金への投資、いかに始めるべきか? 知っておいたほうがいい長所と短所

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金は不確かな時代でも安全な避難的投資先、インフレーションや紙資産に対するヘッジとみなされている。

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  • 個人投資家は(延べ棒やコインの形で)物理的な金塊に投資することも、金に相当する証券(株やファンド)に投資することもできる。
  • 金塊は、金を所有するという意味ではより直接的で「純粋な」方法ではあるが、証券のほうが保持しやすいし、何かと好都合だ。
  • アナリストは、長期インフレに対するヘッジおよび資産多様化の手段として、ポートフォリオの5%から10%を金に投資することを勧めている。

そもそも金というものは、希少で、どこでも受け入れられて、どの政府も自由に印刷できない。だからこそ、「ゴールド・バグ(コガネムシ)」などと呼ばれる一部の人々は、この蜂蜜色に輝く金属に資産の大部分を投じてきた。

また、金融市場が混乱している時代においては、彼らのほかにも金に投資する人が多い。

「大恐慌に始まりCOVID-19パンデミックに至るまで、経済停滞期には金の価値が上昇することを歴史が証明している」と、コモディティ取引プラットフォームであるミトレード(Mitrade)の金融アナリスト、ジェームズ・ジェイソン氏は説明する。

経済状況がどうであれ、金は資産の多様化手段として適している。金融アドバイザーの多くは、個人ポートフォリオの5%から10%を金にあてがうことを推奨している。経済危機の時期には15%程度にまで増やすのもいいだろう。

個人は2つの方法を通じて金に投資できる。

  • 物質としての金、いわゆる金塊(いちばんわかりやすい方法だが、必ずしも安上がりなわけではない)
  • 株、ファンド、先物などとしての金証券(金の実物を取引するわけではないが手軽)

さあ、この2つについて詳しく見ていこう。

実物の金に投資する方法

金塊にはさまざまな形やサイズがあり、それぞれ特徴も価値も異なっている。

金塊(金地金)

金塊とは金の塊のことで、通常はバー(延べ棒)もしくはインゴットを指す。通常、金を型に注いだものをバー、プレスしたものをインゴット(こちらのほうが製法としては安価)と呼ぶ。そのため、バーのほうが高級とみなされ、金の現物価格ではインゴットよりも高価となる。

4分の1オンス(約7グラム)の薄板から430オンス(約12キロ)の塊にいたるまで、バーとインゴットにはさまざまなサイズがあるが、そのどれにも純度、原産地、重量、鋳造地が刻印されている。金はすべて同じというわけではない。

特に純度と重量でばらつきがある。少なくとも99.5%の純度を有する金のみが投資に適格とみなされる。

金のバーとインゴットは銀行と金取引業者が販売している。通常、金取引業者よりも銀行のほうが低い利幅で金を販売しているが、実際に金を扱っている支店を見つけるのは難しいだろう。

金貨

実際の金を手に入れるもう1つの一般的な方法は、鋳造されたコインの購入だ。コレクターが集めるような希少な古い硬貨とは違って、金貨は政府が投資家のために新たに鋳造したもの。この点を勘違いしないように気をつけよう。

その価格は、含まれる金の価値(「メルトバリュー」と呼ばれる)に1%から5%のプレミアムを加えた値を基準にしている。

金貨を発行している政府は少なくないが、ほとんどの購買者はのちの取引をできるだけ簡単にするために、最も広範囲に流通している有名銘柄に集中している。

  • アメリカのゴールド・イーグル(Gold Eagle)
  • オーストラリアのゴールド・ナゲット(Gold Nugget)
  • カナダのメープル・リーフ(Maple Leaf)
  • 南アフリカのクルーガーランド(Krugerrand)

鋳造金貨は主要銀行や硬貨取引業者、証券会社、貴金属販売業者から買うことができる。

実物の金の長所と短所

多くの人にとって、実際の金を所有することが金を買う目的になるだろう。実際の金にこそ、投資する利点の大部分がある。

金塊の長所
  • インフレに対するヘッジ。金支持者は、金は有形資産として、つねに生活費用に呼応する内在的価値を有していると主張する。昔から、1オンス(約28.3グラム)の金は高級なビジネススーツと同等の価値を有すると言われている。男性用スーツが35ドル(約4500円)で売られていた1934年もそうだったし、今もそうで、金は現在1オンスあたり2000ドル(約25万円)近くで取引されている(スーツはボリオリがそのぐらいの価値)。
  • 株とのバランス。ほかのコモディティと同じで、株式と逆方向に価値が上下する金は、株式に偏りがちな投資のバランスをとる手段になる。たとえば、2008年に始まったサブプライム住宅ローンの崩壊がグレート・リセッションを引き起こしたとき、それまでの数年を400ドル(約5万1000円)から600ドル(約7万2000円)のあいだで取引されていた1オンスの金が1000ドル(約12万8000円)に価値を上げ、それからの3年間その価格帯を維持した。
  • 安全な避難所。金は不確実な時代や社会政治的な混乱期に安全な避難所になると考えられている。たとえば、2016年のブレグジットの投票後には、金価格が1カ月のあいだに10%上昇した。ストラトス・ウェルス・アドバイザーズ(Stratos Wealth Advisors)の認定ファイナンシャルプランナーであるデニス・ノチック氏はこう言う。「世界市場の崩壊やそのほかの脅威の前で、政府は自国の通貨を支えきれないのではないかと心配している人は、金の所有を検討すべきだろう」
  • 実質上不滅。「金の現物をハッキングしたり消去したりすることはできない」と言うのは、ブリヨン・ボックス・サブスクリプションズ(Bullion Box Subscriptions)の最高執行責任者を務めるチャールズ・スティーブンズ氏だ。(お気づきのように、本稿では壊滅や崩壊を指す表現が多用されているが)「金は自然災害で破壊されることも、時間とともに摩耗することもない」

金塊の短所
  • 保持に費用がかさむ。自宅に金を保管するのは、盗難や紛失などのリスクがあまりに高い。しかし業者に保管してもらうと費用が発生してしまう。ほとんどの場合、その費用は金塊のサイズや価値に応じて変わる(だいたい価値の0.5%から2%ぐらい)。専門業者を利用しないのなら、金に保険をかけたほうがいいだろう。これもタダではない。
  • 流動性の低さ。実際の金をボタン1つで、あるいはブローカーへの電話1本で売ることはできない。あなたのために動いてくれるディーラーがいる場合でさえ、売りに出すには数日から数週間の時間がかかるし、配送の手続きも自分でやらなければならない。
  • 収入や利益を生まない。金塊に1000ドル費やすということは、1000ドルを買うということだ。それ以上でもそれ以下でもない。金塊自体は利子も配当も生み出さない。価格が上昇したときに売ることだけが価値を生成する(それでさえ、時間差、労力、販売に不可欠なさまざまな査定コストなどが生じて目減りしてしまう)。

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金証券に投資する方法

金塊は扱いづらく制限が多いため、特に投資初心者にとっては(株、ファンド、オプションなどの形の)証券のほうが手を出しやすいだろう。

見た目は本物の金ほど輝かしくはないが、はるかに扱いやすい。

金株式

1つ目の方法は、採掘や精製など、金の生産に携わる企業の株式を買うこと。「マイナー」と呼ばれるおよそ300の企業が主要証券取引所に上場している。それらの株価は金の価格変動とおおよそ同じ動きを見せる。

ただし、業界団体のワールド・ゴールド・カウンシル(the World Gold Council)は「株価の上昇や利益は、金の価値だけでなく、会社の収益予想によっても左右される」と指摘している。

金ETFと投資信託

保守的な投資家は金に関連する投資信託(ミューチュアルファンド)や上場投資信託(ETF)を買うのもいい。これらのファンドは、投資アプローチが異なっている。金を裏付けとするETFは実際の金に直接投資することが多い一方で、投資信託のほうは金採掘株式をおもなターゲットにしている。

両方に投資するファンドもいくつか知られている。しかしいずれの場合も、金市場への低コストでの参入機会を提供しており、資産の多様化につながるため、株式のみに投資するよりもリスクが低くなる。

金オプション

投資経験が豊かな人は金の先物契約のオプションを検討してもいいだろう。ほかの金融オプションと同じで、金のオプションもあらかじめ取り決められた期間内において特定の価格で資産(この場合は金)の売り買いをする権利(義務ではない)を意味している。

金相場が上がるか下がるかに賭けてオプションを買うことになり、市場が予想と逆の方向へ動いた場合も、オプションのために支払った少額を失うだけで済む。

金のオプションは、COMEXで知られるシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の1部門で取引されている。金オプションは金地金もしくは金ETFで購入できる。

金証券の長所と短所

ほかの金融資産と同じで、金証券にも長所と短所がある。

金証券の利点

金を所有することの一般的な長所に加えて、証券には次の利点がある。

  • 流動性。主要取引所で取引されているため、金証券は金塊よりも手軽に売り買いができる。利用するブローカーやファンドマネジャーが課す管理費用や口座手数料以外の保管コストも発生しない。
  • 複合利益。マイナー企業がもたらす配当は、せいぜい平均程度の額にしかならないが、配当を生むことのない金塊所有とは違って、配当があるというだけですでに利点だと言える。加えて、株価が上昇する可能性もある。
  • 初期投資額の低さ。投資信託とETFは最も費用対効果の高い投資方法であるため、低い予算でゲームに参加できる。金1オンスのスポット価格が2000ドル(約25万7000円)前後の今、SPDRゴールド・シェアーズ(SPDR Gold Shares)のETF(GLD)が180ドル(約2万3000円)なのは、1オンスの金のおよそ10分の1に相当するので、妥当だ。

金証券の欠点
  • 変動しやすさ。ほかの企業と同じで、マイナー企業も、運用コスト、蓄え、マネジメントなどのすべてが業績に影響する。そのため、株価は変動しやすい。金塊の価値が10%下落すると、金株式は多くの場合で15%ほど値を下げる。貴金属と通貨に詳しい投資戦略家のリン・アルデン氏の言葉を借りるなら、マイナー企業は「投機的な側面が強い」
  • 構造的なリスク。金採掘業者の株価は、所属する国家の政治・経済状況にも影響される。最大規模の事業のいくつかはアフリカ、ロシア、南アメリカで運営されている。どこも動乱のさなかにあり、社会的な責任感が強い投資家や機関投資家は避けようとする地域だ。
  • 金を所有するわけではない。金証券を買っても純粋な金が手に入るわけではない。証券は金の代用ではあるが、保有者は証券と引き換えに金塊を得る権利を有しているわけではない。そのため、実物の金とは違って、貨幣価値の下落や金融市場の崩壊に対する保護機能をもたない。

おわりに

さて、あなたは金に興味が湧いただろうか? 

金は経済危機や政情不安の時期にのみ話題になりがちだが、それ以外の時期でもポートフォリオの一部を金で置き換えることは、資産の多様化という側面だけを見ても、理にかなっている。

しかし、どれだけ投資するか、どの形の投資を選ぶかは、どの程度までリスクを冒せるか、どれぐらい手軽に投資したいかに応じて、自分で決めるしかないだろう。

※本記事は取材対象者の知識と経験に基づいて投資の選定ポイントをまとめたものですが、事例として取り上げたいかなる金融商品の売買をも勧めるものではありません。本記事に記載した情報や意見によって読者に発生した損害や損失については、筆者、発行媒体は一切責任を負いません。投資における最終決定はご自身の判断で行ってください。

※この記事はもともと 2023 年 2月に公開されたものです。

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