川崎重工、KDDIらが西新宿で「料理」「医療」の自動配送ロボットを実証。働き手不足の解消見据え

自動配送ロボット 正面

自動配送ロボットが西新宿の歩道で、食べ物や医薬品を運んだ。

撮影:小林優多郎

川崎重工業、ティアフォー、KDDI、損害保険ジャパン、menu、武田薬品工業の6社は1月31日、東京・西新宿エリアにおける自動配送サービスの実証実験を公開した。

同地域ではこれまでも自動配送や自動運転の実証実験(2022年1月〜2月実施)に取り組んできたが、今回は以下の2つを新たに実施した。

  • フードデリバリーサービス(1月23日〜2月10日、休日などを除く)
  • 医療関係物資の配送(1月31日に実施した1名のみ)

実証実験のため、フードデリバリーサービスはKDDIや損害保険ジャパンの社員らが対象。医療関係物資の配送も1月31日に実施された血友病患者(40代男性)のみの実施となった。

6社は今回の実証実験で技術面に加え、サービス運用面の課題を洗い出す(事業性検証)狙いがある。

人間では難しい「雨天時」「温かい食べ物」で活躍できるか

自動配送ロボット 食品運び入れ

デモでは協力する加盟店の1つ「フレッシュネスバーガー 新宿三井ビル店」からハンバーガーが運び入れられた。

撮影:小林優多郎

実証実験の一つ、自動配送ロボットによるフードデリバリーサービスはKDDI傘下のフードデリバリーサービス「menu」が主体となっている。

menuに加盟する西新宿エリア内の3店舗に対し、実際に注文が入ると、自動配送ロボットが店舗周辺まで受け取りに行き、注文者へ届けるといった流れだ。

自動配送ロボットと都庁

自動配送ロボットは歩行者と大体同じくらいの速度で、実際の歩道を走った。

撮影:小林優多郎

従来では人間の配達員がバイクや自転車等で配達していた工程をロボットが担うことを、生活者(注文した人や店舗の店員、その周辺で暮らす人々)がどう受け入れるか確認する意図がある。

また、人間の配達員では敬遠されがちな雨天時の配送や、温かい料理の配送(ある程度保温をしながら運搬できる)といった配送サービス自体の品質も確認する。

1月31日に報道関係者向けに公開されたデモでは、ロボットに店舗の店員が商品の積み込みをする様子や、横断歩道を含む歩道をロボットが走行する様子を確認できた。

実証実験のため、目視での安全確認をする担当者が常にロボットの背後にいる形式だったが、近くに人間がいる際は徐行運転に切り替わり、周囲への声かけて注意を促すことも。

正面のディスプレイ部には、各種情報表示だけではなく走行中に顔のような絵も出てくるため、「配送ロボットが動いている」というより「マスコットが動いている」ような印象を受ける。

重量のある処方薬を運び、医療廃棄物を回収

自動配送ロボット 処方薬運び入れ

東京医科大学病院で処方薬を運び入れている様子。スタッフの持つ青い鞄が今回の協力患者の1カ月の薬にあたる。

撮影:小林優多郎

もう一つの医療関係物資の配送は、武田薬品工業が主体となり、血友病の40代男性のほか、東京医科大学病院の医師や薬剤師の協力のもと実施された。

オンライン診療・服薬指導から、処方箋医薬品の配送、医療廃棄物の回収までのユースケースが想定されていた。

配送の様子はフードデリバリーサービスと大きく変わらず、店舗が病院に、運び入れられた荷物が食品から医療関連物資や廃棄物に変わっていた。

単なる「医薬品の配送」と言われると、わざわざ自動配送ロボットを使うのはやや「大袈裟」な印象を受けるかもしれない。

しかし、今回の協力者である血友病患者などでは、キャリーバッグ一つ分(1カ月分)の薬などが1度に2〜3カ月分処方されるケースもあり、患者の負担になっていた(実験のロボットで運べたのは1カ月分)。

自動配送ロボット 医療廃棄物運び入れ

患者が「医療廃棄物」をロボットに運び入れている様子。

撮影:小林優多郎

また、今回の協力者である血友病患者のような場合は、患者が家庭での治療のために自分自身に注射を打つことがある。注射後に発生する注射針などの医療廃棄物は、原則として病院等の医療機関が回収して処分しなければならない。

従来は特定の運搬業社が回収したり、患者が通院時に持参したりしているというが、自動配送ロボットが街を巡ることが当たり前になれば、回収行為もより効率化し、患者の体力的・心理的負担を軽減できる可能性がある。

実際、今回の実証実験の協力者である男性は「(実験の一連の流れは)とく問題はなく、便利だった」とコメントしている。

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