欧州市場は中国への投資が一因となってアメリカ市場をアウトパフォームしていると、ある専門家は話している。
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中国のゼロコロナ政策の終了とそれに続く同国の経済再開は、間違いなく2023年最大の市場への追い風であり、投資家はこのニュースを歓迎している。しかし、米ヘッジファンド運用会社ワイス・マルチストラテジー・アドバイザーズ(Weiss Multi-Strategy Advisers)の副最高投資責任者(DCIO)であるマイク・エドワーズ(Mike Edwards)氏は、中国経済の再開が株式市場にどれだけの恩恵をもたらすのか、市場はまだ理解していないと考えている。
「中国経済の再開に対しては、その度合いと確実性の両方について懸念が存在している」と、エドワーズ氏は1月24日に配信された「コントラリアン・インベスター・ポッドキャスト(The Contrarian Investor Podcast)」で語り、市場はこのニュースを十分に織り込んでいないようだと付け加えた。
「他の国々でデフレが進行する中で、我々は中国を対抗勢力として注目し始めている」と同氏は続けた。
「金融、財政、規制など、考えられるあらゆる政策の観点から、ほとんどの先進国の中央銀行が意図的に引き締めを行っているか、その方向へと圧力をかけている。そのような状況の中で、中国は緩和的な政策を取り、成長とアニマルスピリット(野心的な意欲)を生み出そうとしている」
中国の規制緩和は皆に利益をもたらす
中国のロックダウンは同国の経済に大きな打撃を与えたが、エドワーズ氏はその後の完全な「政策転換」の影響は国境を越えて広がっていると考えている。彼は、配車アプリ「DiDi」が中国のアプリストアに戻ってきたことを、近年アリババをはじめとする巨大企業を苦しめてきた同国のIT規制強化が緩む兆しだと指摘した。
「これらは、中国が政策転換によって加速する兆候だ。この政策転換が不発に終わるのかどうかを慎重に見極めている状況ではない」と彼は説明した。
エドワーズ氏によると、このニュースを生かしている地域がヨーロッパだ。2023年に入ってから、ヨーロッパがアメリカを上回るパフォーマンスを示しているのは、中国経済に多く投資していることが一因だという。
「中国から見ると、この状況は拡大することができると考えるだろう。アメリカよりヨーロッパを優先することには価値がある」
またエドワーズ氏は、中国の厳しいロックダウンによって強いペントアップ(繰越)需要が生まれており、貯蓄を使いたいという消費者の欲求が高まっていると語り、この傾向は長く続く可能性があると強調した。「中国の旅行、サービス需要の復活は一過性のものではないと考えている」と彼は話す。
中国への長期的な投資について
エドワーズ氏は、中国の地政学的情勢や不動産セクターの苦境、アメリカが生産拠点を国内に戻そうとしていることなどを考慮すると、数年単位の期間に焦点を当てた投資では、アメリカの投資家にとって中国市場は投資対象にならない可能性があると警告する。また、中国の人口は60年ぶりに公式に減少しており、これは今後数十年間にわたって財政上の大きな脅威となる可能性がある。
エドワーズ氏はそれでもなお、人工知能や量子コンピューティングなど、中国の最先端技術の革新は、世界の情報セキュリティの取り組みに大きな利益をもたらす可能性があると指摘する。エドワーズ氏はまた、中国のGDPが指数関数的に成長する時代は終わったと考えてはいるものの、長期的には、中国経済は内需と輸出の両方を重視するハイブリッド経済へと移行することが可能だとも述べている。
アメリカは最近、製造拠点の国内移転を進めているが、中国はアメリカを主要な貿易相手国としなくても、世界の舞台でその地位を維持できるとエドワーズは言う。
彼はその根拠について、こう説明した。
「一般論になるが、中国はアメリカよりも良いものを早く作っている。アメリカの消費者にとって、多くの中国企業の代わりとなるものはないだろう」