市場の日々の浮き沈みに投資判断を委ねるべきではないと、アドバイザーは言う。
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- 投資アプリの登場で自分の投資の運用状況を簡単にチェックできるようになった。
- だが、投資の運用状況を頻繁にチェックしすぎると、感情に任せて意思決定を下してしまい、大きな損失を招きかねない。
- 投資は長い勝負なので、長く持ち続けられる企業やファンドを選ぼう。
ここ数年、相場は大きく変動している。コロナ禍が巻き起こった当初、経済は大打撃を受け、2020年3月にダウ工業株30種平均は2万ドル近辺まで急落した。
だが、そんなことは今では想像もつかないだろう。本稿執筆時点で、ダウ工業株30種平均とS&P500種株価指数はどちらも過去最高値近くで高止まりしている。
仮に2020年に投資をして相場をつぶさに追いかけていたら、いとも簡単にパニックに陥り、おそらく最悪の時期に投資を売却して現金化していただろう。残念ながらこれが大半の投資家が取った行動なのだ。だから2021年の株式市場の目覚ましい回復局面を逃してしまった。
投資の運用状況の確認頻度は月に1回、四半期に1回またはそれより少なくても構わないとファイナンシャルアドバイザーが言うのは、これが理由の1つだ。
なぜ、株式市場の変動に一喜一憂しない方が良いのだろうか? ファイナンシャルアドバイザーに聞いてみた。
1. 投資は長い勝負だし、そうあるべき
多くのミレニアル世代が投資アプリを使って日に何度もポートフォリオをチェックしているけれども、これは使い方を間違っていると、インディアナポリスでファイナンシャルアドバイザーをしているトーマス・コぺルマン氏は言う。
頻繁にポートフォリオをチェックしすぎると投資がゲームになってしまい、ニュースの見出しや恐怖から突然投資判断を変えてしまう可能性がある。だが、若い投資家や子どもは退職までの投資期間が非常に長いため、日々の相場変動に目を光らせる必要はない。
「投資の目的は、長期的な成長性を確信できる投資先を見つけ、長期投資をすることだ」とコペルマン氏は言う。これが複利を生かして資産を形成する方法なのだ。
2. 投資戦略を気まぐれに変更すべきではない
結局のところ、投資戦略は自分の資産目標やリタイア後のゴールと直接関連しているべきだと、グッド・ファイナンシャル・センツ(Good Financial Cents)のファイナンシャルアドバイザー、ジェフ・ローズ氏は説く。すでに計画を立てていて、その実践に向けてプロにアドバイスを求めているならば、日々の相場変動など重要ではない。
ローズ氏は、常にポートフォリオについて頭を悩ませることを、道中雨に降られながら10時間かけてビーチまでドライブする状態になぞらえる。
「引き返して家に戻るのか? それとも続けるのか?」
大半の人はまだゴールにまでたどり着いていないので、先に進み続けるだろう。それは、リタイアに向けた計画を立てるのと、株式市場の変動という形で退職までの間にいくつか相場の荒波に揉まれるのとまったく変わりがない、とローズ氏は言う。
3. 理由もなくストレスを感じる
毎日投資をチェックすることはストレスと不安の素だと、トレック・ウェルス・プランニング(Trek Wealth Planning)のファイナンシャルアドバイザーのジョーダン・ニーチェル氏は指摘する。ここ数年の株式市場をずっと見ていた人ならば、彼の言葉の意味がわかるだろう。
投資期間がこの先数十年に及ぶなら、毎日、毎週、いや毎月の相場変動でさえも最終的な目的にとって重要ではない。
常に大局を見定めて、どうしようもできない相場の浮き沈みに気を揉まないことが大事だ、と言う。
4. ポートフォリオを気にしなければ感情的なミスを避けられる
月に多くても1回以上投資をチェックしない方が良い最大の理由として、感情的なミスを避けることを、ウェルスアドバイザーのステファン・カリーグ氏は挙げる。同氏によると、市場は年に数回平均して5%以上下落するので、暴落している最悪のタイミングで感情に駆られて売ってしまうことがある。
こうした不安の心の声に耳を傾けると、やることすべてが損失確定や資産価額の押し下げにつながる。
「私が上手だと思う投資家は、多くても月に1回しかポートフォリオをチェックしない。計画を立て、それに従って投資を行い、長い勝負に挑もう」
5. 情報が多すぎる
過去15年間に個人投資家がアクセスできる情報量は飛躍的に増加しており、こうした情報を活用してより良い投資判断が下せるようになったと、ベントロン・ファイナンシャル・グループ(Bentron Financial Group)のファイナンシャルプランナーであるグレゴリーJ.クリネック氏は語る。
だが、株式市場やその他投資について言えば、相反する情報があまりにも多いため、それに圧倒され、以前よりも自分に自信が持てなくなり、取り残されることへの不安(FOMO)を感じやすくなっている。
一歩引いて毎日投資をチェックするのを止めれば、長期的なマネープランを実践できる、とクリネック氏は言う。また同氏は、これまでの世代はバイアンドホールド(長期買い持ち)戦略を採用して、何十億ドルもの資産を形成してきたと指摘する。
「バイアンドホールド戦略は、資産を形成し、守る確かな方法なのだ」
6. 若い投資家は60歳まで長い時間がある
退職後のために投資をしているならば、当面お金を必要としない可能性が高い。例えば今40代だとしても、リタイアまで20年以上ある。
サウンド・ファンデーション・ウェルス・アドバイザーズ(Sound Foundation Wealth Advisors)のファイナンシャルアドバイザーであるキャメロンL.チャーチ氏もまた、ほとんどの人は退職年金口座から非課税で資金を引き出すには、60歳まで待たなければならないと言う。
「多くの人にとって、実際にお金が必要になるのは数年先のことで、市場はその間大きく変動するだろう。優れた長期投資計画を立てていれば、必ずうまくいく」
7. 時間はたいていの人にとって味方である
一般的に言えば、リタイアまでたっぷり時間がある投資家にとって時間は大きな武器だ。実際にお金が必要になるまで15年以上ある人はまさにそうだ。
そう考えると、毎日投資をチェックするのは、樫の木を植えた後で、数日おきに掘り返して根が大きくなっているか確認するようなものだ、と言うのはヴィンシア・ウェルス・マネジメント(Vincere Wealth Management)のウェルスマネージャー、リチャード・クック氏だ。
自分の投資期間とリスク許容度を理解することが重要である。また、時間に働いてもらい、自分は人生において他に大事なことに集中すべきだ。
8. 市場を出し抜く可能性は低い
デウィット・キャピタル・マネジメント(DeWitt Capital Management)のファイナンシャルアドバイザーであるデヴィッドH.デウィット氏は、投資にまつわる極めて不都合な真実——投資家がいずれにせよゲームで「勝つ」ことは恐らくないという事実を挙げる。
市場調査会社ダルバー(Dalbar)のような会社は毎年、平均的な投資家のリターンは市場を大幅に下回ることを報告している。
こうしたことが毎年必ず起きるのは、感情に任せてまずいタイミングで売買の判断を下してしまうからだ。ポートフォリオを見る回数が増えるほど、全体像を見誤り、後で後悔してしまうような投資判断を下しがちになる。
9. 確実な方法は、自分がコントロールできることに集中すること
最後に、ウェイファインダー・ファイナンシャル(Wayfinder Financial)のファイナンシャルアドバイザーであるラス・フォード氏は、ほとんどの人はお金について考える時間も精神的なエネルギーも限られていると言う。そう考えると、大半の人は人生において自分が実際にわかる分野に集中する方がずっと幸せだ。
同様に、フィットネスの専門家ならば、限られたフィットネスの時間を健康的な食事を取ることに集中し、運動の回数を増やすように言うだろう。フォード氏は、大部分の人は毎月の貯蓄と投資に集中した方が良いと言う。結局のところ、今後10年や20年の間の相場動向に関係なく、リタイア後により多くのお金を残しておくことが賢明な策なのだ。
だがもっと良いのは、残りの人生でお金とどうつきあうかをもう1度検討することに自分のエネルギーを使うことだ。目標設定や人生設計、節税対策、保険や企業年金、負債対策、教育プラン、相続対策を見直してみよう。