎

「私たち日本のスタッフも今回の新作を見たときに『こう来たか』と思いました(笑)。50周年の限定品を作れば、トレンド好きな消費者には受けるかもしれません。でも、もともとトレンドだけを狙った商品は出さないという方針がありました。

むしろ今回の新作は、次の50年をどうするのかという姿勢を示した製品だと言えると思います」(小林氏)

今回お披露目された2023年の新作は、2023年2月末から、ネットや店頭での販売を始める予定だという。

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