角川村とも言われる飯田橋駅周辺にあるKADOKAWA富士見ビルのロゴ。
撮影:Business Insider Japan
五輪汚職で経営体制が問われているメディア企業大手KADOKAWAが、外部識者で構成されるガバナンス検証委員会の報告書について報告する会見を2月2日、東京都内で開いた。
報告書は、五輪汚職にからみ前会長の角川歴彦被告など役員と社員が贈賄容疑で逮捕・起訴されたことを受けたものだ。
会見冒頭で深く頭を下げ謝罪するKADOKAWA経営陣。
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報告書は154ページにおよび、事件と関係の深い経営陣や匿名の社員のやりとりの経緯、意思決定上の問題点をつまびらかに指摘している。
ガバナンス検証委員会の中村直人委員長は、「会長案件というような言葉も社内にはあり、会長がなさるとなかなか皆さん物事が言えなくなる」「人事権も規定上は(中略)特に権限を持っているわけではないんだけれども、実際上は強い人事権を持っていたと思われますし」などとKADOKAWAの執行部が抱えていたとされる問題の一端を説明した。
報告書をめぐり決裂する創業家と経営陣
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報告書をめぐっては、会見前日の2月1日付けで、角川歴彦被告の弁護団が報告書に対する抗議書を出していることがわかっている。
角川被告弁護団は抗議書のなかで、
- ガバナンス検証委員会の選任候補や、選任の理由が不明確であること
- そのため執行部の意向に基づいて活動した可能性が否定できないこと
など複数の疑義を主張している。
これに対して夏野氏は、「ガバナンス検証委員会の設立の経緯は非常に簡単で、前会長の逮捕を受けて、第三者の独立の委員会が必要だということで」(夏野氏)企業法務に詳しく、かつ“KADOKAWAと付き合いのなかった”専門性の高い著名な弁護士に何人か声をかけたと説明。「その中で、中村先生に引き受けていただけた」(同)とし、忖度が働くような関係性がないことを強調した。
また、報告書については「内容については一切(社長である自身にも)シェアすることなく」作成され、夏野氏に報告書が届いたのは公開日と同じ1月23日の朝だったとする。
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検証委員会の中村直人委員長は、抗議文への見解について弁護団の指摘とは報告書の狙いが異なるとした上で、「(あくまで)ガバナンスの観点から不適切な行為は何だったかということを認定している。ですので、ご指摘自体がちょっとズレているのではないかと思っている」との認識を示した。
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角川被告弁護団の抗議書では、検証委員会の報告書の削除も求めている。
中村委員長は「公表自体は会社(KADOKAWA)の判断でやっており、検証委員会として、削除することを会社に求めることはございません」。一方、この発言を受けた夏野社長も「会社としては、ガバナンス検証委員会から削除要請がない限りにおいて、今の現状を続けたい」と公開を続ける意向を示した。
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KADOKAWAは会見に合わせて、「再発防止に向けた今後の対応」に関する資料を公表。取締役会の経営に対する監督機能を強化する目的で、「監査等委員会設置可支社から指名委員会等設置会社への移行」と「取締役の過半数を社外取締役とすること」を会見同日付けの臨時取締役会で決議したことを報告した。
なお、KADOKAWAは同日、2023年3月期の通期業績見通しを修正。売上高2486億円(前年同期比12.4%増)、営業利益210億円(同13.4%増)、最終益110億円(同21.9%減)という予想を公表している。