国内のクリエイターエコノミー市場はどんな状況にあるのか。このほど、消費者庁が「インターネット消費者トラブルに関する調査研究」の報告書として公式サイトに掲載した。調査担当は三菱UFJリサーチ&コンサルティングで、レポートとりまとめは2022年12月23日付け。
クリエイターエコノミーとは、個人の情報発信やアクションによって形成される経済圏だ。
同調査によると、全世界の2021年のクリエイターエコノミーの市場規模を1042億ドルとする推計があり※1、クリエイター数は約5000万人、うち200万人超がプロフェッショナル、4670万人がアマチュアとされる※2。
※1 2021年5月時点。Neoreach、Influencer Marketing Hub, “Creator Earnings – Benchmark Report 2021”)
※2 SignalFire, “SignalFire’s Creator Economy Market Map”
クリエイターエコノミーの課金形態には、主に月額課金型と投げ銭型の2つがある。消費者目線ではそれぞれ「お金を支払う」という点では同じにみえるが、クリエイターに対価が渡る流通経路や対価設計には次のような違いがあるとする。
月額課金や投げ銭によってファンがクリエイターに直接お金を払うシステムが広がっている。
「クリエイターエコノミー関連 サービスの動向整理」三菱UFJリサーチ&コンサルティング
ビジネスモデルのポイントは、従来のメディアにあったようなメディアを通じた一方的な作品の供給だけでなく、送り手と受け手の双方向の対話やファンコミュニティでの交流モデルが出現していることだ。
クリエイターに「課金」したことがある人は4割
日本では半数以上の人が「投げ銭」をしたことがあると回答している。
「クリエイターエコノミー関連サービス の利用状況に関するアンケート結果」三菱UFJリサーチ&コンサルティング
調査では日本国内では4割の人が月額課金型サポートをしたことがあり、「投げ銭」についてはさらに多く、5割以上が「投げ銭」をしたことがある、とレポートしている。
また、同調査では若年層ほど「過去1年にクリエイター等への支援をしたことがある」と回答する人が増える傾向も明らかになった。クリエイターを「推す」という行為がかなり身近なものになりつつあることがうかがえる。
若年層ほど直接クリエイター支援を行う割合が高い。
「クリエイターエコノミー関連 サービスの動向整理」三菱UFJリサーチ&コンサルティング
「月額課金」や「投げ銭」の頻度と金額
毎月「1万円以下」より上の回答者が10%以上存在する。
「クリエイターエコノミー関連サービス の利用状況に関するアンケート結果」三菱UFJリサーチ&コンサルティング
調査数がn=228とやや少なくはあるが、月額課金や投げ銭の頻度と金額にも、同調査は踏み込んでいる。
「月額課金」の平均では1000円以下が最も多いが、注目すべきは「1万円以下」から上の回答、言い換えると、5001円〜5万円以下までの比較的高額な月額課金でも16%以上もいることだ(上図)。
また、月額課金の平均として、5万1円〜10万円以上という高額課金者も2.7%いることもわかる。
ライブ配信中に月に1度は投げ銭を行うという習慣が定着している。
「クリエイターエコノミー関連サービス の利用状況に関するアンケート結果」三菱UFJリサーチ&コンサルティング
月平均「1000円以下」が最も多い。
「クリエイターエコノミー関連サービス の利用状況に関するアンケート結果」三菱UFJリサーチ&コンサルティング
投げ銭の調査も興味深い。
1回の投げ銭で最も多く贈った額は「1000円以下」、月平均では「1000円以下」という結果が出ている。しかし、なかには「5万1円〜10万円以下」の投げ銭をした人が1.4%もいる。
筆者の体験でも、YouTubeのライブ配信を見ている時に1万円以上のスーパーチャット(通称:赤スパ)が飛び交う光景は珍しくない。それで何か対価や商品、サービスが得られるわけではないのだが、それでも純粋にクリエイターを応援するために消費者は投げ銭をする。
ユーザーは「クリエイターへの還元率」を心配している
クリエイターへの還元率に対する懸念、予定以上に課金してしまったという声も。
「クリエイターエコノミー関連 サービスの動向整理」三菱UFJリサーチ&コンサルティング
最後に、気になったもう1つの調査結果として、クリエイターエコノミーゆえの、ユーザーの心情が見える調査もあった。
「トラブルや困ったことの内容」という項目では、「クリエイターへの還元率の低さ」を挙げる声が30%以上もいる。また「どのくらい還元されているかわからない」との声は、「金額自由設定型」の課金スタイルでは顕著に高かった。
配信プラットフォームは手数料をとることで成立している事業だが、消費者としては1円でも多くクリエイターに還元されることを求めていることがわかる。
調査レポートは最後に、「消費者が注意すべき事項の例」として、課金の解約方法を事前に確認すること、自身が贈れる範囲の金額で利用することなどを挙げ、課金しすぎるユーザーへの注意を促している。