オラクル(Oracle)エグゼクティブバイスプレジデントのドン・ジョンソン氏。
Oracle
(※1月31日、Insiderは最新の社内組織図を入手。本文の一部を更新して公開します)
オラクル・クラウド・インフラストラクチャ(Oracle Cloud Infrastructure、OCI)の元責任者で、ラリー・エリソン会長兼最高技術責任者(CTO)が共同最高経営責任者(Co-CEO)候補として名前を挙げていた時期もある有力経営幹部のドン・ジョンソン氏が、突如として現在のポストを離れることが決まった。
内情に詳しい関係者2人がInsiderに証言した。
ジョンソンの直近の役職は、オラクル・ヘルス(Oracle Health)部門のエンジニアリング担当エグゼクティブバイスプレジデント。同部門は、オラクルが2021年に283億ドル(約3兆2000億円)を投じて米医療情報技術のサーナー(Cerner)を買収した後、最重要事業と位置づけるヘルスケア分野の取り組みを担っている。
今回の突然の人事は何を意味するのか。
少なくとも言えるのは、ジョンソン氏にはエリソン会長に請われ、重要な役職を離れて別の新たな重責を担った前例があるということだ。
ジョンソン氏はアマゾン・ウェブ・サービス(Amazon Web Services、AWS)のプリンシパルエンジニアを経て2014年にオラクル入社。2018年にはエリソン会長の信任を得て、同社が新たな中核組織と位置づけるオラクル・クラウド・インフラストラクチャ(Oracle Cloud Infrastructure、OCI)の責任者に抜擢された。
OCIは、急成長中で利益率の高いクラウドコンピューティング事業に参入し、AWSやマイクロソフト・アジュール(Microsoft Azure)など強力な競合相手を打ち負かす基盤として設立された部門だ。
ジョンソン氏は瞬(またた)く間にオラクルのクラウド進出の旗振り役となり、マーク・ハード共同CEO(当時)の死去直前、2019年9月に病気治療のため休職すると、エリソン会長は次期共同CEO候補としてジョンソン氏を指名した。
だが結局、エリソン会長はサフラ・カッツ共同CEOがそのまま単独でCEOを務める選択肢を取った。
2020年6月、ジョンソン氏はInsiderが当時の取材過程で確認した社内メールで「より幅広いクラウド分野全体に関わるミッションに専念」するため、OCIの責任者を離れて新たなポジションに移ることを伝えた。
後任には、ジョンソン氏が自ら採用したアマゾン出身のソフトウェアエンジニアで当時バイスプレジデントだったクレイ・マグワイク氏(現在はエグゼクティブバイスプレジデント)を据えている。
それから半年が過ぎた2020年12月、ジョンソン氏は「オラクル・クラウド・プラットフォーム&AIサービス」なる新組織のトップに就任した。
Insiderが独自に確認した組織改編に関する社内メールで、新組織は従業員向けに次のように説明されていた。
「注意してほしいのは、新組織はOCIの延長上にあり、別組織ではないということだ。全体会議、製品ロードマップ、定期ミーティングなど、OCIとは今後も一体的に活動する。大きな1つのチームであり、カルチャーも共通だ」
ただし、ジョンソン氏は新組織に移った後もOCIに所属するスタッフのリーダーであり続けた。2022年8月にInsiderが確認したオラクルの社内組織図によれば、ジョンソン氏はその時点でもOCI全スタッフの約3分の1(約1200人)を統括していた。
Insiderが独自入手した資料に基づくオラクルの社内組織図の抜粋(クラウド事業の経営幹部)。2022年8月時点で、ジョンソン氏はクラウド最高技術責任者(CTO)としてOCIの一部を管轄している。
Tien Le; Taylor Tyson/Insider
そしてさらにその1年後、ジョンソン氏はオラクル・クラウド・プラットフォーム&AIサービスの責任者でもなくなった。
2022年1月の社内向けメールで、ジョンソン氏は同社のコア事業としての位置づけに格上げされたヘルスケア分野の取り組みについてエリソン会長に助言するポジションに移ることを明かし、引き続き社内のさまざまなプロジェクトをサポートしつつも、可能な限り「コンピューターの画面から離れて」直接実務に携わる仕事は減らすと述べている。
そうした一連の流れはつながっていたようで、オラクルが2022年6月に同社が医療情報技術のサーナー買収を発表すると、ジョンソン氏は冒頭で触れたように、同社のヘルスケア事業を統合した部門「オラクル・ヘルス」のアプリケーションおよびプラットフォームエンジニアリングを担当することになった。
それからわずか半年後、リンクトイン(LinkedIn)のプロフィールはエグゼクティブバイスプレジデントのままで変わりないものの、ジョンソン氏は新たなそのヘルスケア関連のポジションまで離れる模様だ。
これまで繰り返されたように、社内のより重要で大きな任務を担当することになるのか、それともついにオラクルを離れる日が来るのか、現時点では具体的な情報がない。
以下に、Insiderが独自入手した資料から、最新(1月31日時点)の技術系経営幹部の顔ぶれを紹介しておこう。
オラクルの技術系経営幹部の顔ぶれ。1月31日時点で、エグゼクティブバイスプレジデント職であるはずのドン・ジョンソンの名前はすでに見当たらない。
Insider
Insiderはオラクルの広報担当にコメントを求めたが得られなかった。ジョンソン氏に直接確認することもまだできていない。