MacBook Pro(14インチ)の新モデル。試用したのは、12コアCPU搭載のモデル。価格は35万8800円。
撮影:西田宗千佳
アップルが2月3日より発売する、新しい「MacBook Pro(14インチ)」の実機レビューをお届けする。
新型モデルについて、変化したポイントは心臓部にあたる「プロセッサー」に集約されている。
2021年秋に発売されたモデルでは「M1 Pro」もしくは「M1 Max」が使われていたが、2023年モデルではそれが「M2 Pro」「M2 Max」に進化した。
今回の試用機は「M2 Pro」搭載モデルだ。従来のM1 Pro搭載の同等モデルと比較しながら、「M2 Proとはどんな存在なのか」を考えてみよう。
プロセッサーは順当に「2割高速化」
アップルは製品のデザインをなかなか変えない。今回テストしたMacBook Proも、デザインやインターフェースの仕様などは、前モデルとほとんど変化がない。
今回は同じ「シルバー」のモデルだったので、並べるとどちらがどちらなのかわからないくらいだ。
左が2021年秋発売の「M1 Pro」搭載MacBook Pro。同じカラーなので、右の新モデルとは差がわからない。
撮影:西田宗千佳
ただ、性能を見ると大きく違うのがわかる。
ベンチマークソフトの「GeekBench 5」と「Cinebench R23」を使ってCPU性能をチェックしてみた。
アップルは「2割程度の速度アップ」としていたが、こちらの計測でも、マルチコア処理ならおおむね2割程度の向上という結果を確認できた。
筆者によるベンチマーク。
画像:Business Insider Japan
筆者によるベンチマーク。
画像:Business Insider Japan
参考のために、過去に計測した、M1とM2をそれぞれ搭載したMacBookシリーズのベンチマーク結果も載せているが、プロセッサーが新しくなるごとに、きれいに並んで性能向上しているのがわかる。
M1からM2への進化でも約2割、M1 ProからM2 Proへの進化でも約2割の速度向上が見られる。一方で、M1 ProはM2より4割弱も速い。
今回のM2 Proが登場する前であれば、「性能だけで言えば、M1 Pro/Maxが有利」だった。プロセッサー名の数字「2」と「Pro」のどっちを上位と見ればいいか、少々わかりにくい状況にあった。
しかし、ここでM2 Pro/Maxが登場したことで、シンプルに「M2 Pro/Maxが高性能」と表現できるようになった。ベーシックなM1とM2 Proの速度差は実に、約2倍に広がった。
一方で、シングルコアでの性能向上はさほどではない。
「システム情報」でのM1 Pro(黒)とM2 Pro(白)のCPU表示。「高効率コア」が2つ増えている。
画像:筆者によるスクリーンショット
M2もM2 Proも、CPUコアについて、効率重視(=性能は出ないが、消費電力が低い)コアが2つ増えている。
これにより、全体での処理性能だけでなく、消費電力が低い一般的な処理をした際のバッテリー駆動時間が伸びていると推察できる。実際、バッテリー駆動時間はM1 Pro→M2 Pro搭載機で約1時間長くなり、動画再生約18時間、無線インターネットで12時間になっている。
性能は「GPU」で体感。ゲームなどで明確な差が
一方で気になるのは、「そうした性能向上が体感できるのか」という点だろう。
正直に言えば、一般的なPCワークでは見えづらい。M1でもM2でも、さらにはM2 Proであっても、現状十分な速度であることに違いはない。
しかし、グラフィック処理などはほとんどがCPUをしっかり活用する。プロだけでなく、写真撮影や動画編集が趣味である人なら、スピードは速いに越したことはない。
そしてもう1つ、大きいのがGPUの性能アップだ。
筆者によるベンチマーク。
画像:Business Insider Japan
GPUについては、M1 Proでは14個もしくは16個のコアが入っていた。それに対し、M2 Proは16個もしくは19個に増える。
さらに上位の「Max」なら、M1世代で24もしくは32個だったのに対し、M2 Maxは30もしくは38個と、グッと増えている。M2が8もしくは10個なので、M2 Proでもほぼ倍に増えた感覚だ。
今回テストしたM2 Proモデルは、GPUコアが19個になっている。
GPUコアそのものも性能向上しているが、コア数がさらに増えたので、GPU周りの性能向上が大きい。
GeekBench 5では、M1 Pro(GPUコア数16個)に対し、26%の向上という結果が出た。
この辺は、ゲームをプレイしてみると、より視覚的にわかりやすくなる。
Appleシリコンに最適化された、カプコンの「バイオハザード ヴィレッジ」を動かしてみると、描画コマ数がざっくり3割多くなっている。
解像度をWQHD(2560×1440ドット)とし、画質優先の設定にすると、M1 Proでもゲームプレイ中のコマ数は、毎秒30〜50コマくらいになる。不快ではないが、もう少し画質設定を落とした方がいい……くらいの塩梅だ。
それがM2 Proになると、コマ数は毎秒50-70コマにあがる。目に見えて快適さは上がった。
「バイオハザード ビレッジ」Mac・Appleシリコン版の、ごく冒頭の2シーンでフレームレートを計測。
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画質重視設定でも、M2 Proなら毎秒60コマに近い状態を維持できている。
画像:筆者によるスクリーンショット
実は上記のテストは、画質をあまり劣化させずにコマ数を稼ぐ「MetalFX Upscaling」を使っていない。
この機能をオンにすると、画質はあまり落とさず、M1 Proでも毎秒60コマで安定させられる。M2 Proなら、毎秒80コマにまで達するし、解像度を4Kにあげることも視野に入ってくるだろう。
ゲームはGPU性能に依存しやすいが、実際にはCPU性能も必要だ。両方合わせて考えると、「M1 ProからM2 Proへの変化で、トータル性能がグッと上がった」ことがわかりやすいアプリケーションと言えるだろう。
M1/M2とは明確な速度差、安価ではないが価値は十分
結論から言えば、M2 Pro搭載モデルはやはり「こだわりのある人」向けだ。
一般的な処理ならM2でも十分に速い。そういう方には「MacBook Air」をおすすめするし、M1搭載モデルを探すのも手だろう。
しかし、M1やM2とM2 Proでは、これだけ明確に性能に差がある。
もちろん、2024年以降にさらに新世代のAppleシリコンが登場すれば、さらに性能がジャンプアップするのは間違いない。「今すでにM1を持っている」なら、今年の性能アップから予測しつつ来年以降を狙う……ということも考えられる。
一方で、まだインテルCPU版のMacを使っている、もしくはWindows PCからMacへの変更を考えているなら、M2 Proは十分検討に値する。
決して安価ではないが、「仕事がらみで長く使うなら」と割り切れるギリギリのラインかとも思う。
なにより、これだけパフォーマンスが上がっても、まだ「発熱」「消費電力」の問題は感じない。そのことは、特にノートPCにとっては重要なことであるはずだ。