森喜朗・元首相(2021年2月12日)
Yoshikazu Tsuno/Pool via REUTERS
森喜朗元首相が1月25日、ロシアのウクライナ侵略をめぐり「こんなにウクライナに力入れちゃっていいのかな」などと、日本政府が推進するウクライナ支援や対露制裁の外交姿勢を疑問視する持論を展開した。
同日夜、都内で開かれた日印協会創立120周年記念レセプションでの挨拶での発言だった。森氏はプーチン大統領と親交を深めてきたことで知られる。
朝日新聞やテレビ朝日によると、森氏は日本とロシアとの関係について「せっかく積み立ててここまできているのに、こんなにウクライナに力入れちゃっていいのかな」「どっちかが勝つ負けるっていう問題じゃない。ロシアが負けるってことはまず考えられない。そういう事態になればもっと大変なことが起きる。そういうときに日本がやっぱり大事な役割をしなきゃならん。それが日本の仕事だと思います」などと主張したという。
日本を含む国際社会は、ウクライナの主権と領土を侵害するロシアの侵略を強く非難している。
国連総会は2022年10月、ロシアがウクライナの4つの州を一方的に「併合」すると決定したことについて、国際法に反する違法な試みだとして撤回を求める決議案を賛成多数(賛成143、反対5[ベラルーシ、北朝鮮、ニカラグア、ロシア、シリア]、棄権35)で採択。ロシアに対してウクライナ領内から直ちに軍を撤退するように要求するとともに、すべての国と国際機関に対してロシアの行動を認めないように要請している。
直近ではイギリス、ドイツ、アメリカがウクライナに主力戦車を供与することを決定した。
2013年2月21日、モスクワのクレムリンで開かれた森喜朗元首相とロシアのプーチン大統領の会談。
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木原誠二・官房副長官は26日午前の記者会見で森氏の発言への受け止めを問われると、「発言は承知している。逐一、政府としてコメントすることは差し控えたい」とした上で、以下のように述べた。
「ロシアによるウクライナ侵略は、まさに国際社会が長きに渡って懸命な努力と犠牲での上に築き上げてきた国際秩序の根幹を脅かす、まさに暴挙であり、平和秩序を守り抜くため、G7をはじめとする国際社会が結束して、引き続き断固たる決意で対応することが重要だと思う。我が国としてはG7をはじめとする国際社会と連携しつつ、引き続き対露制裁、ウクライナ支援を強力に推進していく」(木原誠二・官房副長官)